浦和がヤマザキナビスコカップ決勝に勝ち上がるための大前提は勝利だ。浦和は今季、リーグ戦、ナビスコカップの2試合で7失点している川崎Fに、まずは勝たねばならない。簡単ではないが、浦和はアウェイゴールを2点持っており、川崎Fを1点以内に抑えて勝利すれば文句なく決勝進出となる(⇒詳細はこちら)。比較的わかりやすいこの状況について山岸範宏は「(一発勝負の)トーナメントと実質一緒。この試合に勝つことだけを考える」と述べている。そして、柏木陽介は勝利のために必要なこととして”いつもと変わらないサッカー”を上げ、次のように述べている。
「失点は避けたい。失点しなかったら自分たちは点が取れる自信がある。だからといって守備に回るというよりは、この前大宮に対して、わりとプレスに行った状態を続けられ、高い位置でボールを奪えてまたチャンスということが続いた。前から押し込むイメージの方がオレはいいと思っています」(柏木)
実際のところ、川崎Fは前から来られる相手に対し苦戦をする傾向にある。近いところで言えば、27節の名古屋戦は前線からのプレッシャーをもろに受け、持ち味のパスワークを発揮できなかった。つまり、柏木が思い描く方向性は正しい。この試合の川崎Fがどうなるかは分からないが、浦和がハイプレスを武器にするならば、川崎Fを押し込む展開は十分に考えられる。そんな中、浦和が気にするべきは準決勝第一戦の試合展開を繰り返す怖さである。
後半開始直後に2点差をつけ、川崎Fを押し込んでいた第一戦の浦和は、後半60分ごろから勢いを失う。大久保嘉人へのハードマークが鈍ったのが原因だった。前回の対戦では、山田暢久と、坪井慶介の両選手が、大久保を徹底的にマーク。大久保がパスを受ける瞬間を逃さず、足元にプレスを仕掛け、囲い込んでボールを奪い続けていた。その結果、川崎Fは大久保へのパスを入れることを避けるようになり、パスはディフェンスラインでしか回せなくなる。
ところが後半60分に山田暢久が大久保へのディフェンスの直後に足をつらせてベンチへ。また69分にも坪井が同じように足をつらせ交代を余儀なくされる。そしてここから川崎Fがペースを奪い返すのである。前回対戦時の浦和は、最終ラインの槙野智章が代表招集されており、また鈴木啓太が負傷のため出場を回避しており、彼らの欠場が戦況を左右していた。ところがこの試合の浦和は主力メンバーが揃っており、前回の対戦時のような緊急避難的交代はまず無いと見ていい。また気候も涼しくなりつつあり(前回の気温は27.6℃、湿度70%)、そうした点でもハイプレスを仕掛けやすい環境が整っている。
浦和の状況がいい一方で川崎Fには負傷者が出ている。6日の柏戦時に神経系の麻痺の症状に襲われた大久保は、10日の段階で全体練習に合流することができなかった。一時は全身が麻痺し、体の感覚がなくなるという事態に陥っていた大久保の症状は、日に日に快方に向かっているとのこと。ただ、まだ完全にしびれが取れておらず、出場が危ぶまれている。その得点力はもちろん、パスワークに参加して試合を組み立ててきた大久保の果たす役割は大きく、彼が欠場するとなると一気に川崎Fの形勢は不利となる。
また、9日の練習中に井川祐輔が足首を痛めて戦線から離脱。ジェシとのコンビで守備を安定させてきただけに、川崎Fにとっては彼の欠場は痛い。井川欠場の川崎Fの最終ラインには伊藤宏樹が入ることが予想されており、ジェシとのコンビは急造にならざるを得ない。伊藤は「いまさらコンビネーションが、とか言えないでしょう」とこの大一番で回ってきた出場の可能性にも平常心を保っているが、とはいえ、急に何もかも上手く行くとは限らない。試合当日までどうなるかはわからないが、主力が欠場した前回の浦和のような問題が川崎Fに起きているのである。
そうした状況で浦和が狙いたいのが興梠慎三と2シャドーの原口元気、柏木を絡ませた攻撃であろう。第一戦の浦和の1点目は、宇賀神友弥が加わった彼らのコンビネーションが生かされたもの。先日の大宮戦でも、ニールを退場に追い込んだ場面で見せたように、縦パスに対するスルーやフリックは意表をつく攻撃であり脅威である。そしてこの攻撃的縦パスが、副次的な効果を生むのだと柏木は説明する。「(縦パスに反応する)裏に走る人を増やすと、(相手が)裏への意識を強くする。そうすると(浦和の選手の)足元も空いてくる」
つまり浦和が裏のスペースを狙い続けることで、結果的に浦和の選手へのプレスが弱まるという。より相手ゴールに近い場所で、顔を上げるための時間が生まれるのであれば、裏へのパスを見せパスとして使うのは悪いことではない。
もちろん川崎Fは柏木を始めとした前線の3選手の連動が危険であることを十分に認識しており、これに対抗すべく守備の確認を行っている。その鍵を握るのが稲本潤一と山本真希のコンビだ。稲本は1対1で無類の強さを持っており、山本とともに危機察知能力に長けている。彼らボランチの2選手が浦和の前線の3選手にどのように対応するのかはこの試合の見どころの一つとなるだろう。ちなみに山本は「僕とイナさんが横に並ばないように。しっかり角度を付けて守ればなかなか相手も入れづらいと思います」と述べている。
なお稲本は山本に加え両サイドの選手の役割にも言及。「シャドー(柏木と原口元気の2枚)のワンツーも気になりますがそこでCBを動かしたくない」と話しつつ「バランスよく僕達、(山本)マサキと、レナトと(小林)悠とで、ブロックが作れればいい。ただ、(攻撃的な分)多少レナトのところがルーズになってしまう。そこをどうするのかということ。あとは悠が上下に激しく動いてくれるので、そこでボールが取れればというところと、早い攻めができればというところです」と試合を展望した。
「攻撃的なチームだと思いますし、点取られても取り返してくる。前の個人の力も強いですしそこをしっかり抑えなければならない。相手よりも点を取る気持ちで頑張りたいです」と話す梅崎司は「勝てば決勝に上がれますし、勝って、ホームの力も借りてやれればいいかと思います」と試合に向けて意気みを見せる。
一方、川崎Fの中村憲剛は「基本的に勝つ姿勢で行かないと、引き分けでいいという器用なチームではないので」と述べ、「勝ちに行くのは変わりない」とこちらも勝利への意欲を燃やしていた。
結局のところ、浦和は前線から積極的なプレスを仕掛けてくるのだろう。それに対して川崎Fは、磨いてきたパスワークを発揮し浦和のプレスをかいくぐることができるのかどうか。いずれにしても、試合開始直後から激しい戦いになることが予想される。スタジアムで見届けて、損はない一戦になりそうだ。
以上
2013.10.11 Reported by 江藤高志
J’s GOALニュース
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