8月26日（土）J2 第36節 山形 vs 仙台（19:00KICK OFF/山形県）
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前節・水戸戦の後半16分、足首を負傷していた財前宣之が5試合ぶりに公式戦のピッチに戻ってきた。積極的にスペースへ動いてボールを要求し、リリースすると前に走りだす。確かに財前のプレーはリズムを呼び込んだが、そのプレーが光れば光るほど、巧妙にリトリートした水戸に攻め手を見いだせず、ボールに動かされるようなチーム全体とのコントラストが際立つことになった。結局、財前効果は、この試合では相手のゴールネットまで届くことなく、チームは連敗する。

山形の「前半失点症候群」が始まったのは第29節。前半のうちに2トップがレッドカードを提示され、9人で戦うことになった東京V戦がその最初だ。なんとか無失点で乗り切ろうとした前半ロスタイムにゴールを割られ、後半は攻守に気迫をみなぎらせ失点0と健闘したが、その疲労を3連戦の残り2試合に引きずることになった。第30節・鳥栖戦は4分、第31節・神戸戦は30分、さらに第32節・柏戦は17分、第33節・徳島戦は0分に失点し、いずれも0−1とリードされてハーフタイムを迎えている。

後半以降に追い上げる形はつくれていたものの、上位からも勝ち点3を奪うためには前半からペースを握る必要がある、と考えるのは自然な流れ。積極的にボールを奪いにいくことでこの事態を打開しようとした第34節・横浜FC戦以降は、イーブンペースの立ち上がりは実現できた。しかし今度は、それと引き換えるように相手に隙を与えることになり、前半10分に先制点を許すと、続く第35節・水戸戦でも前半19分に失点。さらに、いずれも前半のうちに追加点を奪われたことが響いて連敗した。かくして、前半に先制点を献上する試合が7試合続いている。

「僕も含めて、ナーバスになっていたのかなと思います」
勝ち点の重みがじわりと肩にのしかかってくるこの時期、アグレッシブさとリスクマネジメントのバランスに苦悩する日々を過ごすなかで、樋口靖洋監督は先手を取ることに汲々としていた自戒をこめて言う。「考えてみれば、前半でうまくいかなくても後半で盛り返す力があって勝ち点も取ってきたわけですから、そういう部分で我慢するゲームをもっとしっかり続けていかなくちゃいけないし、自分自身がもう少し落ち着いてゲームを見なきゃいけないかなと思います」

前半からペースを握ることも、先取点を取ることも確かに重要な課題だが、点を先に取ろうがあとから取ろうが、90分の笛が鳴った時点で1点でも上回っていればいい話だ。そのためには、必ず訪れる自分たちのペースの時間でしっかりと得点を取り、やはり必ず訪れる相手ペースの時間で集中力と忍耐力をもって守りきる。山形が快進撃を実現した第2クールでは、そうした大きな視点で1試合をとらえることで、逆に先制点が転がってきた。いま、立ち返るべき場所はそこにある。

相手は前節で復活の兆しを見せた仙台だが、まずはブラジルトリオ、特にロペスを前回の対戦同様に抑え込みたい。スピードを封殺するだけで攻撃力が大幅に減退するのは、前回対戦で実証済み。それだけに、ロペスにボールが渡ったときのファーストディフェンダーをしっかりと付けることが重要となる。また、攻撃面で最大のテーマは、「動きの組み合わせをつくること」。DFラインやボランチの位置でのポゼッションから、勝負するパスに移行する際、まずは出し手と受け手の意思を合わせ、そこで起点ができたときに3人目、4人目と連動した動き出しができれば、よりゴール前に人数を預けることが可能になる。攻撃パターンを増やすことで、きついマークにさらされるレアンドロもより自由に動くことができる。仙台の両SBは常に高い位置を取るだけに、裏を突き攻め込む機会はあるはずだ。

前節の敗戦で順位は8位に下がり、2位との勝ち点も16差まで開いた。厳しい状況がさらに増したことは否めない。ただし、サッカーにTKOはない。たとえ倒れても、試合が続く限り何度でも立ち上がる権利は与えられている。そして昇格可能性の灯も消えてはいない。山形は、この日のために過去最大の集客キャンペーンを展開し、コレオグラフィーも久しぶりに登場する。ピッチ上のプレーで、そしてスタンド全体のウェーブで、我々が強靭な精神力を持つチャレンジャーであることを示すときが来た。

以上

2006.08.25 Reported by　佐藤円