春の訪れとともに始まったＪリーグも気が付けば第33節。今シーズンの行方を左右する最後の10試合が始まる。リーグ戦は42試合のすべてが等しく重要であることに変わりはないが、これまで積み重ねてきたものの本当の価値を決めるのが、これからの10試合。そこで何を見せられるのか。それがＪ２に所属する全20チームに試されることであり、その結果が最終的な順位を決める。その大事な戦いの初戦に福岡は横浜ＦＣをレベルファイブスタジアムに迎える。

まず、福岡のここまでを振り返ってみよう。昨シーズン18位に沈んだチームは、新たにマリヤン・プシュニク監督を招へい。戦う集団に生まれ変わったチームは、高い位置からのアグレッシブなプレスと、奪ってから縦に速い攻撃を武器に、小さな変化を身に付けながらリーグ戦を戦ってきた。残念ながら、第26節から始まった上位陣、あるいは昇格レースを戦う直接のライバルチーム同士との７連戦では１勝１分５敗と勝ち星を伸ばすことが出来ず、現在は12勝８分12敗の13位。６位京都との間には７の勝点差があり「６位以内に入ってプレーオフを戦う」という目標達成には厳しい状況にいると言わざるを得ない。しかし、どんな状況になっても100％の力で前に進むのが福岡のスタイル。「見に来てくれるサポーターのためにも、１試合、１試合、すべてを出して戦うのが自分たちのやるべきこと。とにかく、勝つことだけを意識して戦う」とは坂田大輔。シーズンが終了する最後の瞬間まで、その姿勢に変わりはない。

対する横浜ＦＣは、ここまで９勝11分12敗の15位。昨シーズンは４位でプレーオフに進出し、今シーズンのＪ１昇格レースを牽引するものと思われていたが、勝ちきれない試合が続き不本意なシーズンを過ごしている。第18節からは３連勝を含む７戦負けなしで勝点を伸ばしたが、その後４連敗と波に乗り切れなかった。それでも「トレーニングの取り組みと質は上がっている」と話すのは山口素弘監督。横浜ＦＣもまた、思うように勝ちきれない中で、自分たちのやるべきことをコツコツと積み重ねてきた。それを残る10試合で形にしたいと思う気持ちは強いはずだ。順位だけで見れば福岡の下位に位置するが「横浜ＦＣはサイドアタックが強いだけではなく、高さもあるし、中盤でもハードワークが出来るチーム。いろんな部分に対して常に注意を払う必要があるチーム」というのがプシュニク監督の横浜評。その実力を順位だけで判断することは危険だと言えるだろう。

戦い方という点で見れば、ともに両サイドバックを高い位置に上げてサイドアタックを仕掛けるのが特長。そのサイドでの攻防を、どちらが制するかで勝負が決まると思われるが、鍵を握るのは、相手の攻撃をいかにして受け止めるかということよりも、背後にあるスペースを利用し、いかに自分たちの攻撃を活性化させられるかという点にあると見る。勝負どころは中盤での主導権争い。高い位置でボールを奪い、「守」から「攻」へ素早く切り替え、サイドチェンジを交えながら両サイドを使う。そんなサッカーを表現した方に勝利の女神が微笑むことになるだろう。

また、福岡にとっては、先発起用が濃厚なプノセバッチと、11試合ぶりの復帰が予想される古賀正紘に注目が集まる。まだコミュニケーションに問題を残すプノセバッチだが、その高さと足下に収める技術は、福岡にとっては新たな武器。特に高さという点では、これまでの福岡には足りなかった部分でもあり、攻撃のバリエーションを増やすという意味で大きな期待がかかる。そして古賀の復帰は、天皇杯を含めて３試合で13失点という守備の立て直しだけではなく、チーム全体のバランスを整えるという意味で大きな意味を持つ。プシュニク監督も「ピッチ内外で大きな影響を与えてくれる選手。彼の存在はチームにとって、とても重要だ」と信頼を寄せている。

そして福岡にとっては何よりも勝利することが求められる。
「チームは厳しい状態にあるが、６位以内は決して不可能な数字じゃない。サッカーにはいろんなことが起こりうるし、可能性を信じて、１試合、１試合、勝ち続けるしかない。しかも横浜ＦＣ戦はホームでの試合、ホームで戦う以上、Ｇ大阪だろうが、神戸だろうが、横浜ＦＣであろうが、負けていい試合はひとつもない」（古賀）
福岡は、いつものようにスタンドと一体になった戦いで勝利を目指す。

以上

2013.09.14 Reported by 中倉一志