4−0。ヤマザキナビスコカップ準決勝・第1戦、柏対横浜FMのスコアだ。1点ずつしか刻めないサッカーというスポーツにおいて、4点のビハインドをひっくり返すのは「奇跡」といってもいいだろう。柏の優位性は動かない。
しかも柏は、今の横浜FMの心理状態を痛いほどわかるはず。なぜなら、自分たちもつい最近、同じ状況を味わったからにほかならない。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)準決勝、第1戦で広州恒大に1−4の大敗後、強い決意をもって第2戦に臨んだものの0−4…。強烈な屈辱を体感したからこそ、自分たちと同じ立場に置かれた横浜FMに対し、容赦なく相手が一番嫌がる戦いを、実践してくるに違いない。今回の一戦に向けては、序盤から攻め込んでくる相手を想定し、粘り強く守り、逆襲からのチャンスで確実に仕留めることを念頭においた練習を積んでいるという。鋭利なカウンターを光らせ、横浜FMに引導を渡しにかかる。
ただし、先のACL準決勝と全く同じシチュエーションかと言えば、そうではない。柏は第2戦ではアウェイに乗り込んだが、今回、横浜FMは、第2戦をホームで迎えられるからだ。
「まず1点を取って畳み掛けて、『まさか、ひっくり返されるんじゃないか』と相手が焦る展開に持っていきたい。三ツ沢(ニッパツ三ツ沢球技場)で戦うし、サポーターも味方にして相手を追い込めればいい」
チャンスはまだあるとばかりに含み笑いを浮かべて、守護神・榎本哲也がそう話す。スタンドとピッチの距離が近く日立柏サッカー場にも似た雰囲気を醸す三ツ沢で戦えるからこそ、横浜FMとしては密度の濃い大声援を背に、俗にいう“イケイケの展開”へ持ち込みたいところだ。
“イケイケ”を実現させる要素は、もう一つある。それは柏が最近、勝てていないこと。奇しくも前回の横浜FM戦以降の公式戦7試合で、3分4敗と白星に縁がない。その間の失点数は広州恒大の2試合が含まれているとはいえ、計18点と1試合平均2.5点以上。連戦の疲れもあったとはいえ、本来の守備の粘性が薄れているのは事実。さらに言えば、中盤の守備の要・大谷秀和や増嶋竜也、レアンドロ ドミンゲスらが戦列離脱中と、台所事情は苦しい。榎本が言うように、もし横浜FMが早めに得点できれば、柏に負のメンタルが働く可能性があるかもしれない。
ただし、横浜FMにとって柏は“鬼門”だ。J1に再昇格した2011年からのリーグ戦・対戦成績は2分4敗。昨年末の天皇杯・準決勝、そして前回の対戦でも敗れており、相性は誰が見ても良くない。またリーグ戦の直近2戦は、守りを固めてくる相手に手こずり、2試合連続無得点。おまけに欧州遠征中の日本代表・齋藤学が不在と、柏同様に不安要素を引っ張り出せる。
しかしながら「奇跡を起こせるのは、プレーする自分たちだけ」(兵藤慎剛)である。「このまま負けちゃ、プロとして情けない」(中町公祐)と誇りを武器にトリコロールの戦士が、4点差の強大な盾をもつ太陽王に立ち向かう。
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2013.10.11 Reported by 小林智明(インサイド)















