記者会見で、田中英雄とエステバンをボランチに起用した理由を問われた神戸の安達亮監督は次のように答えた。
「今日の栃木戦はサイドチェンジを多くしました。(相手が)コンパクトに守る分、サイドのスペースが空いていると思ったので。田中とエステバンの2人はサイドに正確に振れる能力があるので、彼らをチョイスしました」
もちろん、相手がロングボールを入れてくるという想定の中で、2人がセカンドボールを拾う能力に長けているという理由もある。
「後半はちょっと堅かったが、2人は期待どおりセカンドボールを拾って、ボールも散らしてくれた」と安達監督が評価をするように、神戸は巧みなサイドチェンジでゲームをコントロールした。特に2得点に絡んだ田中のパフォーマンスは非常に高かったと言える。
前半23分。神戸はエステバンがボールを奪って田中につなぐと、少しドリブルを挟んで左のマジーニョへ展開。それをさらに大外のポポへ流し、ポポがワンタッチでペナルティエリア内に侵入した小川慶治朗へクロスを上げる。小川が競った後のこぼれ球を、最後は田中がダイレクトで蹴り込み先制点が生まれた。
この一連の中で、栃木の選手たちはボールを追うように神戸の左サイドへと集まった。見方を変えれば、サイドに神戸を追い込んだとも言えるが、ポポが囲まれる前に中央へボールを折り返すと中央は手薄に。小川には反応できたものの、そのこぼれ球、つまり田中へのカバーリングが完全に抜け落ちていた。
ここだけを見れば偶然だと思うかもしれないが、前半44分の追加点も状況は似ている。右サイドからボールを受けた田中がすぐにマジーニョのいる左サイドへ展開すると、フリーでマジーニョがパスを受けてゴール前へ。最後は飛び出してきたGKをあざ笑うかのようにフワッとシュートを浮かせた。結果的にゴール前に詰めたポポの得点になったものの、「自分のところにボールが来れば、左だったらマジーニョに、右だったら小川慶治朗にというのを考えていました」(田中)というチームとしての狙い通りに追加点を挙げた。
もちろん、これまでのゲームで神戸がサイドチェンジを多用しなかった訳ではない。どちらかと言えば、多い方だろう。ただ、今日のゲームは以前と比べてテンポが早かった。手詰まりによるものではなく、意図のはっきりしたサイドチェンジだったため、攻撃に連動性が生まれたのかもしれない。スカウティングも含め、チームで勝った一戦だったと言えるのではないだろうか。
とはいえ、栃木も1点を返していれば結果は変わっていた可能性もあった。それだけ決定的なチャンスも作れていた。
前半14分過ぎのCKで大和田真史が競り勝ち、神戸のGK徳重健太を慌てさせた。後半71分過ぎのCKではクリスティアーノのヘディングシュートがポストに嫌われるシーンもあった。続く75分頃にはサビアがドリブルでペナルティエリア内に侵入し、でGKと1対1の場面も作っている。大和田は試合をこう振り返っている。「うちもチャンスはあった。でも、決められなかった。そこの質の差が出たというか、アンラッキーなところもあると思うけれど、純粋にまだまだ自分たちの力が足りないということだと思います」
また、近藤祐介は「シュート本数が少ない。(神戸の)ポポのように打ってリズムをつかむようなことをしても良かったと思う」と言う。シュート数は神戸20本に対して栃木は半分の10本。数打ちゃ入るというものでも無いが、シュートで終わることでカウンターを食らうリスクが減るなど、ゲームが安定するのも確かである。そういう意味でも、神戸が試合巧者だったのかも知れない。
栃木の松田浩監督は「(前略)いずれにしても、個々のところで負ける部分をチームとしてなんとか取りたかった試合でしたけれど、まぁ失敗に終わったゲームだった」と総括した。ただ、個で勝る神戸に対して変則的なフォーメーションで挑むのではなく、神戸と同じ4−4−2で真っ向勝負した中での敗戦は、これからの試合に生きるはず。松田監督は「1ランク上のチームとは違うというのを選手たちは肌で感じたと思う。1ランク上の選手になるため、そして1ランク上のチームになるために今日のゲームはすごく勉強になったと思います」と前を向いた。
以上
2013.08.05 Reported by 白井邦彦













