昨年の川崎FのJ1昇格は、異例ずくめのものとなった。
序盤から圧倒的な強さを見せつけた川崎Fは、史上最速でJ1昇格の道を駆け抜け、最終的に勝ち点、総得点ともに100の大台を突破してみせた。
その原動力となったのは、ジュニーニョ、我那覇和樹といった得点力を持つ選手と、彼らに良質のラストボールを供給できるマルクス、アウグスト、長橋康弘といった選手たちの活躍。そして守備から攻撃に局面が変わったときに、中村憲剛を起点としたスピード感あふれる攻撃があったからだ。
その一方で守備に目を転じると、箕輪義信、寺田周平、伊藤宏樹の3枚による鉄壁のディフェンスがあった。シーズン序盤こそ不安定さが見られたが、就任初年度の関塚隆監督は勝ちを拾い続けた。横浜FCの22引き分けを筆頭に全体的に引き分けの増えた昨年のJ2にあって、最終的に3つの引き分けしかなかったということが川崎Fの昨シーズンを象徴していた。つまり勝負強さと守備力と決定力のバランスである。
その川崎Fの補強に、派手さはなかった。J1からJ2への降格チームがなかったということが一因としてあげられるが、川崎Fの補強は将来を見越したものだったといえる。一見地味な補強になったが、強化担当の福家三男強化本部長は十分な手応えを感じている様子。つまりそれは裏を返せば、昨年のレギュラーメンバーに対する信頼感の表れでもある。もちろん昨年のJ2での戦いぶりを思い出せば、手応えを感じるのも無理はなかった。
川崎Fにとって今回のJ1昇格はクラブとしては2度目の経験となる。1度目のJ1昇格となった99年もダントツでJ2を勝ち進み、意気揚々と2000年シーズンを迎えた。ところがシーズンが始まってみると予想以上にJ1の壁は高く、勝ち星を増やせないまま下位に低迷。結果的に1年でJ2に降格してしまった。その時の川崎Fは大量の補強を敢行し、そして自滅していた。その苦い記憶が今年の川崎Fの補強のベースとなっているのは間違いない。
キャンプ中の練習試合を見る限り、昨年までのメンバーから入れ替えはほとんどなさそうである。ただしフォーメーションだけは変化が出てくるようだ。例えば、2月17日に広島との間で行われた練習試合では川崎Fは4バックを試している。関塚監督は言う。
「3バックというのが2トップに対抗するために出てきたことを考えると、3トップが増えて来つつある現状では4枚で守るのが合理的。世界的にウィングプレーヤーが見直されてきていますし、準備してきてますよ」
練習試合で別次元の仕上がりと好調さを見せつけてきた広島に対して、戦い慣れない4バックをチャレンジ。そつなくこなして見せたところに、このチームの完成度の高さを感じた。
J1復帰の今季はチャレンジの年となるが、去年のチームの完成度を見る限り、ある程度戦えるのではないかと考える。武田信平社長が口にした「5位以内」はかなりの努力が必要だと思うが、この順位に近いところには必ず来るだろう。またプロスポーツ不毛の地とも言われた川崎に新風をもたらすことができれば、今季の経営目標として掲げている1万5千人の平均観客動員を達成できるはずだ。その戦いを注目して見ていきたいと思う。
【新戦力・注目のキープレーヤー】
川崎Fが当初発表していた新加入選手は7名で、そのうちJでのプレー経験を持つ選手が4名だった。浦和から獲得のDF小林宏之。東京V出身のFW飯尾一慶。大分との競争の末に獲得したMF鄭容臺。そして潜在能力の高さは折り紙付きのMF森勇介である。それぞれのポジションごとにまんべんなく選手を獲得しており、バランスを考えた補強だということが分かる。また彼らは即戦力クラスの力を持っており、長いシーズンの中で、その力が必要とされる場面が出てくるのは間違いない。そういう意味で、ポイントを突いた補強だと言える。
一方新卒で獲得した選手は3名。ユースから3人目の昇格となるFW都倉賢。強烈なスローインを持つDF大久保将人。そして早稲田大から獲得のGK植草裕樹である。
推定飛距離50mとも言われるスローインを持つ大久保に注目が集まっているが、ユースからの昇格となる都倉もおもしろい。負けん気の強さがにじみ出る強引ともいえるプレースタイルは、相手チームにとっては脅威となりそう。自信に満ちた言動を含めて我那覇、黒津勝といった先輩たちとの先発争いが楽しみだ。
当初予定されていたこれらの新加入選手に加え、今年になってあらたに1人の選手の加入がアナウンスされている。それがブラジル人のFWフッキだ。宮崎での1次キャンプからチームに合流したフッキは、戦術面での強化を意図した2次キャンプではAチームの一員として練習試合にも出ており、その可能性を見せていた。気になるポジションは、前線の3枚の中の1人。現状ではジュニーニョ、マルクスの控えという位置づけになりそうだが、シーズンを戦う中で、ピッチに立つ日が来るのはそう遠いことではなさそうだ。ちなみにフッキの英文表記はHULKとなるのだが、これは映画として公開されていたHULK(ハルク)から来ているとのこと。
川崎Fにとっての4番目の外国人選手と言うことで、疑問を持つ人もいるかと思うが、彼はまだ18歳で、C契約での入団となっている。ちなみに韓国籍を持つ鄭は「JFA基本規程第69条に該当する選手」、つまり「外国人扱いしない選手の登録」が適用されている。
【開幕時の布陣予想】
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関塚監督が川崎Fに来た昨季から口にしていた4バックの構想が、今季は実現しそうだ。ただし最終ラインを4枚に固定するという意味ではなく、相手に合わせて変えていこうというスタンスのようだ。「自分たちのやり方を貫けるほどの力はまだない」(関塚監督)ということらしい。
GKは吉原慎也、下川誠吾が先発の座を争っており、予断を許さない状態。ただし昨年末の天皇杯での活躍が印象深かった下川が一歩リードしているようにも思える。
DFラインは伊藤、寺田、箕輪という見慣れたメンバーが並ぶ。ちなみに広島戦で試した4枚の並びは、左からアウグスト、寺田、箕輪、長橋という形だった。
ボランチのファーストチョイスは中村で決まりか。ここに久野智昭を筆頭として鄭、山根巌がポジションを窺っている。中村の対抗馬としては、渡辺匠の名前を上げておきたい。
左右両ウィングバックはアウグスト、長橋のレギュラー陣に対し木村誠、飛弾暁、そして西山貴永といった選手たちが控えている。
前線の3枚は我那覇、マルクス、ジュニーニョで決まりだが、ここにフッキ、黒津、飯尾、都倉といった選手たちが絡んでくる。
Reported by 江藤高志

















