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【第86回天皇杯:山形 vs 三菱水島レポート】三菱水島から大量6点を奪い4回戦進出を決めるも、山形は失点パターンに不安を残す。(06.10.08)

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第86回 天皇杯全日本サッカー選手権大会 3回戦
山形 6-2 三菱水島(1,804人/山形県)
得点者:'12 レアンドロ(山形)、'14 高松健太郎(三菱水島)、'27 渡辺 匠(山形)、'30 内山俊彦(山形)、'55 レアンドロ(山形)、'59 レアンドロ(山形)、'63 原 竜太(山形)、'70 川口正人(三菱水島)
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前回の天皇杯3回戦に続き、三菱水島の2度目の挑戦を受けた山形だったが、そのメンタリティを支配していたのは、下部のリーグであるJFLチームと戦う難しさ以上に、チーム再生に懸ける思いだった。

攻撃では高い位置で起点をつくり、サイドへ展開して折り返す形が徐々に出始めた。8分には秋葉が、11分には原が、ともに右からのクロスで決定的な形をつくると、先制はその直後の12分。宮沢の左クロスがバイタルエリアに残っていたレアンドロへ。相手のプレッシャーが迫る前に、中へほんの少しスライドさせてシュートを蹴るまでの一連の動きを完了させた。

早い時間帯の先制点だったが、一気に突き放す契機とならなかったのは、わずか2分後に同点ゴールを被弾したことによる。右サイドの高い位置で、三菱水島・松岡大輔が起点をつくるところからそれは始まった。反応した檜垣が近くで受け、丸山に戻したボールはダイレクトで裏のスペースへ。そこへ中央から走り込んだ高松健太郎がマークをかわしてシュートを放った。「ボールのほうに行っちゃってスペースを空けすぎた」(山形・永井)という以上に三菱水島の機敏なボール回しを誉めるべきもしれない。しかし、先週行われたJ2横浜FC戦でも、1−1の同点に追いついた直後のプレーで再びリードを奪われるという失態を犯しているだけに、わずか2分でリードをフイにしてしまう試合運びは看過できるものではない。

2回戦で1ゴール1アシストの檜垣がスタメンに復帰した三菱水島は、守備ではトップ下の高松健の運動量がチームを支えている面はあったが、高松健がサイドまでボールを追うことで、山形がサイドチェンジする十分なスペースを中央に提供することになった。左サイドでは川口が山形の右SB臼井へのパスを狙ってプレスを掛けたり、前半24分に秋葉のいない隙にドリブル突破してシュートまで持ち込むシーンがあったものの、ほとんどの時間で秋葉に押し込まれ攻撃参加の機会がつかめずにいた。また、攻撃では1トップ松岡大や高松健のところで厳しいチェックを受け、サイドへ展開しようにも追い越して上がってくる選手が見つけられなかった。

秋葉のクロスをバイタルエリアで受けた渡辺のミドルと、宮沢の右CKを頭で合わせた内山のゴールで前半を3−1と山形がリードを広げる。そして迎えた後半、巻き返しを図る三菱水島は右SB三宅が押し上がり、檜垣、川口の両サイドも山形のDFラインに絡む高い位置で動きながら長いボールを引き出そうと試みるが、前掛かりな分、奪われたあとは山形のカウンターに晒されることになった。

後半10分、左で起点をつくった宮沢の外側を内山がオーバーラップ。中に切れ込んだ際、接触で一度は相手DFとともに倒れるが、いち早く立ち上がるとマイナスのクロスでレアンドロのゴールを引き出す。さらに14分には、GK永富が頭上でファンブルし、足元にこぼれたボールに詰めたレアンドロがハットトリック達成で5−1。さらに18分には、宮沢の左クロスをファーサイドで原のヘッドがとらえた。このとき、ゴール前には原のほか、交代直後の氏原、永井、そして直前で宮沢にボールを預けた内山と、4人が詰めていた。

6−1と山形リード。25分強という残り時間を考えれば、さらに貪欲に追加点を狙ってしかるべきケースだが、チームの勢いはここでトーンダウン。そしてまさかの失点シーンへとつながっていく。後半25分の三菱水島、右からのスローインのボールを中央の川口が直接ダイレクトシュートでゴールネットを揺らした。「リーグ戦に弾みをつけるためにも無失点で抑えたかったが、特に2点目は、あってはいけないチームとしてのミス。プロのチームと言えるような失点ではなかった。今のチームとしての甘さがあの失点に出ている」試合後に振り返ったボランチの渡辺は、フツフツと沸いてくる何かを押し殺すのに精一杯だった。

さらに、山形の歯車の狂いは攻撃にも生じていた。中盤にポジションを上げた臼井のドリブルで右からの攻撃は活性化したが、クロスとシュートの精度を欠いた。自陣で2対2とリスキーに攻め込む三菱水島に対して追加点が奪えず、4回戦進出はすっきりとしない雰囲気のなか決まった。

57分まで均衡が続いた末の3−0だった昨年と比較すれば、三菱水島は失点が倍に増え、得点は0から2に増えたことになるが、失点に関して高松健は「完璧にやられたという失点はあまりなかった」と、失点数の多さ以上に「同点にしたときにどれだけ耐えられるかが課題になる」と勝負強さの問題を指摘した。サテライトリーグ戦以外の公式戦では今年4月以来の出場となった山形のGK桜井は、「試合に出て、ここがおかしいなというところが何個かあった。そこを改善していければチームのためになるかなと思う」と、浮き彫りになった問題と正面から向き合う決意を示した。敗れてJFLに戻る三菱水島と、勝ってJ2に戻る山形。困難な課題と、それを乗り越えた先に待っている成長への希望を抱えたまま、戦いは続いていく。

以上

2006.10.08 Reported by 佐藤円
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