水戸と栃木と群馬の3チームによって行われている「北関東ダービー」。水戸にとって今季最後のダービーとなるが、現在2勝1分で首位を走る水戸がこの試合で引き分け以上の結果を残せば、2年連続の優勝が決定することとなる。「北関東ダービーのタイトルは獲る」（本間）はチームの合言葉。今季も実現させるべく、今節に向けて水戸の選手たちは並々ならぬ闘志を燃やしている。

その水戸の前に立ちはだかるのが栃木の高いモチベーションだろう。2年ぶりの「北関東王者」奪還への意気込みはもちろん、それ以上に8試合勝利のない苦境から脱しようという強い気持ちで今節に挑んでくることに違いない。J1昇格プレーオフ圏内の「6位以内」に入るためにも絶対に負けられない一戦。ダービーで勝利して、勢いを取り戻したいという狙いを持って今節に臨んでくるはずだ。

死に物狂いでアウェイに乗り込んでくる栃木に対して「受けに回ってはいけない」（細川淳矢）と水戸の選手たちは気を引き締めている。「気持ちで負けるとリアクションになってしまう。攻守でアクションを起こすサッカーをするためにも相手よりも強い気持ちで戦うことが大事」と細川が語るように、ダービーゆえの「強い気持ち」が求められる一戦となる。

水戸は前節千葉に敗れはしたものの、シュート数19本対6本という数字が示すように、ゲームを完全に支配してみせた。3−5−2システムは試合を重ねるごとに質が高まっており、前節千葉戦も「内容は悪くなかった」と柱谷哲二監督は手ごたえを口にするほどの出来であった。あとは「ほんの50cmのポジションのズレなどがあった。選手たちには100点を目指そうと言っている」と柱谷監督の語るように、精度を高めていくのみ。目指すべき道が明確だからこそ、選手たちも自信を持ってプレーできるようになっている。今節、栃木から複数ゴールを奪って、チームの進化を示したいところだ。

ポイントは栃木のタイトなプレスをかいくぐれるかという点にあるだろう。栃木はコンパクトな陣形を保ち、狭い局面に相手を追い込み、そこでボールを奪ってスピーディーに攻撃を仕掛けることを得意としている。前節神戸戦ではサイドチェンジを繰り返され、コンパクトを維持することができずに敗れてしまった。それだけに今節はボールホルダーに対して前節以上に厳しくプレスをかけてくることが予想される。

激しい栃木のプレスに対し、「怖がらずに2、3本パスをつなぐことが大事」と柱谷監督は言う。相手のプレッシャーを恐れてロングボールを蹴ってしまったら、栃木の思うつぼ。パスをつないで相手の守備を揺さぶってからサイドチェンジや裏のスペースを狙うボールを出すことが求められる。中盤の3人がギャップでボールを受けて起点になれれば、ペースは水戸が握ることとなるだろう。

また、サイドの攻防にも注目したい。「栃木はパスをつないで3バックの横のスペースで起点を作ってくる」と細川が説明するように、ウイングバックの裏のスペースでボールを引き出して攻め込んでくることが予想される。それに対して、ウイングバックが下がりすぎてしまっては水戸のシステムの狙いが出ない。3バックが踏ん張ってスペースをケアし、ウイングバックはできる限り高い位置を保って相手のサイドバックのプレッシャーをかけていきたい。サイドの駆け引きから目が離せない90分になりそうだ。

「北関東王者」をかけた戦いでもあり、上位戦線への生き残りをかけた試合でもある。「本当に大一番。シチュエーションは最高ですね。スリリングなゲームになると思いますよ」と、ダービーの重みを知る本間幸司は闘志をたぎらせている。そして、「簡単なゲームにならない。そういうゲームを勝ち切れるかどうか。チームとしての真価が問われる試合になる」と強い口調で語った。前節千葉戦はゲームを支配しながらも敗れてしまった。「経験のなさや勝負強さにおいて勉強させられた」と柱谷監督が言うように、上位に行くためにはどんな内容だろうと勝点3を手にする強さが求められることをあらためて痛感させられた。

それだけに水戸は今節こそ、勝負強さを発揮したいところ。「順位や実力は関係ない」（柱谷監督）ダービーマッチだけに難しい試合になることは間違いない。そこでしっかり勝点3を取ることができるか。上位に食い込む資格が問われるゲームとなる。「北関東の王者になれなくて、上位には行けない。だから、今節は絶対に勝つ」と本間は誓う。おそらく栃木も同じ思いを抱いているに違いない。
「北関東」を制した先に待つ大きな可能性に向かって、北関東の雄が激しく火花を散らす。

以上

2013.08.10 Reported by 佐藤拓也