8月11日（水）J2 27節 福岡 vs 湘南（19:00KICK OFF/博多球）
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　真夏のサバイバルレース第3戦は、中2日という厳しい日程で行われる。福岡にとって幸いなのは移動がないこと。J2の多くのチームが関東に集中する中で、1週間おきの移動は予想以上に選手たちの身体に疲労を貯め込むものだ。そういう意味では、地方都市にホームタウンを置くチームは、対戦相手だけではなく、こうしたハンディとも戦うことを強いられている。しかし、弱音を吐いてはいられない。こうした全てのものを跳ね返せるだけの力がなければ、所詮、J1昇格のゴールにはたどり着けない。そのことは福岡の選手たちも承知の上。強い気持ちを持って2つの敵と戦ってくれることだろう。

　さて、第27節、福岡は博多の森で湘南を迎え撃つ。今シーズンの対戦成績は福岡の2勝。しかも、ここまで4勝8分14敗と不振にあえぐ湘南は、数字の上からだけなら福岡にとって難しい相手ではないように見える。しかし、油断は禁物だ。「どんな相手にだって勝てるし、どんな相手にだって負ける」。これは松田監督（福岡）が就任以来、良く口にしてきた言葉だが、僅かな油断は相手に付け入る隙を与え、立場はあっという間に逆転する。相手に対する敬意と自分たちに対する自信。その両方を併せ持って戦ってこそ勝利を手にすることができる。

　一時の不振から脱しつつある福岡が目指すのは、もちろん3連勝だ。ポイントは無失点に抑えることと、自信を持ってチャレンジすること。過去2戦がそうであったように、ディシプリンを90分間持ち続け、そして、必ずやってくるチャンスを見逃さないように嗅覚を鋭くして戦うというサッカーを展開することになる。太田の出場停止や、怪我で林の出場が危ぶまれるなどという事情もあるが、それはバックアップメンバーが埋めてくれるはず。「いまサテライトにいる選手の十分な準備というものが、チームを助けてくれると思っている」と、松田監督は選手に全幅の信頼を寄せている。

　一方の湘南は、正直に言って厳しい戦いを強いられることになるだろう。怪我人を多く抱えるチームは、シーズン前に思い描いていた戦いができないばかりか、シーズン中にチームを作り直さなければならない状況に追い込まれた。J2のように、休む間もなく試合が続くリーグでは課題を修正する時間を取ることさえ難しく、ましてや、チームを一から作り直すなど並大抵のことではない。しかし、現実を嘆いていては何も始まらない。まずはどこから手をつけるか、それを明確にして試合に臨むことが求められている。

　当たり前のことだが、まずは基本的な動作を徹底的に行うことが必要だろう。3ラインをコンパクトにすること。中盤で相手にプレッシャーをかけること。最終ラインはボールと人に対して、しっかりと身体を寄せること。これを忠実に実行することでチームは随分と変るものだ。そして、その約束事を先発の11人だけではなく、ベンチ入りのメンバーも含めて全員に徹底させることも必要だろう。試合の入り方に難があると言われているが、意識をひとつにすることで解決の道は見つけられるはずだ。

　裏に飛び出していく鈴木良和。ゲームメイクに非凡なものを見せる佐野裕哉。スピードある縦への突破を魅力とする高田保則と坂本紘司。彼らのほかにも、湘南には将来が期待される若い選手たちがいる。決して悲観することばかりではないはずだ。チームがどこへ向かおうとしているのか。いまは目標のどの程度の段階にいるのか。そのための階段を一段登るためには何をしなければならないのか。それが明確になれば、もっと戦えるはずだ。

　しかし、サッカーは「何が起こるかわからないスポーツ」。これまでの状況を並べ立てたところで明日は何が起こるかわからない。それを肝に銘じ、自分たちの積み上げてきたものを信じて真摯に戦ったチームにサッカーの神様が微笑むことになる。福岡が3連勝を果たして復調ぶりが本物であることを証明するのか。はたまた、湘南が浮上のきっかけとなる勝利を手にするのか。博多の森に駆けつけて彼らの戦いぶりを目にして欲しい。

以上

2004.08.09 Reported by 中倉一志