12月3日（土） 2005 J2リーグ戦 第44節
福岡 1 - 1 仙台　（14:04／博多球／13,375人）
得点者：'49 古賀誠史（福岡）、'65 村上和弘（仙台）
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　開始直後の48秒、アレックスのフリーキックをGK高桑がファインセーブでコーナーキックに逃げれば、5分にはシュウェンクのフリーキックをGK水谷ががっちりと抱え込む。来季J1戦士となるプライドにかけて勝利を目指す福岡と、J1昇格への強い気持ちをぶつけて福岡を叩きたい仙台の試合は、互いにアグレッシブにぶつかり合う展開を見せるかに思われた。しかし、予想に反して福岡の動きが鈍い。「前半は寝ていると言われても仕方がないようなパフォーマンス」。やがて10分を過ぎたあたりから、仙台が主導権を握って試合を進めていく。

　仙台の攻撃はバロンから。やや下がった位置で楔のボールを受けると、それに梁勇基が絡んでボールを展開。そして、シュウェンクがスペースに飛び出して福岡ゴールを狙う。全体のバランスを整えながら、高い集中力と気迫を持って戦う仙台の勢いに、福岡は押し込まれる展開が続く。やがて20分を過ぎたあたりからは一方的な仙台ペース。福岡は、22分、24分、そして30分と決定的なピンチに見舞われる。いずれもフリーの状態で打たれたシュート。どれか1本を決められていたら、試合は更に一方的な展開になったかもしれない。

　後半に入ると、仙台は更にその圧力を増す。46分、48分とまたもやきわどいシュートが福岡ゴールを掠める。しかし、先制点を奪ったのは福岡。49分、右サイドで得たフリーキックのチャンスに古賀の左足が振りぬかれると、きれいな弾道を描いたボールがゴール前でワンバウンドして、そのままゴールネットに吸い込まれた。数ある決定機を凌ぎ、ワンチャンスでゴールを奪った福岡。これもサッカー。まさにそんな展開から生まれたゴールだった。

　この時点で、3位争いのライバルである甲府の途中経過は1−1。負ければ順位を逆転される仙台にとっては、プレッシャーのかかる失点だったはずだ。しかし、仙台は慌てない。「今年の44節の中でも非常にレベルの高い試合運び」（都並敏史監督・仙台）。選手たちも十分に手応えを感じていたのだろう。守備のバランスを整えることに集中しながらも、攻撃への圧力を増していく。そして65分、ゴール前で得たフリーキックのチャンスから、村上が同点に追いつくゴールを挙げた。

　ここからは、攻めに出る仙台と、守りを固めてカウンターを狙う福岡の攻防が続く。続くこう着状態。しかし、リズムを刻むのは仙台だった。そして残り5分となったところで猛攻を開始する。40分、41分、45分と決定的な場面が続く。だが、ここで仙台の前に立ちはだかったのはGK水谷だった。前半の決定的なシーンも含め、1対1から放たれた仙台のシュートをことごとくセーブ。文字通り最後の砦となってゴールを守る。

　そして4分間のロスタイムが終えようとして時、福岡に最大のピンチが訪れた。ペナルティエリア内で渾身のシュートを放ったのは熊谷。博多の森に足を運んだ福岡サポーターが失点を覚悟した瞬間、タイミングよく飛び出したGK水谷が、またもやこのボールをブロックした。やがて試合の終了を告げるホイッスルが博多の森に響き渡る。結局試合は1−1のドローに終わった。そのとき、他会場では甲府が京都に2−1で勝利。この時点で、仙台のJ1への道が断たれた。

　長い、長いシーズンが終わった。今日の結果は1−1のドローだったが、苦しみの末にJ1昇格を勝ち取った福岡と、後一歩が及ばず夢が絶たれた仙台の立場の違いは大きい。しかし、両チームに共通していることがある。それは、今日が終わりではないということだ。新しいステージでの戦いは更に厳しい戦い。福岡は喜びに浸ることなく新たな戦いへの準備を重ねることが求められている。そして仙台は、この悔しさを張らすためには、結果を正面から受け止めて新たな一歩を今踏み出さなければならない。

「試合終了のホイッスルは次の試合のホイッスルである」。日本サッカーの父と呼ばれたデッドマール・クラマー氏のあまりにも有名な言葉だ。喜びに浸る時間も、悲しみにくれる時間もない。福岡にとっても、仙台にとっても、新たな戦いが今日から始まった。

以上

2005.12.03 Reported by 中倉一志