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【レポート:クラブW杯 準々決勝】広島本来のサッカーでアフリカ王者に勝利

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2015年12月14日(月) 14:01

【レポート:クラブW杯 準々決勝】広島本来のサッカーでアフリカ王者に勝利

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【レポート:クラブW杯 準々決勝】広島本来のサッカーでアフリカ王者に勝利
攻守に活躍し、広島の勝利に貢献した森﨑。

にわかには信じがたい光景が、大阪長居スタジアムで展開されていた。

2010年のクラブワールドカップ・ファイナリストが、コートジボワールをはじめとするアフリカ各国の代表を集めた「スター軍団・マゼンベ」が、世界的にはまったく無名のチーム・サンフレッチェ広島のパス回しに全くついていけないのだ。

前からプレスをかける。ボールを奪いにいく。だがアフリカの猛者たちが見せる迫力満点の圧力をあざ笑い、ギリギリまでボールをさらしながら動かし、さらに動かす。引けばボールを持ちだし、突っかければダイレクトではたく。ピッチの縦幅・横幅を目一杯に使い、ボールを自由に出し入れする。ダイナミックかつ繊細なビルドアップを繰り返され、コンゴの勇士たちは肉体的にも精神的にも疲弊した。一歩間違えれば失点の危険もあるが、これが広島本来のサッカーだ。

試合の立ち上がり、ペースは間違いなくマゼンベが握っていたかに見えた。懐の深いボールキープと信じられない柔軟性を武器に、広島の守備をいとも簡単にかいくぐり、シュートを打ち込む。4分、セットプレーからのヘディング。11分のミドルシュート。14分にはスルーパスからの抜けだし。「あとは、決めるだけ」に見えた。

だが、広島は最後の最後に、崩れない。相手の決定機に見えたシーンでも気づけば身体を寄せていた。抜かれてもカバーに飛び込み、置いていかれても追いすがった。Jリーグでも続けていた粘りの守備を、アフリカ王者相手にも躊躇なくぶつけた。その上で、したたかに相手の能力をインプットしていく。その間合い、そのスピード、ボール扱いの癖、組織としての連動性。それぞれのコンピュータに入力が完了した後は、広島のペースだ。19分、森﨑 和幸の凄みに満ちたボール奪取から佐々木 翔が受け継ぎ、佐藤 寿人の決定機につなげた場面以降は、Jリーグ王者のプランどおりに物語は運んだ。

アフリカのスターたちは、ボールを奪おうと走った。取れそうに見える。だが、残念ながらとれない。その繰り返しの中で、彼らは続けることをやめてしまった。44分、茶島 雄介のCKを佐々木がすらし、塩谷 司が押し込んだ先制点。56分、同じく茶島のCKから圧巻の高さで千葉 和彦が叩き込んだ2点目。ゴールを重ねられるごとに、彼らのプレーからは精気が消え、チームは壊れていった。3点目、青山 敏弘の見事な展開からミキッチの突破、そして浅野 拓磨のヘッド。歓喜の広島の側で、互いに文句を言い合うアフリカ王者の姿があった。

「完敗。準備が足りなかった」
同じような敗戦の弁を繰り返すパトリス・カルトロン監督に対し、コンゴからやってきたジャーナリストは辛辣な言葉を突き刺す。
「あなたはこれまで、苦境をはねのけてきたのではなかったか。いつものあなたは、どこにいったんだ」
だが指揮官に力強さは戻ってこない。
「広島がいい試合をしたことを受け止めるしかない。それ以上、言うことはない。選手は一生懸命やってくれた。責任は私にもある」

試合前日の記者会見で、アフリカでの栄光に包まれたカルトロン監督は「広島の試合は見ている。オークランド・シティ戦だけでなく、G大阪とのチャンピオンシップもね」と対戦相手は分析済みだと示唆していた。だが、彼らにとっての不幸は、チャンピオンシップやオークランド・シティ戦は、本来の広島の姿から、かけ離れていたこと。特に「ドクトル」という称号を持つ男が、自らのミスから失点を許したG大阪戦とは全く違う姿で彼らの前に立ちはだかることは、おそらく想定外だったはずである。どんなに圧力をかけられても平然と受け流し、ボールを自在に配球。横に縦に、何でもないパス回しに見えるが、絶対にカットできない絶妙のコースにボールを流し、しかも受け手にとっての優しさに満ちている。決定的なパスを連発した青山のお膳立ては、森﨑 和幸のきめ細かさが担っていた。

守備でも彼はさりげない。絶妙の位置に立っているから、どうしても相手はスピードアップできない。そのくせ、タックルはハード。森﨑 和幸を外しても、彼の動きから周りも動き出すから、二の矢・三の矢が飛んでくる。茶島が元気だとみるや、彼の足下にボールを集め、勝負させる。つかみどころがないように見える背番号8の仕立てに、マゼンベは沈黙し、そして自壊した。日本では往々にして見過ごされがちな彼のプレーをしっかりとFIFAのテクニカルスタッフが評価し、森﨑 和幸というマイスターにマン・オブ・ザ・マッチを与えてくれたことも、広島サポーターにとっての僥倖だ。

さあ、次はアルゼンチンだ。リバープレートだ。説明不要のビッグクラブ。サビオラというスーパースターもいる。だが、その名前に気圧されることなく、勇士たちはきっと闘ってくれるだろう。平和都市・広島のクラブだという誇りをもって。Jリーグの頂点に立ち、オセアニアとアフリカの王者に勝利したことで得た、大いなる勇気を持って。

[ 文:中野 和也 ]

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