11月20日(土) 2004 J1リーグ戦 2ndステージ 第13節
広島 3 - 2 磐田 (14:01/広島ビ/18,172人)
得点者:'16 チアゴ(広島)、'47 森崎浩司(広島)、'68 福西崇史(磐田)、'75 成岡翔(磐田)、'83 前田俊介(広島)
----------
吉田恵の蹴ったボールは、快晴の広島の空に、舞い上がった。フワリと浮かび、ゆっくりと落ちていく。そのボールに、盛田剛平が飛びついた。ジャンプする時、盛田は間違いなく、横にいた紫の少年の位置を見ていた。そして、渾身のバネをつかって飛び上がり、高く舞い上がった空中で一瞬静止するようにして、狙い澄まして白いボールに自分の頭を強くぶつけた。その瞬間、盛田は頭を強く右に振り、ボールを前方へと流しこんだ。
ヘディングの瞬間も、盛田はその少年の位置を確認した。そして、勝利への想いを託するように、ヘッドでパスを出した。この盛田のプレイが、クライマックスへのプロローグとなった。紫のユニフォームを身にまとい、重心を落としてダッシュの体勢に入った少年は、盛田の想いをしっかりと受け止めた。そして、自分の前方に落ちたボールに対し、一気のスピードで追いついた。
横についてきたのは磐田:田中誠。熟練の極みに存在する日本代表だ。ドリブルしては、止められる。ゴールを奪う、ということに対して、天性のひらめきを持つこの少年は、ドリブルから意識を瞬間的に変えた。高くワンバウンドしたボールは、ゆっくりと落ちてくる。少年は左足を振りかぶった。田中は足を出す。ボレーシュート!しかし、振り切らずにしっかりと抑えて、枠に向けてコントロールした。そのボールは、田中の足先に、ほんの少し触れた。
しかし、もしかしたらこの少年は、そのことすら、無意識のうちに計算に入れていたのかもしれない。微妙にコースの変わったボールに、磐田のゴールマウスを守っていた岩丸は、触ることができなかった。81分に投入されてからわずか2分後。自身2回目のボールタッチで、紫の少年・前田俊介はゴールを決めた。彼にとって9試合目のJリーグ初ゴールは、同時に広島に9月26日の東京V戦以来約2ヶ月ぶりの勝利をもたらし、同時に広島のJ1残留を決定づけたのである。
しかし、その勝利は、広島にとって決して手放しで喜べるものではなかった。森崎浩司の柔らかいトラップとチアゴの闘志が際立った先制点。そのチアゴをおとりにつかい、服部がもっとも遠いサイドに走った森崎浩司を見て出したクロスと、その浮き球を正確に逆サイドのネットに叩き込んだ森崎浩司の技術の高さ。広島の得点シーンは、いずれも美しいものだった。守備面でも小村の非常にアグレッシブなプレイと駒野・吉田のクレバーで積極的なカバーリングに代表されるように、実に集中したディフェンスが光った。磐田にボールを支配されても、守備陣は決して腰を引くことはなく、戦って跳ね返していた。少なくとも、68分までは。
何でもないクロスを下田がパンチングで跳ね返す。フワリとボールが浮いた。時間にして2秒くらいあったかもしれない。ペナルティエリア内まであがっていた福西はすぐに落下点に入る。下田も、すぐにポジションをとる。だが、もっとも落下点に近い場所にいたリカルドが見上げたままでボールを見失ってしまい、福西がシュート体勢に入っているのに身体を寄せることすら、できない。福西のボレーシュートは確かにすごみがあった。しかし、ボールが空中で止まっているかのような長い滞空時間があったにもかかわらず、ボールウオッチャーになってシューターに対して身体を寄せることができなかった緩慢なプレイが、この失点を生んだ。
この失点によって動揺した広島の心の隙をつき、磐田が圧力をかけ、75分には中盤でのパスミスを拾った前田から太田につなぎ、クロスに成岡が飛び込む。しかし、ここでもマークがルーズとなっており、成岡はフリーでヘッドを叩き込むことができていた。そこまでのタイトな雰囲気からは、信じられない崩れ方。しかしそれが、ここ最近の広島の姿だった。
もし、この試合を引き分けていたら、あるいは逆転されていたとしたら、チームはサポーターからの信頼を失墜させていただろう。優位にたっていながら、自分たちの方からその優位性を投げ出して勝点を失ってしまう試合を、今季何度見たことか。実際、失点した時は観客席から「またかよ」という吐き捨てるような声が、いくつか飛んでいた。
しかし、そこで選手たちを勇気づけたのは、この直後からさらにボリュームが大きくなったサポーターの「コール」だった。選手に刃を突き刺すのではなく、下を向きそうになった気持ちを上に向かせ、前に足を運ばせるためのコールを必死に繰り出していたサポーター。彼らの想いが、前田の劇的なゴールにつながった、と言っていい。小野監督も語っていたように、この勝ち点3を生んだのは、サポーターだった。
広島は、来季もJ1で戦うことが決定した。内容は苦いものではあったが、それでも何とか勝利をものにすることができた。ここまで何度も見かけた、自滅に近い失点は、今日もなくすことができなかったが、それでも勝てた、しかも磐田から2000年ファーストステージ以来の勝利を勝ち得たこことは、何ものにも替えがたい。
前田俊介のゴールによって広島が得たものは、今季のJ1残留だけではない。勝てない、という呪縛から解き放ち、選手とサポーターがプライドと自信を取り戻したこと。それが、もっとも大きく重い価値なのだろう。そういう何重の意味を込めて、書いておく。広島は、18歳の少年に、救われた。
以上
2004.11.20 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
一覧へ【J1-2nd:第13節 広島 vs 磐田 レポート】勝てなかった広島が磐田に勝利。救世主は18歳の前田俊介(04.11.21)
- 開幕招待
- 国立招待
- J.LEAGUE ALL-STAR DAZN CUP
- 熱き一枚を手に入れろ
- ベイブレードコラボ
- 明治安田のJ活
- 明治安田Jリーグ百年構想リーグ
- 明治安田Jリーグ百年構想リーグ フライデーナイトJリーグ
- 2025 移籍情報
- AFCチャンピオンズリーグエリート2024/25
- AFCチャンピオンズリーグ2 2024/25
- はじめてのJリーグ
- Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田
- J.LEAGUE FANTASY CARD
- NEXT GENERATION MATCH 2026
- シャレン Jリーグ社会連携
- Jリーグ気候アクション
- Jリーグ公式試合での写真・動画のSNS投稿ガイドライン
- J.LEAGUE CORPORATE SITE
















