9月4日(日) 2005 J2リーグ戦 第30節
甲府 0 - 1 札幌 (18:31/小瀬/7,753人)
得点者:'5 三原廣樹(札幌)
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甲府は敗北以上の衝撃を受けた。
開始5分にGK阿部が一旦は弾いて防いだボールを、岡田から三原に通されて失点した。DFラインが落ち着かないままの失点は、勝つ気満々の小瀬陸上競技場のスタンドにもショックを与えた。暫定ながら3位(甲府)と4位(札幌)の直接対決だけに、この日行われたJ2リーグの中で注目度が高いゲーム。甲府サポーターは4位札幌を突き放すゲームを期待していたが、5分で失点。しかし、たっぷり残っている時間を希望に変え始めた3分後に、更にショッキングなシーンがピッチで起こった。札幌の選手と交錯したバレー。遠目には激しいチャージに見えなかったが、ピッチに倒れたバレーは身体を左右に捻りながら腕を交互に挙げて激しく痛みを訴える。異常に感じるほどの痛がり様だった。すぐにプレーが止まって甲府のトレーナーと担架が駆け寄る。しかし、暫くするとバレーはさっきまでの痛がり様が演技だったかのように立ち上がる。担架にも乗らなかった。不可解な気持ちのまま、とにかくバレーの無事を喜んだ。だが、プレーが始まると再びバレーが右膝を抱え込むように倒れ込んだ。「自分の経験から、膝のケガでは一度は立てるようになるが、プレーするとまた立てなくなる。ヤバイと思った」と大木監督が感じたように、バレーは膝を明らかに痛めていた。医師による詳しい診断をその場で受けていないので、損傷の程度は判らないが膝の靱帯を損傷していれば長期離脱の可能性がある。最悪の場合だが、甲府は16ゴールで得点ランキング1位のFWを失うことを覚悟する必要が出てきた。
バレーの負傷退場後、須藤をピッチに入れた甲府。システムは4−3−3の3トップのままで、バレーと同じポジションに入った須藤。「バレーとはプレースタイルが違うので、自分の持ち味を出すことを考えていた」という須藤だが、持ち味を行かす場面はなかなか生まれない。ピッチ内では、「バレーがいなくなっても関係は無い」という感覚を持っていた選手は少なくなかったようだが、スタンドから見る限り攻撃の形が作れなくなった。逆に、3人の選手が逆三角形に配置された中盤は、両サイドのスペースをウィングハーフの岡田と和波に与えてしまう。4枚のDFがツートップのデルリスと相川に押されて下がるので、3人の中盤で5枚の中盤をマークできるはずは無い。甲府が次の失点をする可能性が非常に高く感じた。最後のピンチとなった前半のロスタイムには、カウンターから左サイドを和波に切り込まれる。甲府は、杉山が必死に戻ってカバーに入るが、追いついた瞬間に切り返されて決定的なシュートを打たれてしまう。甲府にとって幸運だったのは、切り返したことで和波が右足でシュートを打たざるを得なかったことだ。(左足とは違い)威力と正確性の無いシュートはゴールの枠を外れた。ただ、甲府は地力があることだけは証明した。それは、中央ではボールが収まらないと判断すると、徐々にサイドを使い始めたことだ。これは甲府が若手選手を中心にしっかりと選手を伸ばしてきた成果である。
後半はディフェンスラインにアライールを投入してきた甲府。池端に替わって入ったアライールが甲府のディフェンスラインに安定をもたらせる。4−3−3のシステムは同じままだが、長谷川、石原、須藤の3トップはサイドを使ってフィニッシュまで行くことができるようになった。ただ、前半に三原に替えて田畑を投入して3ボランチにシステムを変更した札幌も一定以上機能していたし、リードしているために守備では大きなリスクは冒さない。甲府はスピードについて来られない西澤のサイドを何度か突破するものの、ゴール前の厚い壁には跳ね返される。また、お互いに中盤のやってはいけない場所でパスミスを繰り返す。本来なら得点に繋がる可能性は高いミスなのだが、お互いにミスをすることで助け合い、得点は入らずゲームのクオリティが下がっただけだった。
甲府は73分に倉貫に替えて鈴木(隼人)を投入する。シーズン開幕当初は先発だったが、第8節以降はベンチにも入ることができなかった選手。大木監督の求めるプレーができなかったからであるが、技術もパスセンスも高い選手。鈴木はアライール同様に機能した。個人技でサイドを突破するものの、パスの流れを作ることができない甲府の攻撃に流れと意外性のあるシュートやパスという味付けが加わった。アライールと鈴木の投入で同点の期待が高まるが、柳下監督は効果的な交代カードを切ってくる。81分には足が止まったデルリスを下げて石井を投入。再び前線からのプレスが機能し始め、甲府の押し上げにくさびを差し込む。追加点は取れなかったもの、結局はこの3枚目の交代カードが効いて札幌は1−0で逃げ切ることができた。ただ、札幌は前半、デルリスと相川のツートップで決定的なカウンターのシーンを何度か作ったが、後半の内容には安定感のなさを露呈した。3ボランチは一定の成功を見せたが、勝ち続けることができる内容ではなかった。札幌、甲府、山形の3位争いは、お互いの安定感の無さが盛り上げることになりそうだ。
J1昇格の3枚目のチャンス切符を狙う甲府だが、敗戦以上にバレーを(ケガで)失ったかもしれないショックが大きい。次節(徳島戦)は藤田が戻ってくるが、バレー不在の可能性は低くない。システム変更を含めて大木監督は判断を求められる。先週の水曜日に足首を痛めて、練習を休んでいた小倉の起用も考えられる。アライール、鈴木の出来が良かったことは選手層の厚さの証でもあり、好材料。大木監督は鈴木のプレーには大満足ではないようだが、使えることは感じたのではないだろうか。大木監督は、動かない王様・パサーを必要としていないので、敵陣の深いところまでドリブルで切り込んだり、献身的に守備をしたりというプレーを加えることができれば、鈴木が続けてチャンスをもらえるようになるはずだ。バレーの負傷を、チーム内競争の活性化に繋げていきたい甲府。昨シーズンは、この時期からほとんど勝ち点を伸ばすことができずに、失速して昇格レースからフェードアウトした。バレー・ショックをどう乗り越えるのか。甲府の底力が試される。
以上
2005.09.05 Reported by 松尾 潤
J’s GOALニュース
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