0-6市原。1-1G大阪。0-3京都。0-1仙台。そして、0-1蔚山現代(Kリーグ)。広島がキャンプ中に残した、練習試合の戦績である。得点はわずか1、失点は12。この結果だけを見れば、サポーターが不安になるのは当然である。しかし、小野監督は、一度たりとも不安そうな表情を見せなかった。「練習試合で負けたとしても、リーグで勝てばいい。そういう想いはあります」。そう言う小野監督の言葉には、自信に満ちていた。テーマに沿って戦い、試合を追うごとにその内容を高めていった。そんな手ごたえが、彼の中にはあった。
小野監督の中にある「手ごたえ」が、ついに結果となって結びついたのが、3月7日のC大阪戦。自らのミスで失点し、スピードのある相手に裏を何度もとられながらも、広島は「ゴールを守る」守備ではなく、「ボールを奪いにいく」ディフェンスに徹した。その攻撃的な姿勢が高い位置でのボール奪取につながり、結果としてチアゴの2ゴールを生んだのだ。
「勝利という結果が出て、ほっとした」。森崎和幸は、試合後そう語った。内容に手ごたえを感じつつも、勝利がなかったことで不安を感じていたのだ。その想いは、服部公太にしても同じ。漠然とした「手ごたえ」という感触を「自信」という実感に変換するには、「勝利」というスパイスが必要だったのだ。ただ、C大阪戦には、これまでのチームになかったものが存在したことも、厳然たる事実。その「なかったもの」とはズバリ、本物のセンターフォワード=チアゴ、だ。192センチという突出した高さ。フットサル出身らしい繊細なテクニック。安定したキープ力と正確なポストプレイ。そして、スキルにあふれたシュート。決して運動量が多いタイプではないが、間違いのない技術と正確な判断で、チーム戦術の中にあっという間に溶け込んだ。「とにかく、クレバー。すべてのプレイのタイミングがいいし、楽にパスが出せる場所にいる。彼とは自分が考えていたようなサッカーができるから、自然とゴールへのイメージがわきますね」(森崎和幸)。「チアゴは僕のイメージする形でボールを出してくれる。彼がいると安心感が違う」(眞中靖夫)。「とにかく、彼のところでボールが落ち着く。タメができるからサイドから攻めやすい」(服部公太)。選手たちの絶賛の中、チアゴは「もっとよくなる」と平然と言い放った。実際、今週の練習でも素晴らしい動きを披露し、紅白戦でもチャンスを量産。前線に軸ができたことによって、広島の選手たちから迷いが消え、やるべきことが明快になった。このC大阪戦の勝利は、単に広島がキャンプでやってきたことに対する裏付けを与えただけではない。チアゴ、という大きな軸の存在が選手たちに安心感をもたらした。そしてそれは、J1に復帰したばかりで、まだ本当の自信に乏しいチームが、絶対に必要としていたものなのである。
一方の清水だが、こちらはまだ試行錯誤の段階のようだ。プレシーズンマッチの名古屋戦では0-1と敗れたものの、その内容に大きな手ごたえを感じたアントニーニョ監督。しかし開幕直前の新潟戦では、単調な攻撃に終始してしまい、内容に乏しい引き分けに終わってしまう。ゲームメイカーの澤登をあえて外し、新外国人選手のジャメーリ・アラウージョを軸に攻撃陣をつくった。だが、清水伝統のリズミカルなパス回しは影を潜め、アントニーニョ監督は「今日はゲームメイカーがいなかった」とこぼしていた、という。ただ、これは澤登一人の存在だけが問題なのではなく、やろうとしているサッカーのチームへの浸透度が課題となっているのであろう。
しかし一方で、清水には希望がある。たとえばそれは、左サイドに入った鈴木隼人の成長だ。昨年、Jデビューを果たした21歳の若者は、名古屋戦における市川大祐の負傷からチャンスをつかむと、活きのいいプレイでサイドからの攻撃を構築。アントニーニョ監督から高い評価をえるに至った。ほかにも、右サイドで起用されている太田圭輔。さらにボランチで可能性を感じさせている杉山浩太や、FWとしてトップチームでも結果を出しているルーキー・阿部文一朗など、若者の躍動がチームを突き上げている。移籍した三都主や安貞桓らの穴をうめられるかどうかはともかく、若者が可能性を見せてくれることは、チーム内の大きな活性化につながっているはずだ。
今回の「広島決戦」でぶつかる両チームは、どちらもチームとしてはまだでき上がっていない。清水のキャンプはフィジカル中心で、コンディションはでき上がったが戦術浸透に問題を抱える。広島にしても、一つ一つのコンセプトに時間をかけて、徹底してチームにたたき込んだが、「開幕戦に合わせてチームを完成させるつもりはない」と小野監督自らが語っているほど、まだまだやるべきことは多い。ただ、アントニーニョ監督には経験という財産があるし、小野監督には「3年で優勝争い」というコンセプトに基づいた戦略への自信がある。戦術的にも選手個々を見ても未完成なチームだが、できあがっていないチームしか持ちえない「勢い」や「可能性」がスパークする瞬間を、この試合からは感じられるのではないだろうか。C大阪戦後、小野監督は「攻撃的なサッカーをしたい」という言葉に続いて、こう語った。「1試合ごとに成長が感じられるシーズンにしたい」。
広島はもちろん、清水にも共通したテーマなのではないだろうか。
以上
Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
一覧へ【2004Jリーグ開幕プレビュー 広島 VS 清水】開幕が完成形、ではなく、1試合ずつ成長していくシーズンに。(04.03.13)
- 開幕招待
- 国立招待
- J.LEAGUE ALL-STAR DAZN CUP
- 熱き一枚を手に入れろ
- ベイブレードコラボ
- 明治安田のJ活
- 明治安田Jリーグ百年構想リーグ
- 明治安田Jリーグ百年構想リーグ フライデーナイトJリーグ
- 2025 移籍情報
- AFCチャンピオンズリーグエリート2024/25
- AFCチャンピオンズリーグ2 2024/25
- はじめてのJリーグ
- Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田
- J.LEAGUE FANTASY CARD
- NEXT GENERATION MATCH 2026
- シャレン Jリーグ社会連携
- Jリーグ気候アクション
- Jリーグ公式試合での写真・動画のSNS投稿ガイドライン
- J.LEAGUE CORPORATE SITE
















