有光亮太という選手について考える時、いつも決まって思い出す歌がある。
私生児として育ちながらもアルゼンチンのファースト・レディにまで登り詰めたエバ・ペロンの生涯を描いた映画「EVITA」の主題歌「Don't cry for me Argentina」だ。
主演したマドンナがこれ歌い、映画と同様に世界的な大ヒットとなったため、ご存知の方も多いだろう。
もちろんこの歌はエバについて歌っているのだが、アルゼンチンと言う部分を福岡に置き換えると私にはまるで有光のことを歌っているかのように聞こえる。
Don't cry for me Argentina
アルゼンチンの人々よ、どうか(私のために)泣かないで下さい
The truth is I never left you
あなたたちから離れたことはありません
All through my wild days My mad existence
辛く困難な日々の中でも
I kept my promise
私は約束を忘れませんでした
Don't keep your distance
(どうか)私から離れないで下さい
説明は不要だとは思うが、ここで有光亮太という選手について少しだけ説明したい。
「Mr.長崎」と呼ばれる有光は、かつて福岡に所属しており2004年シーズン終盤には勝負を決める得点を重ねてチームを救う大活躍を見せた。ウーゴ・マラドーナや山下芳輝と並んで福岡のクラブ史上、最も愛された選手の1人だ。
しかし、2007年に当時九州リーグだった長崎に移籍し周囲を「あっ!」と言わせる。
長崎の7年間ではチームをJFLとJ2に2度昇格させた。長い時間をかけてJへと復帰した類まれな選手で、原田武男と並んで長崎の生き字引ともいえる存在だ。
これまで、福岡との対戦について有光は「絶対に出たい。7年間、この日を待っていました。特別な試合として、胸に期するものがあります」と語っていた。
その最初のチャンスとなった6月29日の福岡戦。有光の名前はリザーブにもなかった。
ただ、試合前に福岡サポーターが有光亮太のチャント(応援歌)である「コーヒールンバ」を歌うと、有光はアウェイゴール裏へと駆け寄り、福岡サポーターに少し照れながら頭を下げた。彼を見つめる何人かの福岡のサポーターは泣いているようにも見えた。
有光は「俺、あの時泣きそうだったんですよね。コールしてくれたので出て行ったんですけど、こみ上げてくるものがありました。本当にうれしかったです。だから8月18日のレベスタでの対戦は絶対出たい」と語っていた。
そして、約束の日。彼は福岡のピッチに帰ってきた。
試合も終盤に差し掛かり、有光の出番はないのかと誰もが思っていた86分。
長崎サポーターが「コーヒールンバ」を歌う中、有光はピッチに入るとペナルティエリア内で相手選手2人を抜き去る得意のドリブルを披露しチャンスを演出した。
7年かかったが、約束を叶えた瞬間だった。
試合後に「これが大きな目標でモチベーションでした。長崎と福岡の両方のサポーターに愛されて自分は本当に幸せです。ただ、長崎のサポーターに勝利をプレゼントできなかったのは申し訳ない」と話す有光に、「長い長い約束を果たしました。次の目標は何になりますか?」と尋ねると、「今はレギュラーではないので、まずは先発で出られるように。とりあえずは次の試合に備えたい」と早くも前を向いていた。
長崎の服部順一強化部長は言う「有光が以前、福岡でやっていた頃の、本来のキレを取り戻すとおもしろい」と。有光亮太とサポーターの物語はまだまだこれから。終盤戦、ドラマチックな展開が最も似合う男が虎視眈々と何かを狙っているはずだ。
以上
2013.08.26 Reported by 植木修平













