猛烈な暑さがぶり返してきた日本列島の中で、清水も湘南も新たな力を獲得し、後半戦での巻き返しに賭けている。とくにホームの清水にとっては、この試合に勝ちきれるかどうがか、その後の戦いに向けても非常に大きな意味を持っている。

8月は今節も含めてあと5試合。清水は、この湘南戦の後も、アウェイのＣ大阪戦、ホーム（エコパ）での浦和戦、ホームでの鹿島戦、アウェイでの大分戦と非常に難しい対戦が続く。その中で「最大限の勝点を取れるようにしていくこと、そして首位との勝点差16を半分に縮めていくことが8月の目標」とゴトビ監督は語る。そのためには、今節で内容・結果ともに充実させ、自信と勢いをつけることが欠かせないのだ。
そのためのチーム状況としては、ゴトビ監督の目標が無謀なものではないと言えるだけの条件が整っている。稼ぎ頭のバレーは中国に移籍してしまったが、代わりにバレーの高さを上回る192cmの点取り屋・ラドンチッチを韓国の水原三星から期限付きで獲得。そして合流3日目で新潟戦に先発出場し、高いポテンシャルを見せつけただけでなく、さっそく初ゴールを決めている。高さ・強さだけでなく、足下のボールのキープ力も高く、味方を生かすのもうまいため、清水のスタイルにはバレーよりも合っているという印象がある。
鹿島から2年半ぶりに復帰したボランチの本田拓也も、守備戦術にすぐに対応し、球際の強さや多彩な長短のパスですぐに大きな存在感を発揮。鹿島ではリーグ戦でのフル出場がなかったため、90分戦い抜けるコンディションを取り戻すにはもう少し時間はかかるだろうが、試合を重ねるごとに本田とラドンチッチのホットラインも強いものになり、チームへの貢献度は高まっていくはずだ。
チーム内にそうした“軸”ができ、10番の河井陽介も好調を維持。竹内涼、石毛秀樹、六平光成といった若手が台頭し、高木俊幸も復調してきた。杉山浩太が臀部の痛みで出場微妙だが、出場停止はなく、DFラインにはレギュラーメンバーが揃う見込み。本田と村松大輔のボランチコンビは、ボール奪取能力という意味で非常に高いレベルにある。
したがって、組織的な守備を維持したうえで、攻撃のバリエーションや迫力を増すという下地は確実に整ってきた。それをホームゲームでゴールという結果に結びつけられるかどうかが、この試合における清水の最大の注目点と言える。

一方、湘南のほうも、7月にFWウェリントンとGKアレックス サンターナという2人のブラジル人選手を獲得したばかり。2人ともまだ2試合に出場しただけだが、初出場した第18節・川崎Ｆ戦では勝利に大きく貢献した。とくにアレックス サンターナは好セーブを連発し、PKのシーンではダンスのようなステップでキッカーにプレッシャーをかけて話題を集めた。
ウェリントンはまだ無得点だが、残留争いをしているチームにもっとも必要なのは、押された中でもピンチの場面で身体を張って守り抜き、限られたチャンスを決めて、しぶとく勝点をつかんでいくこと。その面で確実にパワーアップしていることは間違いない。
今節はゲームキャプテンのボランチ・永木亮太が出場停止で、その影響は多少あるだろうが、チーム全体でハードワークし、川崎Ｆ戦のような勝ち方を目指すのがアウェイでのゲームプランだろう。今の湘南が、勝つのが非常に難しい相手であることは、清水の選手もスタッフもよく理解している。

試合展開としては、ボールポゼッションではやはり清水が上回るだろうが、問題はそこから先の戦いだ。今季でもっとも暑いナイトゲームになる可能性は大いにあるが、その中で清水がテンポ良くボールを動かして、どれだけ湘南の選手たちを消耗させられるか。そして、分厚い守りをどれだけこじ開け、チャンスを決めきれるか。
逆に湘南としては、できればなるべく高い位置でボールを奪いに行きたいところだが、それができなかった場合には、パスを“回される”ではなく“回させる”という展開に持ち込めるかどうか。そして、カウンターからどれだけ多くのチャンスを作れるか。

見どころは明確だが、どちらが自分たちの目指す形に持ち込めるかは予想が難しい。
「湘南も勝ちたいという気持ちをすごく出してくるチームだから、その上をいくような気持ちでファイトして、勝利につながるようなプレーをしたい」と、元湘南の村松大輔は言う。ありきたりの締め方になってしまうが、最終的には勝利を求める執念の差が、結果にも大きく影響することになりそうだ。

以上

2013.08.09 Reported by 前島芳雄