98年にNTT関東から大宮アルディージャとなって足掛け7年。ピム、三浦俊也、ヘンク、菅野将晃と指揮官は次々と代わったが、クラブ悲願の「J1昇格」はなかなか現実になろうとしない。まさに背水の陣となる2004年は、90分間テクニカルエリアで怒鳴り続ける「熱血采配」で名を馳せた三浦監督が2年ぶりに復帰。選手の方も大塚真司、原崎政人らこれまでの主力が去り、ダニエル、久永辰徳、高橋泰らが加入した。フロントも若返りを図るなど、大宮は大幅にチームを刷新して新シーズンを迎えたのだ。
今年の目標はズバリ「J1昇格」。それしかないと、新指揮官は断言する。
「ポゼッションサッカーを目指そうが、引いて守ってカウンターサッカーを狙おうが、高い位置からプレスをかけるリアクションサッカーを試みようが、とにかくJ1に上がらないと意味がない。今年は自分たちのスタイルにこだわらず、相手を研究してサッカーを変えるやり方も取っていく」と。
以前の三浦監督は「ポゼッションサッカー」に強いこだわりを持っていた。2002年ワールドカップの韓国代表ヘッドコーチで、昨年は京都パープルサンガの監督を務めた恩師ピムの影響もあって、「つねにイニシアティブを取りながら、攻撃的かつエキサイティングなフットボール」を模索し続けていたのである。
しかし2年間の解説者生活を経て、彼は「J2は形でなく結果が何よりも大事」という考え方に方向転換した。解説者時代に収拾したデータも駆使し、数字的な裏づけを持ったうえで、今季を戦い抜こうとしている。
「過去の戦いを見ると、昇格ラインは『勝ち点85』くらいになるだろう。1クールあたりだと勝ち点21、つまり6勝3分けを上回らないといけない。さらに言うなら、J2は先制点を取ったチームの勝率が非常に高い。昨年のアルビレックス新潟も先制した試合の95%を勝利していた。もう1つの特性を挙げると、1試合あたりの失点が1点を超えるチームはほとんどJ1に昇格できていない。99年以降、平均失点1以上でJ1に上がったのは、セレッソ大阪、ベガルタ仙台、浦和レッズくらい」と三浦監督は1つ1つ細かく説明する。
「しっかり守って先制点を取る」というのが、指揮官の描く「J2勝利の法則」なのだ。
こうした理論的裏づけと、昨季の早い段階から始めた戦力補強の成功が自信になっているのだろう。今年の三浦監督には「精神的余裕」が感じられる。ここまでのテストマッチは1勝5敗と、同じJ2のモンテディオ山形に勝っているだけだが、チーム完成度は着実に向上している。2年前の中心選手であるトニーニョ、奥野誠一郎、氏家英行、安藤正裕、バレーらが残っているのも心強いようだ。そのせいか、一部ではお馴染みとなった、テクニカルエリアで檄を飛ばすパフォーマンスも今年はかなり少なくなった。本人は「公式戦になったら、またやるかもしれないけど」と苦笑いしていたが……。熱血指揮官の変貌ぶりも、今年の見どころといえる。
今年のJ2は上位2チームが自動昇格でき、3位もJ1最下位との入れ替え戦の機会を得られる。まさに千載一遇のチャンスだが、大宮はあくまで「2位以内」を目指す。第2クールまでダントツの首位に立ちながら、助っ人外国人の負傷で失速した2001シーズン二の舞だけは、絶対に避けたいところだ。
【新戦力・注目のキープレーヤー】
J1経験を積んだ久永や喜名哲裕など、地味ながら堅実な補強が目立つ今シーズンの大宮。そんな中、最も注目すべきなのは、新ストライカーのダニエルだろう。184cm、79kgと大柄ながら、ボールタッチが柔らかく、速さとうまさ、高さを併せ持っている。1・5列目でもプレーできる器用さもある。20歳になったばかりという若さゆえ、未知なる可能性も秘めている。フロント陣の期待は非常に大きい。
「やはりJ2は外国人に頼るべき部分が大きい。ダニエルとバレーが計算通りに働いてくれないと、J1昇格レースは厳しくなる」と三浦監督も正直な思いを打ち明ける。
