11月23日（日・祝）J2第44節川崎F−広島(13:00KICKOFF/等々力）
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　川崎戦を前にＪ１昇格が決まったことは、広島選手・監督・チーム関係者にとって、嬉しい誤算だったと言っていい。しかも広島で決まったことで地元はおおいに盛り上がり、サッカーに普段かかわりのない人まで、口々にサンフレッチェのJ1昇格を話題にし、祝福した。地元TV局もこぞってサンフレッチェの特集番組を放送し、昇格決定翌日の地元紙には、一面トップに「J1復帰」の文字が踊り、コラム・スポーツ面・社会面・地方面など６面にわたって関連記事が掲載される熱の入れよう。長引く景気低迷と財政不安等によって、全体に元気のなかった広島の人々に熱い想いと勇気を与えたことは、間違いない。

　小野監督は、選手たちに日・月の連休を与え、歓喜の波の中に浸ることを許した。監督自身も、日・月はテレビ出演がめじろ押しで、インタビューを受ける度に感激を新たにもした。が、「この連休で、J1復帰の感激は封印。気持ちは次へと切り替えた」と小野監督は語る。そう、まだ広島には最後の仕事が残されている。言うまでもなく、J2優勝だ。

　広島の歴史は、準優勝の歴史である。1994年チャンピオンシップ、1995・96・99年と３度にわたる天皇杯準優勝。トップチームだけでなく、Jユースカップでも、広島は優勝こそ１度果しているものの、準優勝が２度。シルバー・コレクターと揶揄されるほど、最後の最後で敗れている。

　小野監督自身、コーチを務めていたアトランタ五輪最終予選やアジアユースで、「本大会出場権」を獲得した後の決勝戦で敗北。準優勝を繰り返していた。「一つの大きな目標を成し遂げた直後に、もう一度気持ちを集中して、次の目標を達成することは、言葉で言うほど簡単ではない」と、小野監督は言う。

　しかし、次の川崎戦に勝てば、新潟の試合結果は関係なく「J2優勝」の栄冠を手にすることができる。確かに今季最大の目標は果した。が、小野監督は言う。「サッカーをやっている以上、優勝という栄冠は絶対に手にいたいものだ」。また、「僕自身、プロに入ってから優勝経験がない。優勝を手にして、みんなで笑いあいたいですね」と森崎和も語る。

　また、広島の選手たちにとって、優勝と同じくらい闘志をかきたてられているのが、相手が川崎である、ということ。川崎は、広島にとって唯一、勝ち星をあげていない相手。ホームでの２試合は、いずれもロスタイムで同点に追いつかれて引分。第12節には、今季初黒星をつけられた相手でもある。

　「１チームたりとも、負け越した相手を残してリーグを終えたくない」と小野監督。

また、井川祐輔も「川崎には絶対勝って優勝したい」と言いきり、下田崇も「川崎に勝たないまま、J1に行くことは許されない」と熱い思いを口にする。川崎に今季やられた屈辱を忘れている選手など、誰もいない。

　リカルドが練習中に足を痛めて心配されたが、おそらく日曜日の試合には問題はあるまい。等々力決戦には現状のベスト布陣で臨めるはずだ。ポイントは、何と言っても右サイド。対面にいるアウグストをどう抑えるか、は試合のすう勢を握るはず。ただ、前節で右サイドを務めた森崎浩司は、こう語る。「鳥栖戦では僕自身が復帰戦だったということもあり、すこしコンビネーションに問題もあった。でも、今週の練習でしっかりとやれたと思うし、修正はできている。アウグストをことさら意識するのではなく、僕自身のプレイで先手をとっていきたい」。

　実際、第２クールでも右サイドで登場した森崎浩は、アグレッシブなプレイでアウグストに決定機を与えなかった。後ろに控える井川とのコンビも慣れ、「問題はない」と言い切る。

　「優勝と２位は全然違う。みんな、それは充分知ってますよ」と森崎浩はチーム全体のモチベーションの高まりを代弁する。広島の選手たちにとって、「J1昇格」の歓喜は既に過去のこと。今はJ2史上初めて「優勝」と「昇格」がかかった大一番に勝利することしか、考えていない。

2003.11.21 Reported By 中野和也

以上

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