3月11日（土） 2006 J1リーグ戦 第2節
新潟 2 - 0 Ｆ東京　（15:04／新潟ス／40,266人）
得点者：'65 寺川能人（新潟）、'76 エジミウソン（新潟）
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　新潟がホームでF東京を破り、今季初勝利を挙げた。65分、寺川能人が、大分に在籍していた2003年以来、3シーズンぶりになるリーグ戦でのゴールを決めて先制。76分にはエジミウソンが得点して突き放した。守備は中盤と4バックがバランスを崩さずに守り切り、F東京の攻撃を完封。今季から指揮を取る鈴木淳監督にとっても新潟での初勝利になった。F東京は中盤でパスミスが相次ぎ、流れをつかむことができなかった。

　笑顔はほとんどなかった。むしろ表情は固く引き締まっていた。ゴールの直後、チームメートに囲まれながら、寺川は秘めていた闘志を表に出した。

　65分、右サイドから矢野貴章がクロスを入れる。それに合わせてエジミウソンがヘディング。こぼれ球が目の前に落ちた。「正面に来たし、ラッキーだった」。慌てずに右足で蹴りこんだボールがゴールネットを揺らす。新潟の今季初得点で、今季初勝利を大きく引き寄せるゴールは、寺川自身にとっても意味があった。リーグ戦では大分時代の2003年のセカンドステージ第6節浦和戦以来の1点。「久しぶりに決められましたからね。ホッとしましたよ」。試合後、固かった表情がようやく緩んだ。

　「必ずしも調子は良くなかった」と言う。前半、何度かチャンスがあった。14分にはペナルティーエリアで1人交わしてシュートを放つがブロックされた。21分にもペナルティーエリア内でエジミウソンからパスを受けるが、相手DFに寄せられ、シュートに持ち込めなかった。

　それでも慌てることはなかった。前節川崎F戦ではボランチでスタメンだったが、この日は4-4-2の右MF。強引に自分で持っていく場面は多くはなかったが、守備とのバランス、ポジショニングを考えながら、周囲もうまく使った。今季の新潟はポゼッション重視。寺川は練習中からチームメートとプレーについて話し合う時間を増やした。ボールを生かすためのコミュニケーションは取れている。「攻撃に関しては中盤の選手は自由にやらせてもらっている」。こぼれ球への位置取りも自身の判断だった。
　
　2000年からJ2時代の新潟に在籍し、2003年には大分へ移籍。翌年、J1に昇格した新潟に復帰した。その後、新潟での得点は一昨年の天皇杯・湘南戦と、昨年のヤマザキナビスコカップ予選の神戸戦の2点。リーグ戦でゴールを割ることはできなかった。この試合、2002年、第43節C大阪戦以来、新潟のキャプテンマークをつけてスタメン出場。「ホーム戦だし、まず勝ちたかった」。その思いが貴重な1点になって表れた。

　気持ちが乗っていたのは寺川だけではない。中盤では本間勲、シルビーニョがバランスを取りながら相手ボールを奪取。バックラインはマークを確認し合いながら、F東京の外国人トリオを止めた。「中盤がボールを取ってくれたし、中野（洋司）がスピードのある選手を押さえてくれた。あまり苦しくなかった」。ライン統率した喜多靖が言う。開幕の川崎F戦は6失点。ホーム開幕に合わせて、守備はボールを奪いにいく姿勢とポジショニングの確認を徹底して行った。「選手は戦う気持ちを持っていた」。鈴木監督はチーム全体の前向きな姿勢を評価した。

　対するF東京は、流れを引き寄せられなかった。中盤でセカンドボールを拾われ、カウンターを仕掛けられる場面が目立った。ハーフウエーを越えても、1本のパスがつながらなかった。ルーカス、ササ・サルセード、リチェーリの3人でシュートが合計4本。徳永悠平のサイド突破など、途中まで形はつくった。だが、ゴール付近でチャンスに持ち込む場面が少ない。新潟が引いて守ると、崩し切れずにミスにつながった。今野泰幸は「試合の中で流れを変えられなかった」。主導権をつかめなかったことを悔やんだ。

　就任後初勝利の鈴木監督は「ホッとしました」。同時に「これからが始まりです。攻撃の部分でも修正点はたくさんある」と、すぐに次節に目線を向けた。それはF東京も同じ。課題のあぶり出しと修正。今季、新監督を迎えた両チーム、しばらくはその繰り返しが続く。

以上

2006.03.11 Reported by 斎藤慎一郎