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2019年6月4日(火) 19:00

ワールドクラスの選手を輩出するために――。「PROJECT DNA」が描くJリーグの未来像【インタビュー】

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ワールドクラスの選手を輩出するために――。「PROJECT DNA」が描くJリーグの未来像【インタビュー】
なぜJリーグのプロジェクトに携わることになったのか。そして日本で具体的にどのような活動を行っていくのか。4月下旬にふたりに話を訊いた

選手や指導者の資質を紡ぎ、ワールドクラスの選手を輩出することを目的に、Jリーグは今年2月に育成重点施策「PROJECT DNA」を発表した。Jリーグの「2030フットボールビジョン」の一環として立ち上げられたもので、選手だけなく、指導者、レフェリーなども含め、「世界で最も人が育つリーグ」を目指す。

「PROJECT DNA」の重要戦略としてふたつの柱が挙げられる。ひとつは各クラブのアカデミー組織がより機能するための「アカデミー・パフォーマンス・プラン」。もうひとつがヘッドオブコーチングを養成する「JHoC」(ジェイホック)である。

このふたつの活動を指揮するのが、イングランド出身のテリー・ウェストリー氏とアダム・レイムズ氏のふたりだ。

ウェストリー氏は指導歴37年の実績を誇り、イングランドのウェストハム・ユナイテッドの監督や、複数クラブのアカデミーダイレクターなどを歴任。またクラブだけでなくプレミアリーグの仕事にも携わり、育成改革プランEPPPの設計・発動なども行ってきた。

レイムズ氏はウェストハム・ユナイテッドのアカデミー運営責任者を担当。またプレミアリーグのクラブ監査に関するコンセプトの構築や、選手育成データベースの開発に関与した人物だ。

サッカーの母国で、指導者育成やアカデミー環境の整備に心血を注いできたふたりが、なぜJリーグのプロジェクトに携わることになったのか。そして日本で具体的にどのような活動を行っていくのか。4月下旬にふたりに話を訊いた。

―――まず、今回のプロジェクトに参加に至った経緯を教えてください。
テリー・ウェストリー(以下、TW):何年か前にJリーグの方々が我々のところにやってきて、私とアダムが取り組んでいた活動を気に入ってもらったことがきっかけです。我々もJリーグのビジョンやアイデアを聞いた時に、大変興味を持ちました。その後、「JHoC」の原型になるヘッドオブコーチングのワークショップを日本とイングランドで行い、今につながっています。

アダム・レイムズ(以下、AR):育成年代の改革について、リーグ全体を変えていくというところが非常に大きなチャレンジであるし、我々にとってもモチベーションが上がるオファーでした。その成果を想像した時、非常に興味深いものだと感じましたね。

――元々Jリーグに対しては、どのようなイメージを持っていましたか?
TW:代表のレベルで言うと、日本はアジアカップで優勝したり、ワールドカップにも近年は毎回のように出場している。また、前回のU-17ワールドカップではイングランドとも対戦しましたね。その意味で、育成分野でも成果を上げていると感じています。ただ、クラブチームのことはあまり知らなかったですし、実際に育成でどういった取り組みが行われているかも知りませんでした。今回のプロジェクトにかかわるようになり、少しずつJリーグのことを学んでいます。

――実際に来日され、日本のサッカーを見た印象は?
AR:サッカーそのものが違って見えたというのが最初の印象です。また、ピッチ上だけでなく、置かれた環境も違う。育成のところで言えば、高校サッカーというのは、イングランドではないものです。それは日本の独自のサッカー文化であり、日本に来てみないと分からないことでした。

TW:我々はすでに、日本に来て20クラブくらいを回りましたが、選手やスタッフと触れ合うなかで、人としてのリスペクトであったり、学びたいという勤勉性を感じました。そうした思いを持っている人が多いと感じたので、我々としても「PROJECT DNA」を通して、サポートをしたいというモチベーションが高まっています。

――その「PROJECT DNA」では、具体的にどういった活動が行われるのでしょうか?
TW:では私のほうから「JHoC」について、アダムのほうから「アカデミー・パフォーマンス・プラン」の紹介をしていきます。今回のプロジェクトにおいてこれらは、非常に大きなふたつの柱になります。

まず「JHoC」はアカデミー内でコーチたちの指導能力を高める立場、つまりコーチをコーチする立場の人材を育成することを目的にしています。講義や海外研修などの活動を行いながら、5年をかけて72人のヘッドオブコーチングを育成していく予定です。これは想像してみるとすごいことで、72人のヘッドオブコーチングが各アカデミーに配置され、彼らの力によってアカデミー内で良い指導者を増やすことができるのです。

AR:「アカデミー・パフォーマンス・プラン」は、簡単に言えば、各アカデミーをより良くしていくための取り組みです。今回、各アカデミーを訪問し、ビジョンや目的を聞いたところ、トップチームに選手を輩出するという返事が返ってくるのですが、実際にどういった戦略を持って取り組むかということが、十分に明確ではないクラブが見られました。そのため、我々は、このサポートシステムを通じて、どのような計画戦略を導入して進めていくかを一緒に考えていければと思っています。

具体的に言えば、各アカデミーを成長させるガイドラインや基盤作りをJリーグが主体的に行っていきます。一方で我々がすべてを決めるのではなく、各アカデミーの独自性が反映されるような仕組みも上手く設けていきたい。フィロソフィーはあくまで、それぞれのアカデミーが備えているべきものであるからです。

