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【J1:第26節 大宮 vs 仙台】レポート:多くの時間でペースを握った大宮、試合をコントロールした仙台に敗れる(13.09.22)

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大宮が打ち立てた21戦無敗のJ1記録は、昨年の第23節にホームで仙台に敗れた後から始まった。その記録が途切れたのは、今年の第11節アウェイ仙台戦。仙台のJ1再昇格以来、大宮は1勝1分5敗と圧倒的に分が悪いが、しかもそうした大事な試合にことごとく仙台が立ちはだかるのは何かの縁か。大宮は第16節から始まった8連敗を前々節でようやく止めたが、前節に新潟で敗れ、浮上のきっかけをつかめないでいる。小倉勉監督は「その相手に勝つことで、チームが良い方向に向いていく、そういう節目の試合にしたい」と臨んだが、その願いは叶わなかった。

試合前から大宮には暗雲が漂っていた。今やチームの心臓に成長したボランチ青木拓矢が試合前日の練習で負傷し、ベンチにも入らないアクシデント。もう1人のボランチのレギュラー金澤慎も負傷で離脱しており、今年から加入した本職はセンターバックの高橋祥平と、この夏に仙台から補強したばかりの和田拓也のコンビで臨むことを余儀なくされた。ただ急造とはいえ、この2人は東京Vのアカデミーで1年先輩後輩であり、「お互いにやりたいことは分かっている」(高橋)同士で、2人でボランチを組んだ経験もある。そこも期待しての起用だった。

実際、立ち上がりは大宮が素晴らしい入りをした。仙台のロングボールに対してはニールと菊地光将がはね返し、対人に強い高橋と、ボール奪取力に優れた猟犬タイプの和田と、2人が持ち味を発揮してセカンドボール争いでも優位に立った。仙台のハイプレスに対しては「つないでミスして奪われるよりも1つ飛ばすパス」(渡邉大剛)で前線に早くボールを運び、決定機までは至らなかったが、セットプレーも含めてペナルティエリア内のシーンを次々に作った。
「前半で1点取れていれば…」と、大宮の多くの選手が悔しそうに振り返るのは、そのほとんどが前半10分までの攻勢を思い描いてのことだろう。ただ、その時間帯を過ぎると、32分にズラタンのクロスがノヴァコヴィッチに届いたシーンを除けば、ほとんどチャンスは作れなかった。仙台が意識的にゲームを膠着状態にコントロールしたからだ。
「大宮の攻勢に、前半はしのぐしかないと思った」という仙台・手倉森誠監督は、「相手にカウンターを与えるより、守っていればいいやと割り切った」。ハイプレスを諦めて引いてブロックを作り、攻撃はロングボール。セカンドボールを拾ってもまたハイボールをFWにという攻めを徹底したことで、大宮は「ボランチのところでプレスをねらっていたけど、引っ掛けられなくなった」(和田)。大宮も守備ラインを下げざるを得ず、ボールを奪う位置が低くなったことで攻撃に厚みが出せず、逆に仙台の厚い守りの前に攻勢が頓挫した。

そして後半、仙台は一転してつないできた。「相手が間延びしたところに対し、自分たちは距離を近づけてパス交換」(手倉森監督)することで、大宮の守備を攻略にかかる。「相手が前がかりになってきてオープンになってくるのはスカウティングでも意識していて、ウチが取った後にカウンターを良い形で仕掛けられた」(鎌田次郎)。キックオフ時の気温30.0度、厳しい西陽の中で前半から飛ばし気味に入ったことと、前半の仙台のロングボール攻めに慣れてしまったこと、さらには中央のボランチコンビと最終ライン、サイドハーフとの連携不足から、大宮の守備ブロックはコンパクトさを失い、「プレスに行くタイミングやスピードが少しずつ遅れ、相手を自由にさせてしまった」(和田)。仙台の2ゴールは、いずれも右サイドの太田吉彰のクロスに、ファーサイドから詰めた選手が得点したもの。この形でのシュートが、前半に2回、後半にも得点シーン以外に1回決定機があり、ねらい通りの形だったことは明らかだ。
ただ大宮も、後半のシュート数は8対6で仙台を上回っているように、決して守勢一方だったわけではないし、仙台にリードを許してからは、引いてカウンターをねらう仙台を攻めたてた。59分にはズラタンのアーリークロスにノヴァコヴィッチがボレーで合わせ、林卓人がビッグセーブでしのぐ決定機もあった。ただ、焦りからか、渡邉大剛が「前線でのコンビネーションや、中央の間をもっと使えれば良かった」と振り返るように、大宮の攻めが裏へのスルーパス一発か、サイドからのクロス一発頼みになってしまったことで、中央を固める仙台の守備を崩すには至らない。ペナルティエリアに侵入し、シュートも撃てているが、崩せてはいないので、最終局面でDFに身体を張ってシュートコースを消され、最後までゴールネットを揺らすことができなかった。

試合後の手倉森監督は開口一番「うれしいです」と顔をほころばせた。一方、小倉監督は「チャンスにしっかり決めないとこういう試合になる」と肩を落とした。確かに多くの時間帯でペースを握っていたのは大宮だったが、仙台はしっかり試合自体をコントロールして勝利をつかんだ。この彼我の差は、大きい。
徹底的に対戦相手を研究して対策をしてくる仙台との対戦は、このところ、大宮にとって節目であり続けている。昨年の第3節の敗戦ではエース東慶悟(現F東京)が負傷し、鈴木淳監督(当時)解任に至る成績不振の端緒となった。同じく昨年第23節の敗戦によって大宮は守備を修正し、後の21戦無敗に結びついた。その無敗記録が途絶えた今年第11節の敗戦は、他チームに大宮攻略法の1つを示す結果になった。今回の敗戦が、後にポジティブな意味を与えられるものとなるかどうか、それは残り8節の戦いぶりにかかっている。

以上

2013.09.22 Reported by 芥川和久
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