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【J1:第20節 大宮 vs C大阪】レポート:ジーニアスの証明。C大阪、柿谷の2ゴール+実質1アシストで酷暑の消耗戦を制す(13.08.11)

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25分、大宮のカウンターがC大阪を襲った。局面は3対2。中盤左サイドでボールを受けたチョ ヨンチョルがドリブルで中央へ突進する。右には鈴木規郎、左にはズラタン。ヨンチョルは右の鈴木へラストパスを選択するが、引きつけすぎたために、必死で戻った扇原貴宏の足にボールをひっかけてしまう。チャンスがついえた大宮の切り替えの遅れを、C大阪は見逃さなかった。
丸橋祐介から縦パスが中央のシンプリシオへ。前線からそのパスを青木拓矢がカットに戻るが、わずかに届かない。危険を察知した菊地光将も中盤に飛び出すが詰め切れず、シンプリシオがターンしたとき大宮の最終ラインには大穴が空いていた。シンプリシオのロングボールと柿谷曜一朗の動き出しが見事にシンクロし、抜け出した柿谷が見事なトラップから大宮ゴールを揺らす。決定的なC大阪の2点目。輝きを放ったジーニアスの前に大宮は沈黙した。

この日、最高気温38度を記録したさいたま市は、夜になっても気温が下がらず、キックオフの時点でまだ35度を超えていた。湿度も高く、まとわりつくような暑さの中、それでも試合はテンション高くスタートした。1分に大宮が左からヨンチョルのクロスでチャンスを作れば、返す刀でC大阪もカウンターから丸橋がクロスを送る。
3分、C大阪は山口螢の縦パス&突進をスイッチに、細かいパスワークで大宮の守備ラインを混乱に陥れた。ペナルティエリア内正面で混戦が生じ、南野拓実のシュートは菊地がブロックしたが、こぼれ球が最終ラインの裏に転がる。その先にいたのはシンプリシオ。確かにシンプリシオはボールへ反応したが、オンサイドからフリーで飛び込んできた柿谷にボールを譲り、プレーには関与せず。オフサイドをアピールしプレーを止めた大宮は、あまりにも早い時間に先制を許した。

もったいない失点だったが、ここから試合の主導権を握ったのは4連敗中の大宮だった。「(先制されて)しんどくなったけど、我慢しながらやろう」(渡邉大剛)と、選手同士で切り替え、守備を再構築。最終ラインを高く押し上げるとともに前線からプレスをかけ、中盤をコンパクトに圧縮して間を使わせず、間に入られてもあっという間に囲い込んだ。J1の前半戦を席巻したコンパクトな守備が復活し、高い位置でボールを奪ってはショートカウンターを発動し、C大阪のペナルティエリアに次々に侵入。25分には鈴木の強烈なミドル砲がキム ジンヒョンを襲った。

しかしここまで失点数の少なさではリーグ2位のC大阪の守備は堅く、なかなか大宮に決定機は作らせない。そして良い守備から攻勢を続けていた大宮をあざ笑うかのような、典型的なカウンターでの2点目。暑さの影響もあってか、大宮の守備は再びコンパクトさを失っていった。29分に下平匠の完璧なクロスにゴール前フリーでヨンチョルが合わせるが、ヘディングシュートは右にそれる。この日の大宮の最大の決定機であり、決まっていれば流れはまた変わったかもしれないが、これが外れたことによる失望感もまた大きかった。
2点をリードしたC大阪は、両サイドバックの上がりも控えて守りを固めてカウンターねらいを鮮明にする。そして64分にはキムからのパントキックに柿谷の個人技をからめ、思惑通りの3点目。大宮は故障明けのノヴァコヴィッチを投入するがコンディションは1か月前には遠く、最後までC大阪ゴールをこじ開けられなかった。

ベルデニック監督が試合後の会見で語ったように、酷暑がより直撃したのは、運動量と切り替えの速さで前線からのコンパクトな守備を標榜する大宮だった。良い時間帯は確かにあったが、勝負どころでの切り替えの遅れが致命傷となった。またこの異常な暑さが選手の判断を微妙に狂わせるのか、激しく接触して倒れ込む選手も続出。大宮は42分に金澤慎が負傷交代し、C大阪も61分に酒本憲幸が足を引きずりながら交代。大宮が既に交代枠を3枚使い切ったあとにズラタンが足を押さえて倒れたときは、大宮サポーターから悲鳴さえ上がった。
過酷な消耗戦。それでもC大阪は勝利で報われる。無得点で2連敗中のC大阪だったが、その間たったシュート1本に終わったエース柿谷がこの日は2得点+実質1アシストの大暴れ。取るべき人が点を取り、順位も5位に浮上。悲願のタイトルへ勢いの付く勝利だったことは間違いない。
一方の大宮は。疲労とともに5連敗の精神的ショックも残る。「失点しないように、別の方法も考えていかなければならない。気候も含めて、何か手を打つ必要がある」(ベルデニック監督)のは確かだろう。次節・アウェイ鳥栖戦もまた猛暑の中で、しかもハードワークが身上のチームと戦わなければならない。上位に踏みとどまれるか、中位集団に飲み込まれるかの瀬戸際に今、大宮は立っている。

以上

2013.08.11 Reported by 芥川和久
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