5月4日（水） 2005 J2リーグ戦 第10節
水戸 0 - 1 鳥栖　（13:04／笠松／3,512人）
得点者：'49 新居辰基（鳥栖）
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ゴールデンウィークも半ばすぎ。好天に恵まれた笠松だったが、風はいつものように強く吹いていた。そしてその風は、サポーターと選手、そしてクラブがまさに一枚岩となって戦った鳥栖に、勝ち点3を運ぶことになる。

前節、山形を完封し意気揚々と笠松に帰ってきた水戸には、デルリスの復帰や小椋の出場停止解除など、人的なプラス要因が複数見られた。小椋はリザーブにとどまったものの、スタメンでデルリスの名がコールされると割れんばかりの歓声がスタンドには響き渡り、「勝てるチームの雰囲気」を感じさせるものだった。「（デルリスは）2試合空いて多少キレがなかった」と前田監督の期待には不足していたところもあったようだが、突破をするときの瞬間的な速さや、相手ボール時の守備面での貢献など、「さすがデルリスだな」というシーンは多々見られた。

デルリスのプレー以外でも、ゲームを支配していたのは水戸であったし、何度も鳥栖ディフェンスを崩すシーンを演出した。ただ毎度のことながら、打てるところで打たない思い切りの悪さ、ラストパスの精度の悪さ、そして何よりも最後の最後でデルリスを封じられたという理由で、ゴールネットを揺らすことはできなかった。守備面でもよく集中できていたと思うし、バランスのとり方もうまく、相手に決定的に崩されることはゲームを通じて1度もなかった。「失点するところまではほぼ完璧なサッカーだったのでは・・・（前田監督）」というぐらい、水戸のあるべきサッカーを展開していた。そう、あの失点があるまでは・・・。

得点が動いたのは後半開始早々の4分。中盤でボールを奪った鳥栖は、3本目のパスを水戸のディフェンスラインとゴールキーパーの前にロビング気味にあげる。強い向かい風が功を奏し、水戸・森がクリアするのかGK・本間が処理するのか微妙なところにボールは弾む。両者が譲り合う間に鳥栖・新居が入り込み、執念で水戸ゴールの中にボールを運んだ。これはもちろん、『水戸の今日唯一の決定的なミスによる鳥栖のラッキーパンチ』というわけではなく、松本監督が水戸ディフェンス陣の欠点（ワンボランチでできる水戸のスペースのこと）を見抜き攻めたことが布石になっている。もちろん、水戸が前掛かりになっていたところでボールを奪取できたということもあるが、水戸のディフェンスラインをいつもより前目にせざるを得ないような松本監督の戦略が、ジャブのように効いていたのではないかと感じた。

鳥栖のプレーで特に目に付いたことは、2ndボールに対しての対応のスピードと、マイボールにしてからの仕掛けの速さだ。「サッカーは予測のスポーツ」という文言を、何かの本で見たことがあるが、今日の鳥栖のプレーはまさにこの言葉を実践しているよう。ルーズボールを拾うと同時に、サイドの選手が飛び出してきて、前線のプレーヤーが水戸のボランチ・栗田の両脇にできるスペースに顔を出す。きっとこれは、水戸のちょっと変則的なシステムに対し、松本監督が授けた約束事だったのだろうが、これをやりきるには1秒たりとも途切れない高度な集中力が必要不可欠だったように思う。特に唯一の得点者・新居は得点することだけでなく、ディフェンスや相手をかく乱するデコイ（おとり）にも精力的に動きまわり、交代時の遅延行為でイエローをもらうことさえなければ、そのパフォーマンスは誰もが認めるものだった。

試合後、鳥栖・松本監督は「鳥栖というクラブを再生させようという、サポーターの熱い声援、熱い支援が選手たちの支えになり、今日のようなゲームをすることができた。選手たちもビラ配りをやったり、クラブ、サポーター、選手一丸となってこれからも戦う」と繰り返し話した。ゴールを守りきったシュナイダーも「本当に価値がある勝利。こういうサッカーができれば上位が狙える」と純粋な喜びと確かな自信を感じていたよう。一方、水戸では、前田監督のコメントも歯切れが悪く、「情けないです。サポーターには勝とうという気持ちが伝わらない試合だったのではないかと思います（大和田選手）」と自ら叱咤するような選手の声もあった。

中2日、鳥栖は、熱い思いのサポーターにホーム初勝利を贈るべく、次節、湘南を迎える。そして水戸は笠松に仙台を迎える。自らに厳しいサッカーは、今度こそ水戸のサポーターに勝ちたい思いをしっかりと伝え、ともに勝利の喜びを分かち合える源になるだろう。

以上

2005.05.04 Reported by 堀高介