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【J2:第28節 山形 vs 群馬】レポート:群馬の反撃でまたも先制は実らず。山形、3試合連続ドローで後半戦初勝利はまたもお預け。(13.08.12)

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「うちはチャレンジャーなので、常に受け身になることなく行こうと話はしてました」(秋葉忠宏監督)という群馬だったが、小柳達司、保崎淳の両ウィングバックはボランチよりも低く構えた位置から敵陣に入るシーンが少なく、ボランチの黄誠秀もいつもの攻め上がりを見せなかった。その要因を秋葉監督は「後半勝負ということは僕らも伝えてましたので、そういった意味で前半、ゲームコントロールということで少しブレーキをかけたゲームだったかなとは思います」と語る。

序盤から自陣に押し込まれる形になり、ミドルシュートは何度か打たれたが、目立ったのはむしろスペースを消されたホーム・山形の攻めあぐねる場面だった。何度かブロック内へ進入を図るものの、すぐ近くの群馬の選手たちに寄せられ、自由にボールを扱うことも、シュートへ持ち込むこともできずにいた。逆に相手を本当の意味でヒヤリとさせた回数は群馬のほうが多かった。特に10分までの序盤、左サイドで永田亮太を追い越した保崎のクロスや、ペナルティーエリアをドリブルでえぐった横山翔平からのクロスはいずれも平繁龍一のシュートを引き出している。

群馬の前線ではターゲットの平繁が広島時代の先輩である西河翔吾に潰され、山形の前線では林陵平がフリックを試みるも全体のコンパクトさを欠くなかで適切なサポートが得られなかった。ロングボールはどちらにとっても有効な突破口とはならず、シュート数の少ないまま推移した試合は30分過ぎ、ほんのわずかに潮目を変える。群馬陣内でセカンドボールを拾った山形は、林がさばいて石川竜也が左からクロス。守備を押し込んだ2列目から山崎が入り込みヘディングシュートを放つと、その直後にもバイタルで前を向いた伊東から小林亮の右クロスが導かれ、コーナーキックを獲得。そのチャンスで、西河が中央から豪快なヘディングを決めた。西河はその5分前、同じ右からの同じような軌道のコーナーキックを当て損ねていたが、「タツさん(石川)とも『あのへんに蹴ってほしい』という話をしていたので、それがうまくいきました」と2度目のチャンスは逃さなかった。

これまでの数試合に比べれば、前半は内容的には物足りないものがあった。それでも我慢しながらチャンスを創出し、遂には先制した山形の試合運びは、それはそれで成長と呼べるもの。ただし、それを一気に打ち砕いたのが群馬、48分の同点ゴールだった。「自分たちのなかでどう崩していけるかということを試してみました」と永田との立ち位置を変えた横山が小林に強烈なチェイスをかけ、バックパスでGK清水健太が慌ててタッチへ蹴り出すシーンがあったその1分後、今度は右サイドで平繁が裏へ抜け出す。イ ジュヨンが慌てて追いかけるが、平繁は2度の切り返しで完全にかわすとフリーでグラウンダーのクロス。体を入れてブロックする小林の背後から横山が足を伸ばした。「平繁さんが裏に抜け出てくれて、信じてゴール前に走り込んだらボールがこぼれてきたので、走ってよかった」とゴールマウスにねじ込んだ。

同点となったあとはややオープンな状態で一進一退の攻防が続いたが、主導権を握っていたのは群馬。山形の足元へのアプローチは前半以上に厳しくなり、山形はシンプルに裏を狙っているというより、蹴らされ、セカンドも拾えないケースも目立つ。組み立てのない攻撃は単調に見えた。石川は「相手の裏を狙うような形になってきて、だいぶお互いに距離が広くなってくると、ボールを取ったあとに人が近くにいない。そういうときにどうするのかというのがひとつ」と課題を挙げている。

秋葉監督から「後半勝負」を伝えられていた群馬は、選手交代とともに徐々に前へのパワーを強め、それとともにパスワークを制限される山形は自分たちの戦い方を見失っていく。終盤になるにつれ、イージーなパスミスや連係ミスは相手ゴール前のみならず、自陣でも発生していた。78分にはスローインを受けた途中出場の青木孝太が振り向き様のミドルシュートで山形ゴールを強襲。その直後にも裏へ抜け出した平繁が西河に背後から倒されたように見えたシーンがPKではなく、逆に平繁のシミュレーションと判定されるなど、あと一歩という場面をつくりながら最後まで逆転を実現することはできなかった。前回対戦の2-2に続き、今回も1-1で決着ならず。両チームにとって微妙な勝点1となった。

4連敗のあとの3試合負けなしの群馬。加藤弘堅は「アウェイで山形さんという力のあるチームに追いついたというのはブラスに考えていい」と振り返る。その一方、神戸を破った最下位・岐阜に勝点で並ばれ、残留争いで予断を許さない状況は続くが、気温、湿度とも高いなかで走りきった執念は本物だ。「もっともっとトレーニングして、こういう状況でも跳ね返して勝点3を取れるだけの力強さ、タフさ、粘り強さ、勝負強さを、今後トレーニングして身につけていきたいと思っております」。秋葉監督がさらなる成長を誓った。
4連敗、2引き分けで7試合ぶりの勝利を目指した山形は、またも追いつかれて3試合連続のドローに終わった。ここ4試合は前半のうちに先制する試合が続いているが、後半に形勢を逆転される悪い癖を完全に脱却することができず、90分間安定感を感じさせた前節・京都戦の手ごたえもそこにはなかった。今回チョイスした2枚のセンターバックは高さ重視。攻守ともセットプレーでは一定の効果を上げたが、プレッシャーを受けた際のビルドアップで機能したとは言い難く、シュート数が一桁に終わった背景のひとつ。「求めるところというのは、その(パスや動き出しの)質、精度を上げていくところ、ビルドアップのところでももっと落ち着いてボールを動かしながら人も動いていく。その丁寧さを追求していかなきゃいけないなと改めて思います」。奥野僚右監督のいつもながらの愚直な正攻法が、次節こそ勝点3に結びつくのか。最低限のミッション、6位以内の昇格圏入りへの道は試合ごとに厳しさを増している。

以上

2013.08.12 Reported by 佐藤円
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