――「アカデミー・パフォーマンス・プラン」を導入することで、どういったメリットが生まれるのでしょう。
AR:このプランを使えば、アカデミーのウイークポイントを把握できます。弱点が分かるため、Jリーグ側はピンポイントのサポートを提供できる。それによってアカデミーのパフォーマンスを向上させていくことができるのです。

TW:IDPとは個別育成計画のことですが、プレミアリーグのあるクラブはIDPの評価が一番下のレベルにありました。なぜならIDP自体を持っていなかったからです。このように、ビジョンを達成するために何が必要か。その必須要綱が「アカデミー・パフォーマンス・プラン」には羅列されることになります。IDPだけでなく、様々な項目において何が必要なのかを明記し、またそれらをいつまでに取り組むべきかの期限も書くことになっています。そのようにプランした項目を一つずつクリアしていくことで、アカデミー組織が良くなり、ひいてはJリーグ全体のフットボール水準の向上が図られるのです。

――クラブの評価は、おふたりが判断されるのでしょうか?
TW:基本的にはクラブが自己評価します。その評価を私とアダムが見て、Jリーグとしてどのようなサポートができるかという判断をします。ここではまだお見せできませんが、クラブの進捗状況を把握するためのツールを用いることで、クラブは活動を円滑に行っていくことができます。

――これまでの活動の中で、日本とイングランドとの育成の違いはどこにあると感じましたか?
TW:先ほども言いましたが、日本のリスペクトの精神は素晴らしいと感じています。クラブ訪問をした時もそうですし、村井チェアマンをはじめとするJリーグのスタッフもそうです。このプロジェクトにかける情熱、ビジョン達成への熱意というものを感じ、私たちも大変刺激を受けています。

また選手の振る舞いを見ても、どこに行っても彼らは元気な声であいさつしてくれますし、熱のこもった良い雰囲気での練習ができている。イングランドの選手と比べても、はるかに純粋にサッカーの向上に力を注いでいて、何事も当たり前だと考えず、自分たちに与えられている環境に感謝して、取り組んでいる。そこは本当に素晴らしいところだと感じます。

AR:テリーが申しあげたことに付け足すとすれば、イングランドではこの9年間で取り組んできたことの成果が、今現れ始めています。日本はこれから新しい何かを成し遂げようとスタートさせた段階。その意味では、これからが非常に楽しみですし、その未来には大きな可能性が開かれていると感じます。

――文化や環境が違うなかで、日本に合った育成システムとはどういったものだと考えていますか?
TW:アカデミー・パフォーマンス・プランの骨組みはありますが、その中身に日本をベースにした要素を取り入れていくことはもちろん大事なことです。我々の立場では、どういったプレースタイルの選手を作るとか、どういったフィロソフィーを求めるとか、そういう領域にはかかわれませんが、「2030フットボールビジョン」に向かって進めていくなかで、おのずとそれが日本流になると思います。

これはあくまで希望ですが、2、3年後にJリーグに、平均年齢が20代前半のチームがいくつか出てきてほしいと考えています。アカデミーが育てた選手が多額の移籍金で移籍していく。そうすることでアカデミーが投資利益を得られる。そういう選手が増えていけば、代表の強化にもつながっていくでしょう。そんな流れが生まれてくれば、今回のプロジェクトの成果になると思います。

――その成果を得るためには、どういった要素が求められるでしょうか?
TW:リーダーシップとビジョン、そして戦略です。そこに関して言えば、すでにJリーグにはあるわけですので、我々の構想を実際にアカデミーが導入する流れを早く構築したいと考えています。例えばAとBの2つのアカデミーがあったと仮定し、Aはビジョンやフィロソフィーがまったくなく、そこを改善する動きもない。一方でBは、アカデミーに対してしっかりと力を注ぎ、より良い投資を行いながらアカデミーを育てようという戦略、戦術、プランが見える。その場合、Jリーグ側は果たして同じサポートをするべきでしょうか。それは決して平等ではありません。より努力しているクラブにこそ、しっかりとしたサポートをするべきでしょう。もちろん、Aのようなクラブがないことは知っていますが。

――仮にAのようにアカデミーへの投資が進みにくいクラブに対しては、どのようにアプローチするのでしょうか?
TW:こちらから強制することはありません。ただ、アカデミー・パフォーマンス・プランを導入すれば、自ずと周りとの違いが浮かび上がってきます。当然パフォーマンスの高いクラブ、低いクラブが出てくるのですが、世界トップクラスの選手を輩出したり、トップクラスのアカデミーに成長していくことを目指すのであれば、すべてを均一に扱うことはできないでしょう。ゴールドメダリストを本気で育てたいのであれば、可能性のある人材や組織をしっかりとサポートするべきなのです。もちろんすべてが整っていないクラブを見放すという考えではなく、示された意欲や計画性に対してJリーグ側はしっかりとサポートしていきます。

――2030年をひとつのメドにした今回のプロジェクトですが、おふたりはどのくらいのスパンで携わっていこうと考えているのですか?
TW:私の奥さんが日本にいてもいいよという期間ですね(笑)。それは冗談として、このプロジェクトを成功させることがひとつの基準になるので、成功したと感じるまでです。年齢を考えても、これが私にとっての最後のプロジェクトになると思います。最後の仕事とするのであれば、なおさら今まで以上に強い意識をもって、成功させたい。成功しないで終えるという選択肢は、私にはありません。

AR:今行っている活動や骨組みは、将来に長続きしないと意味がありません。だからこそ将来的に、上手くいくような取り組みにしたいですね。ここにもたらしたものがしっかりと根付くことで、いずれはJリーグで内製化されて、受け継がれていくことを願っています。

 

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