3月11日（土） 2006 J2リーグ戦 第2節
横浜FC 0 - 0 鳥栖　（14:04／三ツ沢／4,124人）
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「今日のこの試合を迎えるにあたって多少の緊張はありました。ただ、不安というものは一切ありませんでした。」　先週の開幕戦直後に発表された足達前監督の解任。横浜FC・高木琢也 新監督は、あの騒動から中４日での初采配を終えた感想をこう語ってくれた。サポーターの応援ボイコットなどのニュースが取り立たされる中、この日、選手をはじめめ、スタッフやサポーターなど、様々な人がそれぞれの思いを持ちながらこのスタジアムに集ったに違いない。

キックオフ約１時間前、ピッチではホーム開幕にあたりセレモニーが始まった。この日のスタジアムは、去年夏以降ずっと見せていたような、多くの人で賑わう三ツ沢の光景ではなかった。 人も少なく、普段ならビッシリとスタンドを埋める横断幕も、この日に限ってはほとんどなし。ゴール裏に大きく掲げられた「フロント・選手・サポーター　今こそ団結しよう」のメッセージに、たくさんの思いが詰められている気がした。

そんな中、セレモニーでは、選手・スタッフが一人ひとり名前を呼ばれるとピッチに姿を現し、スタンドに向けて挨拶。チームを代表して奥寺代表取締役社長は「監督交代というこの事態に納得のいかない人も多いと思いますが、J1昇格という目標に向け、あらゆる可能性を追及していきたい」と話した。その最中、大きなブーイングなどでその声が掻き消されることはなく、逆にその一言 一言に注目が集まっていたかのような静寂のなか、異様な雰囲気に包まれていた。
　
そんな中始まった鳥栖を迎えての一戦。横浜FCにとっては、「結果が一番大事（横浜FC・小野）」、「絶対に勝ち点３を取りたい（横浜FC・高木監督）」試合だった。一方、鳥栖にとっても前節札幌を相手に善戦しながらも黒星を喫しているだけに、どうしても勝ちたい試合。練習試合でのケガで新居が欠場し、藤田がスタメンで登場。その鳥栖だが、「得点というものが選手たちに重く圧し掛かっていて、硬さがある」と 鳥栖・松本監督が話すように、横浜FCは前半の立ち上がり、その守備の部分での堅さを突いて 立て続けにチャンスを作り猛攻を仕掛けるものの、ゴールを割ることができない。

前半ロスタイムに訪れた超決定的チャンス。ハーフウェーライン付近でボールを奪った三浦知から右サイドを駆け上がる吉武にボールが渡ると、吉武はそのままドリブルで持ち込みクロスをあげる。しかし ゴール前で合わせたアウグストが、この決定的な場面で決めきれず、そのまま試合を折り返した。

後半に入り、前半終了間際から徐々にチャンスを増やしていた鳥栖も、前半からの硬さが取れず、なかなか枠を捕らえることができない。 また 鳥栖のゴール前での１対１などの決定的なシーンを、横浜FCはGK菅野のスーパーセーブで何とか凌いだ。 そして横浜FCは 三浦知から北村、アウグストから内田、吉武から富永の交代で「勝ち」に行く姿勢を更に強め、鳥栖も３枚の交代カードを切ってくるものの、最後まで お互いチャンスをものにすることが出来ず、勝ち点を分けるかたちで試合終了となった。

試合後、高木新監督は「全ては上手くいかないものですね」と、初采配の率直な感想を話してくれた。高木監督の「緊張はあったが不安はなかった」その裏には、「選手たちへの信頼があったから」だという。「チームに合流し数ヶ月、コーチという立場で選手たちをサポートしている中で、選手の様々な部分が見えて 信頼できる部分がたくさんあった。今日、僕に全く不安がなかったのは、選手たちを信じていた部分だったのかなと思います。」という言葉がとても印象的だった。　選手たちも「選手を信じてくれている」と口々に話していた。

今日の試合について、「結果が一番大事だった試合なだけに、結果が出なかったことは残念。ゴールというのが今のチームにとって一番の薬だと思うし、それが入れば結果もついてくると思います」と話してくれたのは小野智吉。吉武も「自分たちで悪い流れを作ってしまった部分もあったが、それ以外はこっちのペースだったと思う。まだまだな部分も多いですが、あとは決めるだけです。」と話し、最後の「質」の部分が今の最大の課題と言えそうだ。

試合に集中し「戦う姿勢」を全員がピッチで表現した横浜FC。この試合で感じたものを 次は結果に繋げて、三ツ沢に戻ってきて欲しい。

以上

2006.03.11　Reported by 浅野有香