7月16日（日） 2006 J2リーグ戦 第28節
鳥栖 4 - 0 札幌　（19:04／鳥栖／6,648人）
得点者：'16 新居辰基（鳥栖）、'28 新居辰基（鳥栖）、'43 山城純也（鳥栖）、'67 高橋義希（鳥栖）
----------

世界に類を見ない長丁場のリーグ戦。ホーム&アウェーで、計4試合戦うのがJ2ディヴィジョン。この時期の戦いは、戦術だけでなくコンディション調整も重要な鍵となる。
「3廻り目になると相手を分析することもできるが、我々も分析されてしまう」（鳥栖/松本監督）。だからこそ、戦術がチーム内に浸透し、100%のパフォーマンスが出せるかが大きなポイントとなる。

鳥栖の攻撃は、中盤でボールをつなぎ、新居がラストアタッカーになることが多い。単につなぐだけでなく、新居がゴールを向いて飛び込む瞬間を見極めなければならない。今節、対戦した札幌は十分に対応を練ってきていたことであろう。しかし、事前に準備されたはずの戦術が機能する機会は少なかった。
今節の鳥栖は、両サイドDFをやや高めに配置し、札幌の厚い中盤に対応した。FWの山口と新居も、ポストプレーを積極的に見せた。パスを受けるコースを多く作ることによって札幌MFを翻弄し、確実に守備のコントロールを失わせていった。
16分には、左サイドDF高地のドリブルを中央で山口が受けた。この瞬間までは、新居にゴールに向いて飛び込まれないようにと札幌DFは捕まえていた。しかし、新居がチェックの動きを入れることにより、ゴールに向いてシュートコースを作ることができた。左足でこれを決めて流れは完全に鳥栖のものとなった。
28分には、左サイドに流れた鳥栖MF濱田にボールが渡った。札幌DFの裏を狙うと見せかけた新居が少し引き気味の位置に戻り、ゴールへ身体の向きを変えた。ボールは中央の山口に送られ、ドリブルにより札幌DFの意識は完全に山口の足元に集まった。主導権を持たない札幌DFは、ボールの後追い状態となってしまう。絶妙のタイミングで、ゴールを向いた新居にボールが渡ると今度は右足でゴールを揺らした。

流れを引き戻そうと札幌は、MFに上里と運動量のある和波を送り込んだ。中盤を落ち着かせることと攻撃の起点を作るためであったが、その目論見は適わぬうちに追加点を奪われてしまう。0-2のまま前半を終了すれば、ハーフタイムに戦術を修正することも可能だった。しかし、暑さと前半終了間際ということで瞬間的に気が緩んだのだろう。足が止まってしまった。
この瞬間を鳥栖の尹と山城だけは見逃していなかった。尹がボールを蹴れるタイミングを見計らうと、山城は一気にゴールを向いて走り出した。「尹さんが蹴ってくれると思ったから走り出した」（山城選手）ことを感じた尹は山城にGKとの1対1を演出し、山城はそれに応えた。

後半に入ると札幌もペースを掴んだように見えたが、ゴールを揺らすことはできなかった。奪ったボールをFW中山に送るのだが、鳥栖DF村主のチェックにことごとく拒まれた。左サイドから好機をうかがう砂川には、鳥栖DF長谷川が必要に喰らい付いていた。前節、柏を破ったような流れる攻撃は最後まで見せることができなかった。
「彼らは勝ったことだけが頭に残っていて、自分たちはやれるんだという気になってしまった…」（札幌/柳下監督）と自戒させられる内容に終始してしまった。

67分には、今季初得点を約7,000人のサポータに見せることができた高橋。
2度のピンチを美技で救ったGKシュナイダー潤之介。
身体を投げ出して攻撃の芽を摘んだDF村主。
「今日は、フィールドに入った全選手がヒーローだよ」と鳥栖・松本監督は最大限の評価を与えた。「鳥栖は誰が出てもやることは変わらないし、それができるチームになってきている。心配は一切なし！」と次節は警告の累積で3人（新居、高橋、山口）が出場停止となる不安を一掃させた。

サッカーの試合では、確実にボールをつなぐことで相手の体力と戦意を奪うことができる。逆にイージーミスは、自分たちの体力と戦意を確実に奪っていく。


以上

2006.07.17 Reported by サカクラ ゲン