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【J1:第20節 甲府 vs 新潟】レポート:警戒していた新潟・川又に決められるも甲府は柏の頭突きヘッドで追いつき、甲斐と越後の戦いは伝統に則り引き分け(13.08.11)

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甲府市の最高気温が40.7度で、全国1位タイということを会う人会う人が教えてくれて、会う人会う人に伝えた試合前。朝8時から炎天下で会場設営をしていたボランティアやフロントの人たちはキックオフの頃にはだいぶん消耗しているようにも見えた。
陽が陰る18時30分のキックオフでも大変なことはわかっていたが、前半の立ち上がりに甲府が完全に主導権を取り、ホームのサポーターは32度の暑さも忘れて試合に見入った。3−4−2−1の右のウィングバックの柏好文が4−4−2の左サイドバックの藤田征也に対して広いスペースで仕掛けて抜き去る場面も何度か。前節のC大阪戦では柏が仕掛ける場面がほとんどなかったので、中から外・サイドチェンジで、スピードあるドリブル・キレのある切り返しを存分に見ることができて多くの人は満足したはず。ベンチの城福浩監督以外は…。

甲府の3−4−2−1は、選手の配置も戦術理解も試し、成熟させる余地が多い。開幕時から外国籍選手を4人増やし4人減らすという4増4減を敢行してしまったツケなのだが、まだ1試合と半分しかやっていない割りにはツボを押さえることができていた。自陣でマイボールを失うことがあっても中央の3バックでしっかり守る。センターバックの佐々木翔は、最近の決定力はトヨグバ(鳥栖・豊田陽平)以上と言っていい川又堅碁をきっちり抑えきっていた。しかし、10分を過ぎた頃から甲府の3−4−2−1は攻撃面ではあまり機能しなくなった。パトリックのところでボールが収まらないようにも見えたし、その前の2シャドーに収まらないからパトリックが深い位置でプレーできなかったようにも見えた。城福監督は会見で「セーフティなパスが多かった」という話をしたが、パトリックならディフェンスラインが苦し紛れに出したようなボールでもある程度はキープしてくれたような気がしていたので、今でも解せない。

試合後、新潟右サイドハーフの成岡翔は「甲府は守備のブロックを組んでいるが、人の間で受けると、意外にボールが入ってから(プレスをかけに)来る」という趣旨の話をしていたが、新潟はC大阪のようなうまさを活かした中央突破とは違うボール運びで、中央に打開点を見出していた。この辺りは新潟の選手のうまさと賢さと経験の賜。甲府の3−4−2−1は相手の2トップしか前に張っていないのにウィングバックが自動的に下がって5−2−2−1みたいになることがあって、サイドにスペースを与える→使われる→同サイドのウィングバック、ボランチ、2シャドーが出て行く→(ボールを奪えないと)3バックの横のスペースを使われる→3バックが外に釣り出されて中の守備力低下、という悪循環に陥るという課題が見えてきた。

22分に土屋征夫が接触プレーで靱帯を痛め――試合後に聞くと「歯が痛かったから」と笑っていたが――盛田剛平を左センターバックに投入する。189センチの高さがあって前への強さは地上から空中まで完全にあるが、裏を取られたときは苦しくなることがあるだけに、ストロングポイントとウィークポイントのバランスは変わる。34分には川又にこの試合で初めて裏をきれいに取られた。トラップが大きくなったので、GK荻晃太の飛び出しが早くてシュートは打たせなかったが、何回も見たい場面ではない。GKがカバーできているうちは甲府の狙い通りというか、そうやらせている守備ではあるが、何回もやられれば、我慢できずにボールに行き過ぎて中央3枚やボランチが引き出され鉄壁のバランスが壊れてしまう場面も出てくる。

それをやらせたのが70分の新潟。甲府の右サイドのスペースを見つけ・攻略して、3バックを右サイドに釣り出して田中亜土夢が入れたクロスを川又が素晴らしいヘディングで決めた先制ゴール。甲府は67分に入ったばかりの左ウィングバック・水野晃樹がスライドして川又をペナルティエリア内でマークしていて、歩兵で戦車を相手にするような得手不得手関係だった。しかし、水野は「(入ったばかりの選手が)自分が競った相手(川又)に決められるとチームの士気が下がりかねない」と責任を感じ、「何としても取り返したい」と心の炎にガソリンをジャブジャブ注いでいた。その想いは3分後に結実する。
新システムになってから初出場だった水野が、新潟陣内深いところから得意のロングスローでFWパトリックを目掛けて入れたボールは、ジウシーニョを経由してファーの柏の前に流れていく。それを柏がヘディングシュートというよりも喧嘩の頭突きのような動きで新潟ゴールに叩き込んだ。

山梨中銀スタジアムも大いに沸いたし、この勢いで逆転といきたいところだったが、冷静に思い出せば主導権は贔屓目に見ても新潟だし、決定機の多さは完全に新潟。勢いで勝てる相手でもなく、バテ気味の1トップ2シャドーを流れの中で活かせていない甲府は、セットプレーに勝機を見い出すことが合理的だった。だが、ジウシーニョのキックは予定よりも高めに浮く傾向があるし、水野の右足もキレキレというところまでは高まっていない。運動量がほとんど落ちない柏のドリブル突破に期待したが、ペナルティエリア付近までドリブルで突入してもその後の一工夫というか1本のパスの精度が…。それらがあれば、もっと素晴らしい評価を受ける選手になることができるのだが、と城福監督は感じている。そこまで要求できるレベルの選手だから会見でも話すのだと思う。
甲府サポーターたちが期待したアディショナルタイムは予想外に短い2分で、最近は6分のアディショナルタイムが続いた甲府にとって、あっという間。新潟も最後は無理せずに勝点1で満足する雰囲気で、今季の甲府と新潟の戦いは2戦2分けで終結。甲斐と越後の戦いらしくて2分けにも風情を感じるのだが、クラブが「川中島の戦い」と銘打っていないのは残念。来季もJ1の舞台で、新潟と引き分けでも味のある「川中島の戦い」ができるように、甲府は次節の川崎F戦で勝点3を狙う。
新潟は今季ホームで2戦2敗(ヤマザキナビスコカップ含む)の鹿島にアウェイで勝って溜飲を下げつつ順位は上げたい次節。信濃で激しい戦いを繰り広げた…かもしれないご先祖さまに感謝するお盆を挟んで、次は勝とう。

以上

2013.08.11 Reported by 松尾潤
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