5月28日（土） 2005 ヤマザキナビスコカップ 第4節
大分 0 - 2 Ｆ東京　（15:00／大分ス／16,188人）
得点者：'46 近藤祐介（Ｆ東京）、'55 栗澤僚一（Ｆ東京）
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9試合連続、勝ち星に恵まれなかったF東京にようやく、新しい風が吹いた。アウェー大分で2−0での勝利。「やっと勝った」と思わず各選手が口にしてしまうほどの、久々の白星だ。
確かに最近のF東京は昨年のナビスコカップの王者とは思えないほどの成績だった。ナビスコカップ第3節までの成績は2敗1分け勝ち点1で、Cグループでは最下位。リーグ戦でも第12節を終了してワースト3の16位と、開幕当初の勢いはどこへやらといった感じだった。「久しぶりの勝利。勝った時の喜び方を忘れていたほど。これから新しいF東京がスタートする」と試合後の記者会見で原博実監督はうれしそうに語った。

「ナビスコカップは若手に経験を積ませたい」とチームの底上げを図ろうとした大分の皇甫官監督は若手中心の布陣を組み、試合に臨んだ。ルーキーで公式戦は初スタメンのMF川田和宏を始め、3年目のDF倉本崇史、期待されつつも、なかなか出場機会に恵まれなかったMF松橋章太、FW木島良輔、途中交代では公式戦初出場のMF梅崎司を起用。「7月から戦うためにもメンバーを固定しなければならない。今は1つのポジションに2人の選手がいてそれぞれ競い合ってる状態だ（皇甫監督）」と若い選手の成長に期待を寄せた。
一方、F東京はリーグ戦とほぼ変わらないメンバー。そもそも日本代表で不在中の加地を始め、ケガ人続出で本来の布陣が組めない状況の中、戦い続けてきたのだ。

試合前は「攻めのF東京」「守りの大分」でいくと思われたが、前半立ち上がりから大分は若いWボランチ小森田友明、川田を中心に豊富な運動量と細かいパス回しで積極的な攻撃を展開した。むしろF東京のほうが引き気味だったが、どちらとも決定的なチャンスがないまま、勝負は後半に持ち越された。

後半開始すぐ、流れを掴んだのはF東京だった。
右サイドからのFW戸田光洋のセンタリングに、絶妙なタイミングでFW近藤祐介がヘッドで合わせゴールへ叩き込んだ。「戸田さんのクロスがいいコースに入ったので、ここだと思い狙った。試合前から戸田さんと前半だけでも10本はシュート打とうと決めていた」と試合後、うれしそうにインタビューに答えていた近藤祐だが、確かに戸田との2トップはこの日、光っていた。ボールを奪った後の動き出しも速く、積極的に相手DFの裏へ飛び込むシーンも多く見られた。「変に相手にボールを取られてカウンターはきついので、シュートをどんどん打とうと決めていた。（近藤祐）」シュートも試合前の課題に近く、チームとして前半7本、後半9本と、大分の4倍も放った。絶対に勝ちたいという気持ちは、F東京からのほうが伝わってきた試合だった。

その気持ちが2点目を呼んだのだろう。後半10分、大分のDFのクリアボールを拾ったMF栗澤僚一が落ち着いて左足でシュート。貴重な追加点を挙げた。その瞬間、そんなに多くないアウェーのF東京のサポーターからビッグアイに響き渡るような歓声が沸き起こった。本当に欲しかった追加点だったのだろう。
今までのF東京であれば得点しても、その後、すぐ失点してしまうということが多々あったので、先制しても安心どころか、不安感さえ募るほどだった。それが、自信喪失にもつながり不振の原因にもなっていた。「今までだったら入らなかったシュートが入った」と後で栗澤が振り返ったが、この追加点が入ったことにより、「新しいF東京がスタートした（原監督）」ような気がした。

F東京はこの1勝で、同じ勝ち点4ながらナビスコカップ予選Cグループの3位に。敗れた大分は最下位となったが、まだ予選リーグは2試合残っている。決勝トーナメント進出の可能性はゼロではない。「長く続いた悪夢を吹き飛ばした（原監督）」ように、勝ちたいという執念がいい流れを運んでくる。「新しいF東京」と「若さの大分」に次節も期待したい。


以上

2005.05.29 Reported by 森田みき