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【J2日記】札幌:破れていない葉は破れた葉を包むべし(ベトナムの諺)(13.08.08)

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ベトナム代表FWレ コン ビンが札幌に加入した。8月6日に札幌ドームで会見し、7日にはチーム練習に合流。国際Aマッチで51試合35得点という記録を持つ「ベトナムの英雄」の加入だけに、注目は高まっている。「ベトナムという国を背負ってサッカーをしている彼のメンタリティは、いい影響を与えてくれるはず」と札幌の野々村芳和社長も期待を強めている。

ベトナム国民のほとんどがその存在を知る大スター選手だけに、さぞかし風格のある選手がやってくるのだと思っていた。そして実際に、その雰囲気はあった。余談ではあるが今年1月にベトナム国内でビンの札幌移籍の可能性が報じられた時期に、筆者はタイに出かけていたのだが、バンコク市内でサッカー関係者に会うたびに「レ コン ビンが札幌に行くんだって?」と頻繁に質問されたものだ。それだけ東南アジアで有名な選手であるということなのだろう。

しかし、その存在感の大きさとは裏腹に本人は至って謙虚な人柄だった。加入会見では報道陣が大きな抱負を引き出そうと質問を投げかけるも、「それより、いまは新しい環境に慣れることだけを考えている」とビン。7日の練習後も「まずは覚えなければいけないことがたくさんある」と、大風呂敷を広げることはせず、目の前にある基本的な作業に徹底して集中していく姿勢を示していたのが印象的だったし、好印象だった。これから日本のサッカーに適応し、どれだけの活躍をしてくれるのか非常に楽しみである。練習時には率先して若手選手たちと一緒にゴールを運んでいたし、すごく自然体なスターなんだと思う。

そうしたなかで、あらためて振り返りたいのが6日の加入会見だ。会見に先立って広報担当者から「今日の通訳を担当される方は、通訳業を本職とされている方ではありません。そのあたり、ご理解いただきますよう、よろしくお願いします」との説明。なんでもベトナム語の通訳を生業としている人は北海道内にはほとんどいないらしく、札幌市近郊に在住するベトナム人女性2人がこの日の通訳を担当していた。このお2人に関しても、日本での生活日数はまだそれほど長くないとのことだった。

先日掲載された会見全文を読んでもらえればおおよそ理解してもらえるかと思うが、そうした状況を踏まえて報道陣からも配慮があり、質疑応答の内容は比較的シンプルなものとなっていた。
ビンは英語も理解するとのことだったので、正直、英語で会見を進めればよいのでは?と筆者は思った。しかし、会見後に野々村社長に話を聞くと「オレも英語でやったほうがいいのかなとも思っていたんだけど、ビン本人が『ベトナム語がいい』とのことだったので、急遽、女性2人に来てもらった」とのことだった。
これは推測に過ぎないが、ベトナムを背負う者の誇りとして、ビンは母国語での会見を望んだのではないか。それに、必ずしもスムーズではない場面があったものの、臨時の通訳を担当した2人の女性も母国の英雄、さらには住んでいる土地のプロサッカーチームのために「ゴメンサナイ」という言葉を何度も発しながら必死に、一生懸命に力を尽くしてくれていた。いつも通りではない会見だったからこそ、Jリーグに新たな風が吹き込まれた印象が持てたし、新たな仲間が加わったような気持ちにもなった。

ベトナムは国民の平均年齢が27〜28歳くらいだと聞く。これからさらに力をつけていきそうな感じだし、今後さらにJリーグとの距離が縮まっていくような気もする。

そんなことを書きながらテレビを眺めていると、「世界の車窓から」でベトナムのニャチャンという街が取り上げられていた。これまでであれば、それほど特別には気に留めなかったと思うのだが、このときばかりは「あ、ベトナムだ!」と非常に興味深く見入ってしまった。こうやって、いろいろと興味の幅を広げてくれるのだから、あらためてフットボールというのは国際的で、すばらしいパワーを持っていると感じた夏の夜だった。

以上

2013.08.08 Reported by 斉藤宏則
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