「救世主」vs「王様」
今節の注目カードとして、大分vs柏に痺れるコピーが踊った。否が応にもふたりの選手に注目が集まる。
まずは「救世主」としての期待が高まるのは、6日にF東京から期限付きで大分に電撃移籍した梶山陽平だ。現在最下位で5連敗中のチームに「厳しい状況にいるが残留ラインの15位との勝点差は9。下位との直接対決があるし、まだまだ残留の可能性は十分ある。やり甲斐がある」と、男気ある決断で大分に降臨した。すでにチームの現状を把握し、「(高松)大樹さんのように得点力の高い選手がいるので、自分の仕事はそこにパスを出すこと。90分通して結果で貢献したい」と、課された役割を十分に理解している。
一方の「王様」と称されるのは柏のレアンドロ ドミンゲス。18節の横浜FM戦で5月18日以来の復帰となり、前節の鳥栖戦では運動量こそ少なかったが、2アシストを記録し存在感を示した。本調子までワンギアアップが必要だが、日増しにコンディションは良くなり、大分戦が王様の完全復活祭となる予感はある。
両者とも試合を作り、決定機も演出できる。彼らがどれだけ輝きを放ち、ピッチを支配するかで勝敗は左右されるといって過言ではない。
救世主の加入で、暗雲が立ち込めたような暗い雰囲気が一掃された大分は、新たな気持ちで試合に臨めそうだ。加入間もない選手にチームの命運を託すのは酷ではあるが、何とかしてくれそうな雰囲気はある。紅白戦では梶山が先発組に入ると自然とボールが集まったのは、チームの一員として認められた証であり、期待の現れだ。梶山の加入で欠いたピースが埋まり、「我々のサッカーが出しやすくなる」とは田坂和昭監督。これまで攻撃の起点が前線の高松大樹のポストプレーしかなかったが、梶山が中盤に入ることで中盤でのタメができ、攻撃のバリエーションは増えた。後方からの攻撃参加が促され、得意とするサイド攻撃に厚みがでたのは確かだ。
この変化に土岐田洸平は、「タイプは違うが前田(俊介/札幌)と同じ感覚。ボールを預けて前に出ればパスが出てくる」と、かつて一緒にプレーした選手とダブるようで、手応えもつかんでいる。
J2降格に片足を突っ込んでいる状況ではあるが、監督はもちろん選手も誰ひとり諦めてはいない。スタッフもそうだ。この試合は「8・10大分総力戦」と企画を打ち出し、クラブは3万人の来場者を呼びかけている。大分の総力を挙げての一戦は、奇跡の布石となるはずだ。
この一戦を重要な試合と位置づけているのは柏も同じ。水曜日から異例の2日連続の非公開練習で大分戦に備えている。最下位相手といえども絶対に取りこぼせない気概を感じる。前節に大分と対戦したF東京は、試合途中にシステムを変更し、1対1でマッチアップする場面を多く作り試合の主導権を握った。
名将ネルシーニョは、どのようなプランを立てているのだろうか。好調のブラジリアントリオに、日本代表に選出された工藤壮人を加えた前線は脅威だ。システム変更とともに彼らの組み合わせや位置関係が、試合にどのように影響するのか見逃せない。
リーグは2巡目に入り、互いの駆け引きの連続となる。試合中のシステム変更を瞬時に判断し、ミスマッチを作りウイークポイントを探り当てることができるか。救世主と王様に加え、ベンチの采配も勝負のアヤになるはずだ。
以上
2013.08.09 Reported by 柚野真也
J’s GOALニュース
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