12月3日(土) 2005 J2リーグ戦 第44節
山形 1 - 0 鳥栖 (14:04/山形県/3,145人)
得点者:'72 佐々木勇人(山形)
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緑から白へ…。試合前のウォーミングアップを終えたあたりから本降りになった雪が、ピッチの色を変えていく。オレンジ色のボールが採用され、ピッチの外には、ハーフウェイライン、ペナルティエリア、ゴールエリアの位置を示すカラーコーンが慌てて設置された。結局終了のホイッスルが鳴るまで止むことのなかった雪は、「スパイクの裏に詰まって滑りやすく」(山形・佐々木)したり、「足の感覚がなくなってしまって、キックが正確に蹴れなくなった」(鳥栖・シュナイダー)り、選手個々のプレーの質を削いでいく。さらに戦術面でも、山形はパスをつなぐ本来のサッカーから前線で起点をつくる方向転換を迫られ、鳥栖は山形の両サイドバックの裏を突く狙いを果たせずに終わることになった。
1週間かけて準備してきたものが、雪によってことごとく制約を受けていた。しかし、そんな雪にもたったひとつだけ、侵せない領域があった。それが選手たちの「ファイティング・スピリット」。激しい衝突で選手が倒れ込み、小競り合いが何度か起きるほどに気持ちと気持ちがぶつかり合ったが、その気迫こそが、寒中見守るサポーターの眼を90分間釘づけにしていた。
立ち上がりから両チームとも各選手が離れすぎず、狭いスペースでせめぎ合う中で、前半を優位に進めたのはホームの山形。主に右サイドハーフの佐々木が絡む形で何度か裏のスペースに到達した。さらに、30分には佐々木のFKがバーを直撃。跳ね返りを高橋がダイレクトで弾き返すが、これはバーを大きく越えていった。前半だけで12本のシュートを放ったが、その多くが枠の外へ。また、グラウンダーの難しい当たり2本が鳥栖のゴールを襲ったが、GKシュナイダーがきっちりと正面に入り、山形はこぼれ球を狙う機会を与えられなかった。
一方の鳥栖にも、チャンスのにおいが漂わなかったわけではない。鈴木、奈良崎の2トップは左右での起点づくりに駆け回り、その空いたスペースには左サイドから高橋が巧妙に入り込んだ。その高橋が高林の頭に合わせた28分のFKは、山形のGK清水の好セーブに遭い、40分に左サイドで奈良崎が戻したボールに高地が左足を振り抜いたミドルシュートはバーを直撃して逆サイドへ弾かれた。
トラップミスやパスミスがいつでも起こりうる状況は、たちまちにしてチャンスをピンチに、ピンチをチャンスに変える。一瞬も気の抜けない緊張感の中で、それでもミスは繰り返されたが、ミスを用心こそすれ、恐れる者は誰一人としていなかった。「ボールが来たところに走っていこう、前でプレーしようという意識」(山形・林)が、22人のアグレッシブなプレーを引き出すのにプラスにはたらいた。
後半、両ゴール前の攻防が減り、試合が硬直していた時間帯、山形に待望の得点をもたらしたのは、佐々木の個人技だった。72分、センターバック小原がヘディングで押し戻したボールを大塚がキープし、中央のスペースに入り込んだ佐々木へ。ドリブルで仕掛け、ジリジリと後ずさる鳥栖の最終ラインをボックスに押し込んだ辺りで、奪いに来た相手をかわし、この試合唯一のゴールをねじ込んだ。
追う立場となった鳥栖も83分、2度ともGK清水に跳ね返された鈴木のシュートや、その直後、マイナスのクロスに走り込んだ奈良崎のシュートで、山形をヒヤリとさせる。さらに、89分のFKにはGKシュナイダーもゴールを空けて加勢するが、ついに追いつくことはできなかった。
試合終了後の記者会見で、鳥栖・松本監督はこの試合での選手の頑張りを讃えたあと、今シーズン生まれ変わったクラブについて言及する。「フロントと現場、チームが一生懸命戦った1年だったと思う。必ずや、培ったもの、学んだものが大きく活かされるし、活かしていかないといけない1年だった」
存続の危機から一転、ホームで平均約8,000人を集めるクラブに生まれ変わり、来シーズンはさらに大きく飛躍しようとするサガン鳥栖。地域と一体となったその歩みが確実に刻まれれば、来シーズンは今季の8位を上回り、昇格争いをさらに長い期間楽しめるだろう。
一方、今季初の3連勝をすべて無失点で飾った山形は、昨年から一歩後退の5位でシーズンを終了した。試合前日には、2年続けて昇格争いに加わる手腕を発揮した鈴木監督の退任が発表され、「来シーズンこそは」と純粋に意気込むことができない雰囲気がサポーターの間には漂っている。試合前、シーズン最終戦に寄せて、チームを運営するスポーツ山形21の金森義弘理事長が、サテライトリーグ参戦やJ1昇格目標の明確化などからなる5項目の「来期に向けての基本的な考え方」を発表した。山形が前進を続けるクラブなのかどうか、かつてないほど注目を集めるシーズンオフとなりそうだ。
以上
2005.12.03 Reported by 佐藤 円
J’s GOALニュース
一覧へ【J2:第44節 山形 vs 鳥栖 レポート】雪に見舞われて本来の戦術は生きず…。しかし、両チーム気迫のこもった最終戦!(05.12.03)
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