第86回 天皇杯全日本サッカー選手権大会 3回戦
横浜FC 0-1 B神戸(2,011人/三ツ沢)
得点者:'84 吉沢秀幸(B神戸)
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負けたらそこで終わってしまうトーナメント戦には、リーグ戦とは違う雰囲気があり、また違った難しさもある。Jリーグ、社会人、大学など、様々なレベルのチームが日本一を目指す天皇杯には「番狂わせ」という魔物が潜んでいる。その魔物は、今日も様々な会場で姿を現すかたちとなった。
J2チームが登場する3回戦。今回横浜FCが対戦したのは、今季の関西社会人リーグで優勝し、JFL参入を賭けて地域リーグ決勝大会を戦うことが決まっているバンディオンセ神戸。 「Jの経験者もいるし、ポイントとなる選手をおさえつつ、普段通りの自分達のカタチを持って行くことが大事」と高木監督が話していたように、B神戸には多くの元Jリーガーが所属している。そのB神戸のスタメンには神崎(元・川崎F)、鎌田(元・徳島)、森岡(元・G大阪)、和多田や川崎、森など、半分以上がJでの経験を持つ選手が顔を揃えた。
一方、迎え撃つ横浜FC。GKは小山、最終ラインに岩倉・室井・太田・小林、そしてボランチを吉野・坂井が務め、右サイドに崔、左サイドには吉武が、2トップには ケガで暫らく試合から遠ざかっていたアウグスト、そして富永という顔ぶれとなった。若手中心のメンバー構成となったが、実際 チーム内にはケガ人が多く、別メニューで練習をこなす選手が少なくない。90分通してプレー出来る選手が少ない状況の中でのこのメンバーは「現時点でのベストメンバー(高木監督)」。
「前半はゼロでいきたいというプランがあった」と話す橋本監督率いるB神戸は、立ち上がり、前線からのしっかりとした守備で、比較的高い位置でボールを奪うシーンを多く見せる。「前線からディフェンスしたことで、相手のボールは良い入り方はしなかった」という橋本監督の言葉通り、横浜FCは前線のターゲットである富永になかなかボールが収まらない。ちょっとしたミスからボールを失う場面も多く、効果的な攻撃に持ち込めない時間帯が続く。B神戸はボールを奪ってから 切り替え早く 横浜FCゴールに襲い掛かる。
横浜FCは前半終盤、ボールを奪った吉武から右サイドにいるアウグストへ、そこからその前で待つ坂井にボールが渡ると、坂井が富永へ良いクロスをあげる。また、岩倉から左のサイドを駆け上がる坂井へ大きなサイドチェンジを交えた速い攻撃で、最後中央に飛び込む室井にクロスを入れチャンスを作るも、結局ゴールを割ることができないまま試合を折り返すこととなった。
B神戸の「プランどおり(橋本監督)」ゼロで抑えられたまま前半を終えた横浜FC、後半に入りB神戸に攻め込まれる時間帯が多くなる。「横浜FCはゴール前の集結は速いが、集結が速過ぎてしまうというのが目に付いていた。サイドを結構有効に使えれば…というプランがあった」と橋本監督が話すとおり、B神戸は前半から幾度となく見せていたサイドからの攻撃に拍車をかけ、サイドから崩すシーンを増やしていった。そんな中でも、横浜FCは、前線にいる富永にボールを集めゴールに向かうも、時には強い風にそこまでのボールを阻まれたり…と、1点が遠い。
後半39分、B神戸のプランがうまくはまった。ボールを奪うと、石田が中央に入りながら右の裏のスペースに駆け上がる鎌田へ繋ぐと、そこからゴールラインぎりぎりのところまでドリブルで持ち込み、小林との1対1。そこをうまく交わしてクロスを入れると、それに吉沢がきっちり合わせて先制点を奪った。小さなミスも目立った横浜FCにとって、この1点を返すのに残された5分という時間は少なすぎた。そのまま時間だけが過ぎ、試合はB神戸が横浜FCから大きな金星をあげた。
試合後、高木監督は「前半もそうだし、後半もそうだが、チームとしてのやり方を相手の方が徹底してやっていた。しかし、我々はプロで 当然結果も必要。攻守においてのコンタクトプレーであったり1対1、技術的な部分、この3つの要素というのは絶対負けてはいけないというところがあったが、そういうところでも負けていた。チャンスもあったが、そこを決めきれないとこういうゲームになってしまう。私自身も選手の経験があるので、こういう(試合の)難しさというのも当然分かる。ただ、それでも内容がどうであれ、絶対に勝たなくてはいけなかったと思う」と振り返った。
そして「リーグ戦とは違うカップ戦のリズムというのもあるし、そういう雰囲気でやらなくてはいけない難しさはあるが、でもそれは(負けた)理由にはならない。非常に悔やまれるゲームだったと思う」と敗戦を悔やんだ。公式戦では初めて90分間ピッチに立った太田も「判断をもっと早くしなければならない。簡単なパスミスがまだまだ多い。キックの種類、近くのパス、前に大きく出すものや裏を突くようなパス、そういうキックの使い分けのところがまだまだ足りない」と語った。
一方、「勝てたことは嬉しいが、勝ってしまった…という感じ。」と話すのは、横浜FCでもプレーしていた石田雅人。その石田は「相手が古巣ということはあまり意識していなかったが、出たら頑張ろうと思っていた。最後、自分のパスから祥平くん(鎌田)に行って1点入ったので、そのワンプレーで結果が出て良かった」と勝利を喜んだ。 試合後、横浜FCサポーターはチームの敗戦にブーイングを送ったが、その直後、「横浜FCの分も次のJ1との対戦で頑張ってきてくれよ」といわんばかりの「石田コール」で、石田にエールを送った。これには石田も「やっぱり思い入れのあるチームなのですごく嬉しかった。横浜FCのサポーターの人の分まで次頑張って、また一番大事な地域リーグでもJFLに上がれるように頑張ります」と語り、笑顔でスタジアムを後にした。
「正直なところ、これが地域リーグの決勝大会だったら良かったのに…」というのは、橋本監督をはじめ、神戸の選手も口々に話していたのが印象的だった。あくまでも照準はJFLに参入するための地域リーグの決勝大会に合わせているチームではあるが、「地域リーグの決勝大会に向けて、今日のこういう試合を勝ちきれたことはメンタルの部分でも大きな自信になる。勝たないと次(地域決勝大会)に繋がらないなと思っていたので、今日勝てたことの意味は大きい。(鎌田)」と、来月末から始まる大会に向けて一つ大きな弾みをつけることが出来たと言っても良さそうだ。
横浜FCにとっては、ここでもしっかり勝利を重ね、勝ち進むことによって、リーグ戦にも更に勢いをつけたいところだったが、チームの、そして個々の良さというものがほとんど出ないまま終わってしまった試合だった。ただ、それ以上に、ゴールを決められた後の5分の中でも「奪い返そう」という気持ちがプレーにあまり現れていなかった部分がとても気になって仕方がない。
次のリーグ戦は18日(横浜FCは14日は対戦なし)。しばらく時間があくというところでは、「昇格争い」に向け、その部分の修正も図りながら、気持ちを切り替え、「ガムシャラに」戦う姿をまた見せて欲しい。
以上
2006.10.08 Reported by 浅野有香
J’s GOALニュース
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