初年度は勝ち点30で最下位、2年目は勝ち点63で6位。コンサドーレ札幌は04年、「5段階計画」に基づき柳下正明監督を招へいし、新たなスタートを切った。船出したばかりのころは、若手主体でひ弱さも見られたチームだが、わずか2年間でJ1昇格争いを演じるまでに成長。そして、昨季の札幌ドームでの最終戦、サポーターに挨拶をする柳下監督の口から発せられたのは「来季はトップ3を目指す」という言葉だった。今季は、柳下コンサドーレにとって育成にも力を入れてきたこれまでとは異なり、始めてJ1昇格がはっきりとした目的である勝負の年となる。
選手の刷新にも大鉈を振るい、川崎FからFWフッキ、山形からMF大塚真司など即戦力となるメンバーを中心に9人が新たに加入した。いかに早くチームにフィットするがカギとなるが、この2年で作り上げたベースがしっかりしていることに加え、フィジカル、戦術両面でチームに合った選手を獲得しているため、それほど心配はないはずだ。監督は「これまでいたメンバーが(新加入選手の影響で)今までになかった頑張りを見せている」と新メンバーがもたらした別の効果にも手応えをつかんでいる。
発展途上とはいえ、チームの骨格は出来上がり、個々の能力も確実に上がってきている。昨季の発展形となる今季のチームが、J1昇格のために一番変わらなければいけないことは“勝負強さ”であるはずだ。昨季、内容的には上回っているが勝ちきれない試合が目立ち、特に勝負所だった第4クールではそれが顕著で、ナイーブなゲームが続いた。「48試合ずっといい状態でいられるわけはない。悪い状態のなかで勝ち点1でもあげていくことが大事」と監督が語る通り、昇格を手にするためには、“試合を拾う”ことができるしたたかさとねばり強さが必要となる。
3月4日、札幌は02シーズンのJ2降格から4回目の開幕を迎える。柏、神戸、東京VとJ1から3チームが降格してきた中、昇格の切符をつかみ取るのは生易しいことではない。だが、それを充分承知した上で、サポーターたちは久しぶりに味わえる“予感”に酔いしれつつ、歓喜の瞬間を待ちわびている。
【注目の新戦力】
後半戦に清野智秋がブレイクしたものの、シーズンを通しての最多得点はDFの池内友彦の11得点とFWの得点力不足に悩まされた札幌が、川崎Fから期限付き移籍で獲得したのがFWフッキ。若干、ボールを持ちすぎる部分はあるものの、その突破力やキープ力は確かなもの。加入後初戦となる福岡との練習試合では、1ゴール、1アシストを記録し、早速結果で実力を示した。フッキが下がり目でボールをキープすれば、その空いたスペースに後ろの選手が飛び出していくことも可能になり、攻撃に新たなバリエーションが生まれるだろう。
また、山形から加入のMF大塚真司は経験が豊富な選手。若い札幌の中盤をまとめる役割を担うことになるはずだ。プレーはもちろんだが、チェンジ・オブ・ペースやコーチングなど、チーム全体を動かす役割に期待したい。また、水戸から移籍のMF関隆倫は、運動量が豊富で中盤ならどこでもこなせる使い勝手のいい選手。札幌では、左サイドでの起用が現在のところ濃厚だ。また、昨年の高円宮杯全日本ユース選手権で準優勝を果たしたコンサドーレ札幌ユース(U-18)からは、MF藤田征也とMF西大伍の2人がトップに昇格。すぐにスタメンとはいかないであろうが、どちらも攻撃的なセンスのある選手なのでこれからの順調な成長に期待したい。
【日本代表へイチオシ】
●MF20 上里一将
昨季の一年間を振り返り、柳下監督が「確実に階段を上がってきている」と評価したのが、加入3年目の上里一将。テンポの良いパスに加え、左足から放たれる正確なフリーキックと豪快なミドルシュートを武器に、昨季は第8節の福岡戦からレギュラーに定着。それと共にチームの調子も上昇し、第2クールの成績では京都に続いて2位に入る大きな原動力となった。しかし、第28節を目前に控えた8月の練習中に左膝前十字靭帯を損傷。現在もリハビリが続き、開幕までの復帰は難しいだろうが、昨季見せたトップパフォーマンスを取り戻せば、各年代の日本代表、そしてさらに上へのステップアップを今後期待させる選手だ。ちなみに彼の出身は沖縄県の宮古島。宮古初のJリーガーが、さらなる吉報を地元に伝えることを望みたい。また、今季加入の藤田&西のコンサドーレ札幌ユースコンビにもまずはレギュラー、そして、ユース日本代表へと階段を駆け上がることをサポーターたちは願っている。
【開幕時の布陣予想】
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中盤の左サイドはフィジカルに優れた関隆倫の起用が濃厚。トップ下は砂川誠と昨季途中加入の西谷正也の争いとなりそうだ。ボランチは、昨季、本来の攻撃的センスに加え守備でも安定感が増した鈴木智樹を軸に、ジェフ千葉から移籍の芳賀博信も練習試合では度々起用されている。ほか、昨季の実績がある金子勇樹も虎視眈々とポジションを狙う。また、山形から加入の大塚真司は、現在、右サイドでの起用が多いが、ボランチでの出場も考えられるだろう。
昨季の開幕時のリベロは池内友彦だったが、退場が重なったこともあり、第5節からは曽田雄志が定着。今季もこの2人の争いで、外れた方が右サイドのストッパーをスピードが魅力の加賀健一と競うことになる。左サイドは、昨季途中からコンバートされた和波智広、キーパーは引き続き林卓人の起用で決まりだろう。
reported by 原子 禅
2006開幕直前 クラブ別キャンプ・戦力分析レポート














