2003年12月14日開催
天皇杯3回戦
ベガルタ仙台 1 - 2 アルビレックス新潟(延長Vゴール)


　ベルデニック監督がサバサバした表情で言う。

「全体的に見ればいい時間帯はあったが、失点してしまった。うちの左サイドを抜かれてやられました。Vゴールの場面も集中力の問題です。あとは終了間際の失点ですね。今シーズンも終了間際に失点しているのでその意味では成長していない」

　新潟ペースで推移した前半。山口が積極的に攻撃に絡み、栗原が中央に絞る動きで仙台ゴールに迫った。しかしフィニッシュの精度の低さと、仙台のゴール前の分厚い壁の前に得点できないまま時間が過ぎていく。いわゆる「いやな展開」。そしてその「いやな」予感は40分の山下のヘディングシュートとして顕在化してしまう。

　反町監督が振り返る。

「前半を振り返るとほとんどあそこだけだったんですが、あそこで決めるのがJ1でやってきたチームの力なのかなと。あとハーフタイムにも言ったんですが、J1とJ2の違いは、クロスの精度だと思いますね」

　左に流れた佐藤から中央に走りこんだ山下へピンポイントでクロスが入る。山下の得点感覚もすばらしいが、佐藤のクロスも鮮やかだった。前半を押されながら先制した仙台は、多くのカードを手にすることになる。ベルデニック監督が切ったカードは、リスクを少なくて無理をしない試合運びを行うということ。

「後半からは相手（仙台）のリズムに乗ってしまったと。相手がリトリートした状態で、しっかりセットした状態からボールを回され始めた（反町監督）」

　実際後半の新潟は苦しんだ。前半のよさが消え、時間ばかりが過ぎていく。膠着した状況を打破する一番の対策は、選手交代だ。二人同時に代えることはあまりないと監督自信が言う采配は、75分になされた。負ければシーズンが終わる。仙台スタジアムには1500人のサポーターが駆けつけている。負けられないという想いが、新潟に力を与える。多少強引ではあっても、次々とチャンスは生み出されていく。あと一歩が遠い試合展開の中、残り時間もわずかとなった87分。ピッチに末岡が送り出される。

「あの時間帯に入ったので、ボールを持ったらすぐシュートに行こうと思っていました」

　ぽっかり空いた右奥のスペースに栗原からのパスが出ると、走りこんだ末岡が右足を振りぬいた。88分の得点は、新潟にとっては劇的な。仙台にとっては悲劇的な同点ゴールとなった。

　延長戦前半。101分のビッグチャンスを仙台が逃すと「仙台はセットプレーのときのディフェンスが非常にあいまいだということですね。それは昨日もシミュレーションしてやったとおり、狙いどうりに森田が点をとりました」と反町監督が胸を張るVゴールが106分に決まる。

　延長後半開始早々のコーナーキックに反応したとき、森田は頭1つ抜けた状態でヘディングシュートをし、新潟サポーターの目の前で勝利のゴールを叩き込んだ。劇的な幕切れ。沈黙する仙台サポーターと、熱狂する新潟サポーター。強烈なコントラストが、両者の立場を際立たせた。

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　試合前の記者席で、地元仙台の記者達がかわすこんな会話が耳に入ってきた。

「仙台スタジアムで（仙台の選手が）ブーイングされてるよ」

　それは新潟サポーターに対する遠まわしの敬意に満ちた言葉だった。閉め切られた記者室にまで響き渡る激しいブーイングと自チームに対する声援が、新潟サポーターの気持ちを端的に表していた。

　４回戦に進出した新潟が対戦するのは、強豪磐田。当然のごとく磐田には多くのサポーターが駆けつけることだろう。そんな状況の中で、新潟はどんな試合を見せてくれるのか。仙台戦を見た限りでは苦戦必至と思われるが、チーム、サポーター一丸となった戦いで驚きを見せてほしい。

　ちなみに仙台には、およそ1500人の新潟サポーターが集結している。

2003.12.15 Reported by 江藤高志

以上