11月12日（土）J1 第30節 広島 vs 大分（16:00KICK OFF/広島ビ）
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　「相手は、世界レベルのストライカーですから」。広島・小野監督は、「中盤におりて起点にもなれるし、ボールを奪われない。突破もできるし、裏にも飛び出せる。そして、どんな状況からでもシュートまで持っていける。ストライカーとしての資質は、すべて持っている選手ですね」と最大級の賛辞を送って、大分のエースを警戒する。シャムスカ監督就任以来、7試合で7得点、得点をあげた5試合すべてで勝利を導いているマグノ・アウベスに対する、小野監督の賛辞は止まらない。裏返して言えば、彼を抑える困難さを表現していることでもあるのだが。

　Jリーグにはもう一人、小野監督が「世界レベル」と絶賛するストライカーがいる。ワシントン（東京V）だ。広島はこれまで、ワシントンのいる東京Vと4回対戦している。厳しいマークで自由を与えなかったが、それでもカップ戦で2得点を叩き込まれている。どんなに対策を講じていたとしても、一瞬の隙を絶対に見逃さない。それが「世界レベル」であり、マグノ・アウベスもその域に達している、と小野監督は評価している。単純なマンマークでは抑えられない相手に対した時、そこにパスを出す場所を抑える、という闘い方が「公式」ではあるが、今の大分の場合はそれも難しい、と小野監督は見る。

　「エジミウソンとトゥーリオ、2人のボランチからいいボールが出ていますし、アウトサイドもいい。パスの出所が多くて、潰しにいくことが難しい」「大分は、『夏に闘った時とは違うチーム』と考えていいですか？」あまりに当然すぎる問いなのだが、小野監督はその言葉に大きくうなづいた。「とにかく、一人一人が自信を持って、勢いがありますからね」。

　しかし一方で、小野監督は自らのチームの状況に、手応えを感じてもいる。磐田戦前の練習では、小野監督自身が「シーズンで1度使えるかどうか」という賭けに出た。駒野や茂原、大木や李などのレギュラー選手をトップチームから外し、練習試合で新しい選手を次々と試すことによって、目標を見失いつつあったチームに大きな刺激を与えたのである。一歩間違えればチームがバラバラになりかねない「劇薬」投与によって、広島は闘う雰囲気を取り戻した。それが、磐田戦での快勝につながったのだ。特に、絶好調・大分と対戦する場合、「絶対に負けない」という気持ちを込めて立ち向かい、泥臭くてもボールを自分たちのもとにたぐり寄せることが重要。それができて初めて、勝負の土俵に乗れる、と小野監督は考えている。そしてそれができる手応えを、彼は今の広島に対して感じているのだ。

　「大分に勝つ」という視点で質問すると、「自分たちがやってきた攻撃をやりぬくこと。それが結果として、（ここ7試合で3失点という）大分の堅守を突き破ることにつながる」と小野監督は言い切った。大分の守り方は、2人のストッパーが積極的に相手FWにアタックすることがベース。それが機能して結果を出しているのだが、一方でアタックにきたその裏には必ずスペースができる。そこを、広島のコンセプトである「3人目の動き」で突けばいい、というわけだ。イメージは、佐藤寿が大分DFを引きつけ、そのウラのスペースに森崎浩が飛び込んだ、7月10日の大分ビッグアイでの決勝点である。

　マグノ・アウベスを90分間抑えきることは、確かに難しい。しかし、小野監督はそういう切り札を持ったチームと闘う場合、必ず同じ言葉を口にしてきた。「2点とられれば、3点とればいい」。Jリーグナンバー1の守備力を誇るチームを作ってはいるが、小野監督のもともとの持ち味は攻撃的な精神。大分戦用のゲームプランを作るに当たっても「マグノ・アウベスを抑える」ということよりも「堅守・大分を突き破る」方に神経を砕いて闘う決意だ。実際、広島の攻撃陣が好調を維持していることもあり、明日の試合は攻撃的で、見ている側にとっても面白い展開となりそうだ。

　戦力的に見れば、大分は精神的支柱である吉田孝行を出場停止で欠き、また高松大樹や福元洋平など、主力のコンディションに不安を抱えている。しかし、勢いのあるチームというのは、そういう時にヒーローが出てくるもの。吉田がいないことで「有利に闘える」と広島が考えてしまうと、そこに落とし穴が待っている。もっとも、小野監督はそんな風に単純に考えるほど、オプチミスト（楽天家）ではないが。

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2005.11.11 Reported by 中野和也