8月19日(土) 2006 J2リーグ戦 第34節
札幌 3 - 1 仙台 (19:04/札幌厚別/7,489人)
得点者:'40 相川進也(札幌)、'46 チアゴネーヴィス(仙台)、'86 石井謙伍(札幌)、'89 上里一将(札幌)
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前回のホームゲーム(第31節)は湘南に1−5と大敗し、サポーターからのブーイングを浴びた札幌。しかしこの日は数的不利という劣勢を跳ね返して勝利を掴み、イレブンは札幌厚別公園競技場のスタンドに集った地元サポーターからの喝采を全身に浴びた。
ゲームの立ち上がりは単調なものだった。3トップ気味の布陣で戦う仙台は、前線へのパスにズレが目立ち、高い位置に起点を作ることができない。札幌にしても相手のシステムに対応するべく右ウイングバックの芳賀が低めにポジションを取ることになり、そのエリアのスペースは守備的MFが見るべきなのだが、大塚、鈴木の2人は上手く連係を取ることができず、中盤の距離間隔がアンバランスなものになってしまっていた。その結果、両チームが互いにうまく攻撃を展開できないままに、中盤で潰し合う時間帯がしばらく続いていたのだ。
そうした中で先に主導権を得たのはホームの札幌だった。18分にカウンターからチャンスを作ると、20分過ぎには連続してコーナーキックを獲得。25分ころには立て続けに2つの惜しいチャンスを作り、その直後には西谷が蹴ったコーナーキックを曽田が頭で合わせるという場面を見せた。
しかし、決めるべきところで決められないのが札幌の悪癖。上記のようなチャンスを逃し続けるうちに、攻撃の精度が徐々に低下していく。パスにもズレが生まれたり、フッキがひとりで持ち込んではボールを失うという場面も目に付き始めた。いつ主導権が仙台へ移行してもおかしくない、そんな状況になっていた。
だが、ここで札幌は粘りを見せる。西谷がペナルティエリア右側からシュートを放つと、「この試合の重要性はわかっていた」という相川が、このボールを胸であわせて先制したのだ。主導権を失いかけ、チームのリズムが悪くなり始めた時間帯だっただけに、この先制点は札幌にとって非常に大きかったはずである。
そうして良い流れで前半を折り返した札幌だったが、ここで再び悪癖を露呈する。「ゲームへの入り方が悪かった。もっと互いに声を掛け合わないと・・・」とGK林が振り返ったように、後半立ち上がりに集中を欠き、あっさりと同点ゴールを許してしまう。1点を追い、ハーフタイムに監督の指示を受け直した仙台が、どういう攻撃をしかけてくるかわからない状況だったのだから、少なくとも立ち上がりの5〜10分程度は守備の意識を高めておくべきだっただろう。それに、チアゴ・ネーヴィスの得点もさほど相手が攻撃のパワーを強めたためのものではなかったので、落ち着いて対応すれば問題のない場面だった。悔やまれる失点だろう。
序盤こそ単調な試合展開だったが、1−1のスコアになり時計の針がタイムアップに向けてジワリジワリと進むにつれ、徐々に緊張感を増してゆく。仙台は58分に関口、76分に中島とスピードのある選手を前線に投入。ロペスの位置を下げ、この選手のキック力を生かして大きな展開を見せるようになる。
一方の札幌も70分に上里を砂川に代えてトップ下へ投入。守備的MFと交代させて攻撃のパワーバランスを高める選択肢もあったが、1−1のタイスコアという状況を考えればこの采配は妥当なものだった。
そしてこの交代カードの切り合いを制したのは札幌だった。86分、中盤でボールを受けた上里がルックアップ。「ケンゴ(石井)がスピードを上げていた」と見るや左足を一振り。蹴り込まれた鋭いボールはピンポイントで石井の頭へと届き、そのヘディングシュートは仙台のゴールネットを見事に揺らした。直前に曽田がこの日2枚目の警告を受けて退場となっており、突然の数的不利にチームの雰囲気が悪くなりかけていたタイミングだっただけに、札幌にとっては救いの得点だった。同時に、エースのフッキに代えて石井を投入していたこともカギだった。数的不利により1トップの形になっていたため、中盤に引いてくることの多いフッキならば、この流れでの得点は生まれていなかったはず。柳下監督の采配が的中したのだ。
さらに圧巻なシーンはその3分後だ。中盤で相手ボールをカットした大塚からパスを受けた上里は、ゴールまでおよそ35メートルの位置で再び左足を強振。今度はパスではなく、そのキックは直接ゴールネットを揺らしてしまった。
3−1。ほんの数分前までは数的不利の状況で雰囲気を悪くしかけていたチームに笑顔が溢れた。ドローすら危ういかとも思われただけに、サポーターの喜びも大きかったはず。二十歳のレフティー、上里の強烈なキックが、札幌厚別公園競技場に歓喜を呼び戻した夜だった。
ただし札幌としては、どれもグループとして崩した得点ではなく、あくまでも個の力で得た勝利であるため決して気を緩めることはできない。この勝利を浮上のきっかけとするためにも、より緊張感を持って次の試合へと挑むべきである。
以上
2006.08.20 Reported by 斉藤宏則
J’s GOALニュース
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