以前はスピードと強引さだけという印象だったバレーにも、ここ数年間のJ2経験を経て、うまさと鋭さが加わった。2人のブラジル人ストライカーが繰り出す攻撃は、相手にとって脅威になるだろう。彼らが得点王争いの上位に顔を出すようなら、大宮の戦いはかなりラクになる。
ダニエルとバレーのいずれかが負傷で欠けた場合、あるいはスーパーサブとしては、サンフレッチェ広島で目覚しい実績を持つ高橋泰が控えている。彼のようなイマジネーション、攻撃のアイディア、シュート力を持つFWはこれまでの大宮にいなかった。高橋の存在がチームの命運を左右することも大いに考えられる。
昨年まで横浜FMでプレーしていた久永は盛田剛平とともに左MFを担い、大宮に復帰した安藤正裕は不動の右MFとしてチームをリードする。元日本代表でベテランの安藤はキャプテンにも指名され、高いモチベーションを持っている。右サイドはチームの攻守の生命線になるだろう。ボールテクニック、攻撃センス、独特のリズムを持っている喜名も面白い存在である。
守備陣では、水戸ホーリーホックで過去3シーズンをコンスタントに戦い抜いた冨田大介、F東京から加入した元ユース代表候補の尾亦弘友希が左サイドバックを争い、大分トリニータからやってきた若松大樹が右サイドバックに入る。富田はフィジカルの強いDF。水戸での実績もあり、指揮官からの信頼は厚い。若松は清水エスパルスの石崎信弘コーチの秘蔵っ子というべき存在。山形で才能が開花し、大分でメキメキと力をつけてきた。最大の特徴は1対1の強さである。
こうした選手たちをいかに組み合わせるのか。「2年前のチームよりチーム完成度は低い、個人個人も持っている能力を見極めながら使えば、バランスの取れたいいチームができる」と三浦監督も手ごたえを口にする。その手腕にも注目したい。
【開幕時の布陣予想】
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3月13日の開幕ゲームで大宮が対戦するのは、優勝候補筆頭の京都。韓国代表FWチェ・ヨンスや日本代表FW黒部光昭らタレントを抱え、J1チーム以上に選手層が厚いといわれるチームだ。初戦はアウェーだけに、「最低でも勝ち点1を取りたい」と指揮官は本音を漏らす。そんな状況を想定しつつ、開幕戦のスタメンを占ってみたい。
基本システムは4-4-2である。GKは安藤智安で決まり。最終ラインもJ2屈指のセンターバックであるトニーニョと奥野が中央を守り、右に若松、左に富田という守備力のある選手が並ぶことになる。
大激戦なのはボランチ。大宮での試合経験が豊富な氏家に斉藤雅人、下部組織からの生え抜きでプロ2年目のファンタジスタ・金澤慎、攻撃センスのある喜名、センターバックもこなせる木谷公亮らがいる。三浦監督は「コンディションと組み合わせを見ながら使う」と話すが、京都戦に関しては、やはり守れる斉藤と氏家のスタメンか。試合の流れを見ながら喜名らを投入することになるだろう。
右MFの安藤正裕はチームの大黒柱。攻撃の切り札でもある。左は現状だと盛田が有力だ。そしてFWはダニエルとバレーの強力2トップが京都守備陣の厚いカベをこじあける。
今のところは、ここに挙げた15人プラスDF平岡靖成、尾亦、FW横山聡ら3人くらいがレギュラー候補といえる。
絶対に欠かせないのは、奥野、トニーニョの両センターバック、右サイドの安藤正、バレーの4人だろう。彼らがどれくらいコンスタントに戦えるのか。それが大宮の今シーズンの行方を大きく左右するに違いない。
2004.3.11 Reported by 元川悦子
以上
大宮、宮崎県西都市キャンプレポート
2004シーズン 開幕直前・クラブ別戦力分析レポート

















