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【柏から世界へ】今季のACLで2度対戦。浦和担当ライターによる広州攻略虎の巻(13.09.23)

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◆マルチェロ・リッピという指揮官
強大な戦力を誇る広州恒大は、前評判に違わぬ強さでここまで勝ち上がってきたが、スタイル自体はシンプルだ。外国籍選手が点を取り、中国人が守り切る。もちろん、実際には中国人選手も攻撃に絡んで点は取るし、守備陣には韓国代表選手もいる。しかし、彼らの強さを支えている要素を見ていくと、そういう図式になる。それは柏が昨年戦ったときも基本的に同じだったと聞いている。

ただ、昨年と大きく異なるポイントもある。それはチームの頭脳、マルチェロ・リッピ監督の存在だ。ユベントスの黄金期を築き、ワールドカップで頂点にも輝いた世界屈指の名将は昨年5月に就任。昨季のACLで柏が広州恒大と対戦した時はまだ采配を振るっていなかった。

リッピ監督は我々がイメージする通りの“イタリア人監督”だ。相手のことを徹底的に分析し、相手の良さを消し、もっともリスクの少ない方法で勝利することを模索する。今のイタリア代表の方向性はいわゆる「カテナチオ」とは違うが、リッピ監督はいかにも古き良き時代のイタリアらしい采配を見せる。少なくとも浦和に対してはそうだった。

広州恒大が今季のACL初戦で浦和と対戦した時、リッピ監督は浦和のことをよく研究していた。印象的だったのは試合前日の記者会見。その場には日本語の通訳がいなくて英語通訳を介しての会見になったが、彼は浦和の注意すべき選手の1人として阿部勇樹の名を挙げ、「タクティカルプレーヤー」と評していた。

Jリーグを見ていればすっかりお馴染みだが、今の浦和のシステムではボールを保持しているときに阿部がボランチの位置からDFラインに落ちて、ビルドアップで重要な役割を担う。戦術的に重要な選手、タクティカルプレーヤーだ。リッピ監督はちゃんと去年の浦和の試合を分析し、そのメカニズムを理解していたことになる。

もっとも、浦和の戦い方はかなり独特なので、少し見れば阿部の役割は誰でもわかることではある。驚かされたのはその他にも宇賀神友弥、そして興梠慎三を注意すべき選手として挙げたことだ。宇賀神はともかく、興梠は今年新加入。去年のビデオには映っていない。

つまり、リッピ監督はいろんなルートを使って新戦力の特徴なども入念に調べ、その能力と生かし方も把握していたのだ。結果としてその試合に興梠はコンディション不良で出場しなかったが、今の浦和での興梠の重要性を考えると、改めてイタリア人指揮官の慧眼には驚かされる。

実際、リッピ監督は分析を生かした戦いぶりで、浦和を見事にハメて白星スタートを切った。浦和の押さえどころ、狙うべきポイントを実に的確に突いていた。柏についても丹念に分析した上で、ローリスクハイリターンの戦い方をしてくるはずだ。

◆広州攻略のポイントとは
ここまでのACL、広州恒大は7勝2分1敗の成績でベスト4まで勝ち進んできたが、唯一の黒星をつけたのが浦和だ。しかし、このグループリーグ第5節の試合から広州恒大の弱点を引き出せるかというと、正直なところ参考にはならないだろう。

当時、広州恒大は大量得点差で負けなければ首位通過が決まるという、なかば“消化試合”のような状況にあった。メンバーこそガラリと変えてくることはなかったが、戦い方は初戦とはまったくの別モノ。彼らのホームではあれだけ的確な浦和対策を準備して臨んできたのに、埼玉スタジアムの試合では極めてオーソドックスなスタイルで正直にぶつかってきた。柏との準決勝であんな無防備な試合をしてくることはまず考えられない。

それでも、浦和との2試合だけでも見えてきた広州恒大の特徴はある。それは外国籍選手3人が基本的に攻撃専門、つまり守備にはあまり関与してこないという点だ。彼らはプレスをかけてパスコースを制限することぐらいはするが、自分の後ろにボールが運ばれると、基本的にはプレスバックはせずにその場にとどまる。浦和戦に限定して言えば、ダリオ・コンカはそれでもまだ多少戻って守備をすることがあったが、残りの2人(ムリキとルーカス・バリオス)は攻め残ることが多かった。

この特徴は広州恒大のウィークポイントと言えるが、同時にストロングポイントでもある。守備をしないということは後ろの選手に負担がかかるので場合によっては守備の破綻につながるが、ボールを奪った瞬間には攻め残っている彼らのポジション取りがそのままカウンターの起点になり、破壊力のある速攻につながる。それはまさに、柏のレアンドロ ドミンゲスの攻め残りが対戦相手に脅威を与えてきた事実と重なる部分だ。

浦和戦でも、快勝した初戦では彼ら3人がカウンターの仕上げ人として猛威を振るっていたが、黒星を喫した試合では3人が守備をしないことが守備崩壊の要因になっていた。1人くらいであればまだしも、3人も守備をしないとなると、チームとして相手の戦い方に合わせた守備戦術を用意しないと苦しくなるが、リッピ監督はそれができる指揮官でもある。ただ、柏のネルシーニョ監督も相手の良さを消す術に長けている。栄華を極めた名将に日本屈指の知将が仕掛ける謀略戦。その上質の駆け引きはこの一戦の見どころになりそうだ。

◆ホーム・日立台の力を活かしたい
柏にとっては、大事な初戦をホームで迎えられることは大きい。日立台は雰囲気が独特だ。ピッチと観客席がとても近くて臨場感にあふれるため、柏の選手たちはサポーターの後押しをより身近に感じることができ、対戦相手は圧迫感を受けて息苦しさを覚える。

広州恒大は強敵だ。正直、浦和が戦った時よりも強くなっている。浦和が対戦したときにストライカーを務めていたルーカス・バリオスは移籍でいなくなったが、代わりに準々決勝から出ているエウケソンはバリオス以上に危険だ。

DFの死角に入るポジション取りがうまく、一瞬の隙を突いてゴールを簡単に奪っていく。足元の技術も非常に高く、1人でフィニッシュまで持っていく力がある。シュートレンジも広く、ミドルシュートも脅威だ。正直、バリオスは助っ人3人衆のなかで最も与し易い選手だったが、エウケソンはムリキ以上に警戒すべき選手だ。ムリキとのコンビネーションが合っているのも非常に嫌らしい。

迎える第1戦、柏はレアンドロ ドミンゲスを欠き、主将の大谷秀和も出場停止となるため、純粋に戦力だけを見比べれば、中国の雄に軍配が上がるだろう。だからこそ、柏は他の要素が大事になってくる。指揮官の策略、選手たちの全力で戦う姿勢、そして彼らのポテンシャルを100パーセント以上引き出すサポーターの大声援。持てるすべての力を注ぎ込むことで勝利が近づくはずだ。

以上

2013.09.23 Reported by 神谷正明(浦和担当)

☆TV放送予定
 【G+】18:45-21:00(生放送)
 【日本テレビ】26:29-28:24(録画放送)
 日本テレビ「アジアチャンピオンズリーグ」公式サイト
J's GOAL総力取材!ACL特集コーナー
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