昨年末、運営会社であった「株式会社ヴィッセル神戸」が入札によってチームを譲渡する方針を発表。年を明けた1月5日にはインターネット商店街最大手の『楽天』の関連企業である株式会社クリムゾングループが落札し、中旬に営業譲渡契約を締結。2月1日から株式会社クリムゾンフットボールクラブとして新たなスタートを切った。
チーム名が変更されないこと、本拠地が変わらないこと、などにより、見た目の大きな変化は感じられないが、その中味は、想像以上にいい意味での変化を遂げているというのが今の率直な感想だ。そう、今回の再スタートを機に明らかにチーム内には緊張感が漂い、昨年まで2年連続残留争いを繰り広げた弱小チームの面影はない。ヴィッセルは生まれ変わったのだ。
その新生ヴィッセルの指揮をとるべく、新監督に招聘されたのがイワン・ハシェック氏。現役時代の晩年にはJリーグのサンフレッチェ広島、ジェフ市原等でプレー。Jリーグ通算83試合出場、42得点という実績を誇る男である。
その氏のもと、チームは2月1日に始動。以後、チーム史上初となる3部練習を経て、高知キャンプに突入。フィジカル強化はもちろんのこと、課題としてきたチーム全体の守備意識の改革等を徹底する中で、順調にチームを仕上げてきた。途中、獲得が発表されたFWイルハンの加入で、周囲こそ騒がしくなったが、逆に選手は静観。というよりは、自らのポジション奪取にそれどころではないといった雰囲気を漂わせていたのも、今季の神戸の躍進を期待させたもの。
あとは「今、チームに漂ういい雰囲気、緊張感を本物にしていくために必要なのは勝利。勝つことによって、本当の意味でチームが生まれ変わらなければいけない」というキャプテン・FWカズの言葉にもあるように、それらの緊張感をシーズンを通して持続し、結果を出し続けることが、新生・神戸をより高みへと押し上げる手段。昨年は最後まで組織としての戦いが見られず、攻守連動の見られない中、何とか残留を決めた感が強かったが、同じ轍を踏む訳にはいかない。攻守の要であったDFシジクレイの抜けたボランチに、ケガ人等の問題もあって選手が定まりきらないのは気になるところだが、前線には前述のFWイルハンをはじめ、FWレアンドロンやMF藤本主税が、守備にはDFホージェルらが加わり、それぞれ厚みがもたれた様子。となれば、あとは個々が与えられた役割を明確に理解し、チームに還元していくこと。また、その上で組織としての戦いを全うすることが実現すれば、必ずや結果は出る。
【新戦力・注目のキープレーヤー】
先の日韓共催ワールドカップ以降、その甘いマスクで人気を集めたFWイルハンへの注目度は、連日のメディア報道を見ての通り。また、営業面においても、チケット販売をはじめ、ファンクラブ会員の増員など、目に見えた効果が大きかったと言える。
プレーにおいては、チームへの合流が遅れたこと、右膝の古傷の状態がベストではないことなど、開幕を控えた今も不安材料があるのは正直なところだが、それでも、コンディションさえ整えば、本来の実力を発揮してくれるはず。ここまでの練習試合等においては未だ無得点と沈黙しているが、日に日に周囲とのコンビネーションも良くなっているだけに初ゴールも時間の問題だろう。
一方、守備においては、左サイドを預かるDFホージェルに注目したい。13年間にわたってブラジルの名門、グレミオに在籍した彼は、ブラジル杯やブラジル選手権での優勝やトヨタカップでの準優勝など、実績に裏づけされた豊富な経験の持ち主。また、武器とする身体能力の高さに裏付けされた強さ、怖さを兼ね備えたプレー、そして何よりサッカーへの真摯な姿勢は、今季を戦う神戸にとって必要不可欠なものとなるだろう。加えて、守備のみならず、チャンスあらば積極的に前線へと駆け上がる攻撃力も新たにチームにもたらされた魅力の1つ。事実、開幕前の練習試合では、左サイドを果敢に攻め上がる中、幾度かのゴールチャンスも導く姿も。もちろん、それは「全
ては守備ありきのプレー。守備での仕事を徹底した上で、チャンスがあれば攻め上がることも当然あるが、攻守のバランスをみながらプレーしなければいけない」のだが。
「サッカーとは1人が組織を育て、組織が1人を育てるもの。その1人として自分も最大限に力を発揮し、神戸の勝利に貢献したい。なぜならサポーターを喜ばせる方法。それは勝つことがすべてだから」とホージェル。彼にとっては初の海外移籍が実現した今年、「自分にとっても大事な年になる」という自覚が、その活躍を後押ししてくれるはずだ。
そしてもう一人、忘れてはならないのが『10』を任されたMF藤本主税の存在。ゴールを決めたあとのパフォーマンス“阿波踊り”は有名だが、それはあくまでも“おまけ”。最大のアピールポイントはやはりその攻撃力と言える。昨年は中盤から前線にかけてのつなぎ役がおらず、攻撃回数の減少、もしくは単調な攻撃展開が目についた神戸だが、その課題は彼の存在によって解消されるはず。昨年在籍した名古屋ではいささか影をひそめた感も強かったが、ゴールに向かう積極性、パスセンス、シュート力は健在。加えて、「声を出すことでチームをひっぱりたい」と話す明るいキャラクターもチームの追い風となるだろう。
【開幕時の布陣予想】
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基本は4バック。GKは変わらず掛川誠、DFラインは右からDF松尾直人、土屋征夫、北本久仁衛、ホージェルが固そう。彼らに、先の高校選手権で活躍したルーキーDF河本裕之ら評価の高い選手らがどう絡んでくるか。中盤は右から、MF朴康造、佐伯直哉、菅原智、藤本主税か。中でも三浦泰年の引退により手薄になっている印象が拭えないボランチについては、昨年ケガで離脱していた佐伯のコンディションの戻り具合にもよるが、練習試合等で試されていたDF坪内秀介やMF薮田光教、FW小島宏美らハシェック監督の“合格点”を得ている選手をはじめ、新加入のMF青野大介らによって最後まで熾烈なポジション争いが繰り広げられそう。
最後に、8名での熾烈な争いを繰り広げてきたツートップは最終的にはFWカズ、イルハンの可能性が高いが、練習試合でコンスタントに得点を挙げていたFW播戸竜二をはじめ、新加入のFWレアンドロンらも存在感を示しており、ハシェック監督は最後まで頭を悩ませそう。それぞれタイプが違うFWだけに、組みあわせにも注目したい。
2004.3.11 Reported by 高村美砂
以上
神戸、高知キャンプレポート
2004シーズン 開幕直前・クラブ別戦力分析レポート

















