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【J2:第28節 熊本 vs 岡山】レポート:ともに勝ちきれずも、5試合無敗とした熊本と連敗を止めた岡山。この日の勝点1を次節以降につなげたい。(13.08.13)

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「下位のチームが昨日勝利した中で、今日はすごく大事なゲームだと、勝点3を取ろうと送り出しました」。池谷友良監督代行がそう話した通り、熊本にとっては負けられない一戦だった。この試合の持つ意味については選手たちもよく理解していたのだろう、序盤からテンポ良くボールを動かして狙いとする攻撃を展開する。3分には藏川洋平からのボールを受けた仲間隼斗がフリックで流し、藤本主税からのリターンを受ける形でペナルティボックスに侵入、11分には左サイドへ展開して片山奨典がクロスを送る等、岡山のボランチとワイドの間、あるいは3バックの前など、少ないタッチでシンプルにボールを動かし、受けるために前線が動くことによって生まれたスペースを効果的に衝いた。

だが「少し長かったり、精度の面だったり、中の入り方とか、いろいろ」(片山)な要素があと一歩。岡山GK中林洋次からのつなぎのミスを奪って藤本が狙った11分、堀米勇輝が作ったタメからやはり藤本が受けた34分、あるいは左から仲間がえぐった37分など、立て続けに迎えた決定機は、いずれも枠を捉えきれなかったりラストパスが合わなかったりで、なかなか得点に結べない。それでも、ボールを保持しながらフィニッシュまで持ち込む場面そのものが少なかった前節からすれば、大きく前進した内容だったのも確か。「いい前半だった」という池谷監督代行のハーフタイムコメントがそれを物語る。とは言え、取れそうな時に取れなければ、やはり流れは変わる。

後半、岡山の影山雅永監督は、MF仙石廉を下げて中盤を千明聖典の1ボランチにし、スピードのある(そして前期の熊本戦でも2得点を挙げている)押谷祐樹を投入。久木田紳吾との2トップに組み替えて前に厚みを出す形へシフトする。この狙いについて「点を取りに行くんだというメッセージを出したかった」と影山監督は述べ、実際に後半立ち上がりは岡山が攻勢をかけたのだが、岡山も熊本同様、最後の精度を欠いた。熊本としても、押し込まれても最後は中に入ってくるという守備面の割り切りは、池谷監督代行になって改めて植え付けてきたもの。前半から特に左の田所諒が再三に渡って好クロスを供給する場面が見られたが、熊本CB陣は中でしっかり跳ね返し続けていたこともあり、後半立ち上がりの岡山の時間帯もうまくしのいだ。

むしろ岡山にとっては、前に人数をかけて厚みを出すことによって熊本を押し込んだ結果、押谷らのスピードを生かせるスペースが逆に減ったようにも思われる。79分の先制点は千明からの浮き球を熊本DFラインの背後へ抜け出した押谷が冷静に決めたものだが、高い位置まで運びながら崩して追加点を奪うには至っていない。さらに興味深いのが、千明を1アンカー気味にした効果だ。岡山側には「藤本選手のポジションが非常に曖昧で、そこの部分をハッキリさせる」(影山監督)という狙いがあったが、試合後のミックスゾーンに現れた藤本が岡山の千明をつかまえ「後半なんで1ボランチにしたん? あれがうちには逆に良かったよ」と笑いながら言葉をかけ、片山も同様に「相手がシステムを変えてボランチの脇をうまく使えた」と話しているように、これが熊本にとってかえって奏功した部分もある。もっとも、疲れもあって精度が落ち、スペースが生じたタイミングの全てを上手く使えていたわけではない。それでも途中出場の齊藤和樹が何度も背後へ抜け出し、81分に同点としたあとも熊本が押し込む流れに持ち込めたのは確かに、千明の脇のスペースを使えていたこと、そしてお互いが勝点3を狙って前に出て行ったためだったと言える。

苦しかった前半を耐えて先制した岡山としては、勝ちきれなかった“もったいない”ゲーム。「最後の方はもう少しゆっくり、もっとボールを動かした中での連動した攻撃ができれば」と千明が話していたように、サイドに寄せたショートレンジでのパス交換ではスキルの高さと豊かなアイデアを感じさせるだけに、スピードを生かす形からの得点に加えて、そうした崩しからの得点を増やしたいところ。不用意にボールを失う場面をひとつひとつ潰していけば、この試合のように押し込まれることなく、自分たちの時間帯をもっと増やしていけるだろう。影山監督が試合後に話した通り、ゲームを通しての運動量や走力には自信を持っているからこそ、そうした部分をさらに高めたい。

対する熊本は、勝たなくてはいけない内容であり、しかしよく追いついた展開でもあり、2をこぼしたとも1を拾ったとも表現できる試合。3が取れなかったことで結果として順位も後退したが、それでも、「方向性は間違ってないと思うし、今は自分たちのやっているサッカーに対して、良くなっているという手応えを皆が持っている」という南雄太の言葉が、今のチーム状態を率直に表している。もちろん課題はまだまだあるが、良い内容と悪い内容を繰り返していた時期と比べれば、本当に少しずつではあるものの、この数試合で歩みを前に進めている感覚がある。シーズンも残り1/3の段階にきて、視界は拓けた。次節以降、新たな戦力を加えて一気に浮上する。

以上

2013.08.13 Reported by 井芹貴志
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