2001年、「ジェフで戦いたいと思う全員の力で勝つ」という意味をこめたキャッチフレーズ≪WIN BY ALL!≫を掲げて、優勝への3年計画はスタートした。その3年目となる昨シーズン、イビチャ・オシム監督は走力をベースにした、多彩で魅力的な攻撃サッカーを選手たちに徹底的に叩き込んだ。その結果、タイトル獲得こそできなかったが、1stステージ3位、2ndステージ2位と、初めてシーズンを通して最後まで優勝争いを演じ、旋風を巻き起こした。
2001年にも1stステージ2位、昨年と同じ年間3位という成績を残しているが、中身はまったく違う。優勝チームとの勝ち点差という数字の違いだけでなく、ピッチで披露したサッカーの内容は向上し、選手一人ひとりの意識も大きく変化したのだ。だが、それでもジェフは優勝にあと一歩届かなかった。2004シーズンはその大きな一歩を埋めることができるか、ジェフの真価が問われるシーズンとなる。「優勝争いできるチーム」から「優勝するチーム」への中期計画を立ち上げた今シーズンの強みは、なんといってもオシム体制の継続だ。99年以降、理由はさまざまあるが、ジェフでは2シーズン連続で最後まで指揮を執った監督がおらず、選手はシーズンを迎えるたびに新監督の戦術を学ばなければならなかった。だが、今シーズンは昨シーズンに体得した“考えて走るサッカー”をさらに深く追求しながら戦っていける。
だが、その一方で新たな課題も発生した。長らくジェフの“顔”となっていた中西永輔(横浜F・マリノス)、昨シーズンのリーグ戦総得点の約30パーセントとなる17得点を挙げた崔龍洙(京都パープルサンガ)という攻守の要がチームを去った。特に、大きな得点源であり、2001シーズンから在籍した崔龍洙の退団の影響は大きい。代わりに加入したマルキーニョスは崔とはプレースタイルが違うため、攻撃パターンや選手間のコンビネーションの構築にはやや時間がかかりそうだ。また、ユーティリティープレーヤーの中西はチームの要求に応えてあらゆるポジションでプレーしてきたが、これからはそれぞれのポジションのバックアップの選手がチームをしっかりと支えなければならない。
とはいえ、オシム監督は中心選手に頼るチーム作りは行なわないし、選手の意識も同様だ。たとえば得点に関して、坂本將貴や村井慎二は「FWに点を取らせるだけではなく、自分も積極的にゴールを狙っていく」と意気込みを語っている。選手たちは昨シーズンの優勝争いで1得点、そして勝ち点1の重みを改めて痛感し、誰もがいまでも優勝を逃した悔しさを口にする。ジェフは組織のサッカーを主軸にしているが、最終的に重要なのは個の力であり、その個の力を結集することでチーム力が高まることは選手たちも承知のうえだ。選手一人ひとりが高い意識で攻守のレベルアップに挑み、優勝争いの重圧に屈しない“勝者のメンタリティ”を身につけられれば、今度こそ悲願の初優勝は達成できる。
【新戦力・注目のキープレーヤー】
昨シーズン、ここぞというところの“1点”に泣いたジェフにとって期待がかかるのが、新戦力のマルキーニョスだ。ターゲットマンであり、点取り屋だった崔龍洙とは違い、マルキーニョスは持ち前のスピードを生かしたコンビネーションプレーでゴールを狙う。彼個人の得点は崔龍洙ほど望めないだろうが、「コンビネーションによるトータルサッカーを目指す」と語るオシム監督の指導によって攻撃のバリエーションが増えれば、チームの得点力アップにつながるはずだ。
その得点力アップという点で注目したいのが、短い出場時間でも得点できるスーパーサブの林丈統、開幕前の練習試合で7得点を挙げた巻誠一郎だ。林は昨年の2ndステージではシュート15本で6点を取ったように高い決定力を持ち、攻撃のアイデアが豊富で、試合の流れを変えるプレーができる。一方の巻は体を張るターゲットマンタイプで、崔龍洙のプレースタイルに慣れた選手たちにとってはプレーしやすいというメリットがある。スタメンの座を狙うふたりの奮起は見ものだ。
そして、プレー面でも精神面でもさらなる成長を切望するのが阿部勇樹だ。昨シーズンはキャプテンを務め、優勝争いを体験したことで逞しくなったが、調子がいいときと悪いときの差はまだ大きい。得点の起点となるパスを出すだけでなく、阿部本人が語るように「前に上がって得点を狙う」プレーが増えれば心強いし、守備ではさらに粘り強さを見せてほしい。以前よりも声を出してリーダーシップを発揮するようになったが、チームが苦境に陥ったときに鼓舞できるようになれば、名実ともにキャプテンといえる。
セットプレー時とカウンター攻撃を受けたときの失点が多いという弱点がある守備面のカギを握るのは、櫛野亮と斎藤大輔だろう。彼らの的確なコーチングは、選手の集中力と「誰かではなく、まず自分が守る」という強い責任感の持続を促してくれるはずだ。守備陣では成長著しい結城耕造にも注目したい。試合経験の豊富さでは斎藤や茶野隆行には遠く及ばないが、昨シーズンの天皇杯準々決勝ではマークした安貞桓にほとんど仕事をさせず、持ち味を発揮した。課題はボールコントロールの正確性や攻撃力だが、開幕前のちばぎんカップではフリーな状態のときには果敢にドリブル突破を仕掛け、直前の練習試合後にオシム監督から受けた指導を早速実践している。
昨シーズンは佐藤勇人が大きく飛躍したように、オシム監督の抜擢によって飛躍的に成長する選手が現れる可能性もある。新加入の選手はチーム戦術の会得に時間が必要かもしれないが、今シーズンはいったい誰がブレイクするのか楽しみだ。
【開幕時の予想布陣】
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昨シーズンのベストメンバーから、崔がマルキーニョスに、中西が茶野に代わる以外は大きな変更はないと思われる。開幕戦は阿部がアテネ五輪アジア最終予選メンバーに招集されて欠場するため、佐藤とダブルボランチを組むのは中島浩司が濃厚だ。中盤の守備を厚くする場合は坂本や茶野のボランチ起用もある。坂本、村井のバックアップは山岸智、楽山孝志となりそうだ。また、昨年はミリノビッチがFWをマンマークする場合や欠場したときは3バックの中央を中西が務めたが、今年は阿部がその役割を務めるだろう。
誰ひとり特別扱いはしないオシム監督は、試合当日までスターティングメンバーやポジションを熟考し、思い切った選手起用をすることも珍しくない。試合前日の練習を完全非公開にすることもあり、昨シーズンの4バックシステムやワンボランチなどの採用、若手選手の積極的な起用のように、試合が始まってから驚かされることがあるかもしれない。
2004.3.12 Reported by 赤沼圭子
以上
市原、熊本キャンプレポート
2004シーズン 開幕直前・クラブ別戦力分析レポート

















