8月14日（土）J2 第28節 仙台 vs 水戸（19:00KICK OFF/仙台）
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　まずホームチーム、仙台についてから。
　第3クール突入後は2勝3分け。24節には当時2位の甲府相手に3−1の快勝を収めるなど、流れを掴みかけていたかに見えていた。だが、ここにきて2戦連続の引き分け。確かに、2点のビハインドをロスタイムで追いついてみせ、ホームのサポーターを熱狂させた川崎Ｆ戦はまだポジティブに考えることもできるが、前節のアウェー山形戦では逆に前半2点のリードを後半にフイにしてしまった上の、悔やまれる引き分け。川崎Ｆ戦で起死回生の2ゴールを決めた佐藤はその試合後「引き分けという結果は、言い換えれば勝ち点2を失ったのと同じ。ただこういう劇的なゲームを次に繋げて、これからの落とせないゲームを戦っていきたい」とコメントしていたが、それを踏まえれば山形戦は完全に「落としたゲーム」であった。
　選手のコメントを借りれば「2試合連続で勝ち点3を逃した試合」を経て迎えた今節は、いよいよ是が非でも勝ち星3を得なくてはいけないゲームとなっている。現在でこそ順位表は空前のだんご状態だが、サバイバルレースを勝ち上がっていく上で、仙台は引き分けでは許されない時期を迎えつつある。

　一方の水戸だが、こちらは一言で言うと、手堅い守備を前提とした我慢強い戦い方のチーム。守備の局面では中盤以下がしっかりと下がり、自陣ゴール前に2本のDFラインを形成するかのような戦い方は、対戦する相手の順位に関係なく、ゲームを膠着へと導いていく。20節からここまでの8節、水戸の成績は7分け1敗。その1敗こそ川崎Ｆ相手に5失点を食らった大敗であったが、以外はすべて1−1、もしくは0−0という、ロースコアでのドロー。その中には仙台、甲府、京都、そして前節の大宮という「混戦グループ」の名前も見受けられる。勝ち点を1つでも無駄にしたくないこうした状況のチームにとって、水戸は脅威を抱かせるに十分なチームなのである。まして今節は水戸にとってアウェー。前回、水戸はここ仙台スタジアムで4−1の大敗を喫したこともあり（5/9　11節）、普段よりも徹底した守備意識を持って、仙台に乗り込んでくるだろう。

　この試合のキーマンを挙げるならば、仙台は大柴克友。鳥栖戦の負傷により2試合を棒に振ったが、特に山形戦、相手のサイドバックが攻撃参加を増し、FWが守備を強いられたことでチーム全体の攻撃力を削られ、試合の流れを明け渡してしまった事実は、前線から当たり前のように守備をこなしながら、攻撃でも何食わぬ顔で効果的な動きを見せる彼の存在がいかに大きかったかを如実に表した。前線の選手にも運動量を求めるベルデニック監督（山形戦でも、それなりに効いていたに思われたファビオ　ヌネスを、運動量の低下を理由に後半、萬代と交代させている）の理想を、彼のプレーは体現している。また水戸との相性も悪くない。前回対決（6/26　20節）において仙台はゴールこそなかったものの、前述の「2本のDFライン」間を漂うような大柴のつかみ所のない動きには、水戸守備陣も手を焼いていた。
　一方の水戸は、攻撃陣をほぼ一人で牽引すると表現して良い活躍を見せている小林康剛になるだろうか。今季通算8ゴールだが、総得点が札幌と並んでJ2ワーストの21という水戸の中でこれだけのゴールを決めることがどれだけ難しいか。少なくとも水戸のサッカーを間近で見続けているサポーターは、よく理解しているに違いない。それにここ5試合だけで4ゴール。そのうち3試合を彼のゴールによって引き分けに持ち込み勝ち点1をたぐり寄せていることを思うと、守備的な戦いを強いられている水戸にとって、小林の存在はもはや「生命線」と言っても過言ではない。
　プレースタイルは生粋のストライカー。小林は2000年の1年間、鹿島からのレンタルで仙台に在籍していたのだが、当時は上背に似合わぬ柔らかいトラップからのシュートでゴールを量産し、仙台サポーターの心を掴んでいた。分厚い攻撃は難しい水戸ゆえに、活きたボールが入る回数はおそらく限られるだろうが、その数少ないチャンスをゴールに結びつける力が、彼にはある。

　問答無用に勝ち点3が必要な仙台の攻撃に、引き気味に敷いた水戸の分厚い守備ブロックがどれだけ耐えられるか。詰め掛けるサポーターも含め、仙台スタジアムをじりじりと焦がすような真夏の夜の我慢比べが、その幕を明ける。

以上

2004.08.12 Reported by 佐々木　聡