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【J1:第20節 名古屋 vs 浦和】レポート:3試合連続2トップ揃い踏み!玉田5試合連続得点!久々の完封!浦和相手の「アカイ大作戦」達成度はまずまずのものに(13.08.11)

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気温29.8度、湿度72%。不快指数の高い名古屋の夏の戦い方は、やはりホームチームが熟知していたということか。前半1本、後半4本という最低限ともいえるシュート数で2得点。名古屋は高い決定力で効率よくリードを奪い、守備で体力を使う好循環を生み出すことで、難敵からの勝点3を手に入れた。30,478人を集めた「アカイ大作戦」の達成度は観客数において100%には達しなかったが、それでも会心と言える結果は出た。

緩急、あるいは弛緩と緊張の差が激しい試合だった。前述のような気候では90分間のハードワークなど望むべくもない。両チームともに開始からのらりくらりとパスを回して相手の出方をうかがいつつ、隙が見えれば一気にゴール前に侵入していく一点集中の戦い方に力点を置くことになった。時に相手を挑発するようなDFラインでの近距離のパス交換も頻発する中、25分あたりからはチャンスが生まれ始めたが、決定機については名古屋はシュートまで至らず。浦和は45分にDFライン裏に抜け出した興梠慎三のシュートが枠を外れ、45+2分の柏木陽介の至近距離のシュートは楢崎正剛に阻まれた。前半の情勢としては浦和がやや優位。それは両監督のハーフタイムコメントを見てもうかがえる。

後半も大きな流れとしては変わらなかったが、試合運びに対するメンタル面には変化が生じていた。前半から名古屋が「パスを回されても一気に来ないなというのはわかっていて、オレらが出てくるのを誘っていたのもわかっていた」(藤本淳吾)と、守備に関しては我慢の姿勢で一貫していたのに対し、浦和は「前半の方が自分たちがボールを持っている時間が長くて、相手が出てきたところで良い攻撃ができていた。後半はどちらかというと自分たちから前に出てしまって、そこでやられてしまった印象」(柏木陽介)と、攻撃での忍耐力と集中力が途切れた。目に見えない焦りのようなものは徐々に浦和の歯車を狂わせ、後半15分から試合を決定づける2失点の遠因となったのだった。

しかしその点を差し引いても、名古屋の決定力は見事の一言だった。後半15分、藤本が中盤でボールを奪うと、すかさず左サイドに飛び出した小川佳純へ正確なフィードを送り届ける。「淳吾さんが持てばパスが必ず出てくると信じて走ることができる」と迷いなく抜け出した小川は左サイドを駆け上がり、カバーに来たDFを見透かしたラストパスを中央へ送る。ボールは別のDFのクリアに遭うと思いきや、イレギュラーバウンドして走りこんでいた玉田の元へ。これを丁寧に流し込み、電光石火のカウンターは完遂された。玉田はこれで5試合連続となる今季8得点目。守備での貢献度も含め、エースの名にふさわしい仕事ぶりで均衡を破った。

さらに勝負を決定づける2点目は先制の4分後に、またも藤本を起点として生まれた。右サイドで「こっちに寄って来て、という意味で出した弱い浮き球」をケネディに送ると、背番号16はDFを背負いながらもきっちり玉田に落とす。すかさず玉田がダイレクトで出した縦パスの先には藤本。「イメージ通りの流れ。最後は自分よりも確率が高い方に出した」と飛び出してきたGKの鼻先をかすめる優しいパスがケネディに届くと、あとは押し込むだけだった。今回の2得点に限らず、前線の4人による有機的な連係は、それまで個人能力頼みと揶揄されてきた名古屋の攻撃陣の新たな武器である。4人の中の1人、小川は充実感たっぷりに言う。
「今はかなり前の4人で得点できるので、ディフェンス陣にとっても楽に思えていると思う。磐田戦もそうでしたし、うまく(4人のうちの)何人かが絡んで得点できている。僕に関して言えば、他の3人にボールが入った時は動きやすい。ジョシュア(ケネディ)は絶対にヘディングで勝つと予測できるし、タマさんもパスが収まるし、淳吾さんからは良いパスが来る。どこからでも自分としては受け手になれるので、非常に今は信頼してお互いにパスを出したり受けたりできています」
3試合連続で2トップ揃い踏みという事実も自信を裏付ける。ケネディと玉田が8得点で小川も今季ここまで7得点。藤本は得点こそ多くないが、この日も2点を演出するなどチャンスメーカーとして十全に機能している。名古屋版「ファンタスティック4」とは大げさかもしれないが、それぐらいの連動感と得点力が、今の彼ら攻撃ユニットにはある。

試合は浦和の必死の巻き返しも実らず、2−0のまま終了。名古屋にとっては実に4月以来の無失点勝利となった。順位もいよいよ1桁の9位となり、3位浦和との勝点差も7と、上位も射程圏内に。
一方で浦和は首位広島との差が5に広がり足踏み状態。ペトロヴィッチ監督は「前節、磐田戦で勝利しましたが、私は選手を叱りました。今日は負けましたが、決して選手を叱るようなゲームではなかったと思います。足りなかったのはゴールだけ」と結果を悲観しなかったが、選手たちは違う。「オレたちはこういう試合で勝っていかないと優勝できないと思っている。勝てなかったことで、前節で広島に勝った意味がなくなってしまった。プレーどうこうよりも結果を求めていくことの方が大事」と話した柏木陽介をはじめ、危機感が言葉の端々ににじみ出た。次節の相手は大分だが、「絶対に負けられない相手」(宇賀神友弥)と、一切の油断を排除し1週間後に備えていた。

破竹の5連勝を記録した名古屋だが、広島に乗り込んでの6連勝達成には試練が待つ。この日のイエローカードでケネディと中村直志が次節出場停止となり、首位との一戦に攻撃と守備の中心選手を欠く事態となった。中村の代役は田口泰士でほぼ決まりだろうが、問題はケネディのポジションに誰を置くかだ。今季の起用法を見れば田中輝希が第1候補だが、ここにきて急浮上するのが日本最速を誇ったスピードスターである。浦和戦キックオフの45分ほど前、豊田スタジアム内では報道陣が名古屋の久米一正GMを囲んで話を聞いていた。すでに報道されている、永井謙佑の期限付き移籍内定の状況説明のためだ。そこで久米GMはまるで試合後の事態を予測していたかのごとく、こう明言している。「可及的速やかに手続きを進め、広島戦の登録に間に合わせたい。ウチならすぐ機能する」と。電撃的に発表された永井の起用法を含め、5連勝中のチームが次節にどのようにして臨むのか。勝って兜の緒を締めよどころか、1週間後が楽しみで仕方ない。

以上

2013.08.11 Reported by 今井雄一朗
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