「試合を左右するゲームのあやで、ことごとくミスをした我々と、そこでしっかりと精度高く決めた松本の違いがこのスコアになったんじゃないかなと思っています」とは、三浦泰年監督の試合後の会見での言葉だ。その“あや”のなかでも、最も大きく勝敗を左右したのが、後半12分のPKだろう。0-1で迎えた、同点に追いつく最大のチャンス。だが、キッカー飯尾一慶の右足弾は、ゴール右脇を通過していった。「せっかく1-1に追いつくチャンスで外してしまって申し訳なかった」主将はただただ謝罪の言葉だけを繰り返すばかりだったが、敵将・反町康治監督も会見で「あのPKが入っていれば敗戦の弁を述べていると思う」と話していることからも、いかにあの時間帯、あの状況で0-1のまま乗り切ったことが、この試合の結果に影響を及ぼしたかが表れているのではないだろうか。
「立ち上がりから非常に良いリズムとテンポでボールを動かしていたし、スペースを作ってそこを使う決定的なシーンも作れるようなサッカー」(三浦監督)を展開しながらも、東京Vはまたしてもビハインドからの追いかけゲームとなった。
累積警告選手などがなく、3試合ぶりにベストメンバーで挑むと、序盤からボールがよく回った。マイボールの時間が増える中、何度か決定機を迎えた。中でも前半19分、右サイドから常盤の送った折り返しを、中央で西紀寛がスルー。その先にいた飯尾一慶に通ると、相手DFを上手く交わしてシュートという、アイデアとコンビネーションが絡んだ形でのビッグチャンスは、実に見事だった。それでも、どんなに素晴らしいプレーも、ネットを揺らさない限りは意味をなさない。その後も訪れた得点機を逃すと、前半終了間際の43分、CKからの1チャンスであっけなく先制を許したのだった。これで、5試合連続で追いかけるゲーム展開を強いられることとなった。
それでも、ここ最近の収穫として、選手たちは「先に点を取られても、1点なら追いつけるという自信がついてきたから、落ち込まなくなった」と語っている。言葉通り、焦りはほとんど感じられなかった。そして後半12分、“あや”のシーンが訪れる。高原直泰がペナルティエリア内ゴールラインぎりぎりのところでファウルを受け、PKをゲットするが、これを飯尾が失敗。すると、直後の13分だった。岩上祐三から塩沢勝吾が落としたところを船山貴之がきっちり決めてみせた。
0ー2となり、状況は厳しさを増したが、東京Vは第27節vs福岡戦で0-2のビハインドから逆転勝利を収めた経験がある。間もない同16分、石神直哉のクロスから小池純輝が頭で流し込み1点差に迫ると、「まだいける!」の雰囲気が漂い始めていた。ところが、最も大事な『次の1点』を奪ったのは、松本だった。同28分、船山のクロスを岩上が左足で決め、移籍後初ゴール。「1-3になったことで、勝敗が決まったと思う。そのういう意味で、チームを助けることができてよかった」(岩上)。なんとかもう1点返して同点にできれば、と、せっかく追い上げムードで攻めていた東京Vにとって、再びの2点差となるこの失点は、あまりに堪えたと言わざるを得なかった。
残り約15分間で2点差は、元々“堅守”速攻をスタイルとしている松本にとっては、セーフティリードと言っていいだろう。さらに、この夏場に向けて徹底的に走り込んできたという自慢の走力と集中力は最後まで途切れることはなく、東京Vは松本の牙城の前に屈した。
「警戒していたセットプレー、カウンターでやられてしまったことが悔しい。わかっていることでやられるというのは、自分たちが不甲斐ないということだと思います」と、GK佐藤優也が唇を噛めば、この試合に限っては得点機を再三逃してしまった飯尾は「すべて俺の責任です。今日は守備ではなく、1点しかとれなかった前の責任。特に俺ですけど、俺個人でも、3点は取れていたと思うし、取らなければいけなかった」と、猛省した。
東京Vは今季初の3連敗となった。「奇跡に近いものを目指して、残りの試合を戦わなければいけない」と三浦監督は語った。どのように立て直し、残り11試合で奇跡を起こしていくのか。真の意味で一丸となれるか、今こそチーム力が問われている。
一方で、松本は今季初の3連勝を果たした。東京V相手ということで、「真ん中の4人、2トップとチビさん(飯尾一選手)、西(紀寛)さんが技術も高いし、攻め残りしている感じだったから、守備的な戦いになると思っていました」(喜山康平)というなか、得意のセットプレーで先制できたことが大きかった。元々、東京Vの下部組織出身で、パスサッカーが身に染みついている喜山にとって、真逆ともいえる堅守速攻というスタイルは、「今までやったことのないスタイルで、すごく勉強になる」と話す。「どんなスタイルににしろ、やっているサッカーに自信をもってチーム全員が戦っていければ、強いチームになっていくと思います」そして、それが2年間積み重ねてきた反町山雅の現状だとも喜山は語った。
勝点を46に伸ばし、プレーオフ圏内がはっきり視野に入った松本。アウェイ戦でもホームの雰囲気に変えてくれるサポーターを最強の味方につけ、ここから2年目・反町山雅の真価を証明していきたい。
以上
2013.08.26 Reported by 上岡真里江













