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【第86回天皇杯:鳥栖 vs 立命館大レポート】前評判どおりの実力を出した立命館大学。最後に力尽きる。終了間際に勝ち越した鳥栖。Jリーグの意地を見せる。(06.10.08)

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第86回 天皇杯全日本サッカー選手権大会 3回戦
鳥栖 4-3 立命館大(1,679人/佐賀)
得点者:'22 阪田章裕(立命館大)、'22 古部健太(立命館大)、'24 藤田祥史(鳥栖)、'48 飯尾和也(鳥栖)、'49 阪田章裕(立命館大)、'61 小井手翔太(鳥栖)、'85 高橋義希(鳥栖)
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第30回総理大臣杯優勝の実力を随所に見せてくれた立命館大学。60分過ぎまでは、「狙いどうりのサッカーができた」と米田監督(立命館大学)は評価した。
苦しめられたのは、Jリーグディビジョン2で5位につける鳥栖。「トーナメントの恐ろしさが出た」と百戦錬磨の松本監督でさえ、この試合では90分間落ち着かなかった。

キックオフと同時に一斉に鳥栖ゴールを目指す立命館大学。開始の笛の音が耳に残るうちにファーストシュートを放つ。
“出鼻をくじく”とは、このことを言うのだろう。MF高橋、西野を中心に細かなパスをつないで鳥栖の中盤をかき乱す。

「前半で勝負を決めるつもり」(FW山口/鳥栖)だった鳥栖は、ペースを掴む事ができずにいた。立命館大学の速いパス回しとで出しの鋭いプレッシャーで、いつものパス回しができず、次第にDFとMF、MFとFWとの間に隙間ができるようになった。この隙間は立命館大学にしてみれば、ボールの落とし所であり、攻撃の起点となる。中盤の主導権を完全に握られてしまった。

22分、立命館大学1年生MF福本尚純のFK、ゴール前に179cmDF阪田が走りこんだ。ゴール前の混戦の中から阪田の右足でボールは鳥栖ゴールに蹴りこまれた。歓喜どよめくスタンドが、静まる間もなく続けてFW古部が中央に飛び込んで2点目を叩き込む。
勢いが立命館大学に傾いた瞬間に、昨年までのチームメイトだった鳥栖のFW藤田が、公式戦初ゴールとなるシュートを決めた。“取られたらすぐに取り返す”意地を見せるものの、鳥栖はペースを掴むことなく主導権を握られたまま前半を終了する事になる。

後半開始直後、すぐに鳥栖は左CKを得た。セットプレーでは、DFの飯尾や加藤、吉田などのヘディングに強い選手がゴール前に張り付く。このCKでは得点に結びつかなかったが、流れの中で前線に残った飯尾に廣瀬からのセンタリングが入り、同点ゴールを生んだ。
早い時間での同点ゴール、流れを引き寄せるかと思いきや、直後に立命館大学の福本と阪田のコンビが再びリードを奪う得点を挙げた。常にリードされ続け、2列目からの飛び出しやミドルレンジからのシュートの対応に、鳥栖は終始後手に回される場面が続いた。

この状況に終止符を打つ機転を見せたのが、ベテラン尹晶煥である。
彼にしか分からない試合感は、ピッチにいる仲間をも驚かせた。当然のごとく、立命館大学の選手はさら驚いた事だろう。ゴール正面のFKにボールをセットして、呼び寄せたのはDF小井手。「蹴れ!」と言われて本人が一番驚いたようだが、これを決めるところがプロの技術。尹のフェイクにGKが反応したのを見て、落ち着いてゴール左隅に蹴り込んだ。
「あのゴールで勝ちが見えた」とベテラン山口が感じたように、立命館大学は三度リードを奪う勢いは残っていなかった。85分に25m地点でのFKを高橋が蹴り込んで、この試合始めて鳥栖がリードを奪うとそのまま逃げ切ってしまった。

伝統的につなぐサッカーで大学日本一を勝ち取った立命館大学の実力は、噂どおりのもので、随所にその実力を見せ付けた。出足の鋭いプレッシャーと素早い攻守の切り替え。加えて、正確なパスワーク。きちっと足元にボールが収まる技術は、大学チャンピオンの称号にふさわしい。しかし、鳥栖が中盤を省略して前線にボールを送り出すと順応するのに少し時間がかかりすぎた。

鳥栖の決定力がもう少し高かったら、ここまでゲームはもつれる事は無かっただろう。プロとして最低限の結果を得る事はできた。モチベーションの高さは、ゲームの主導権を握る要因に成り得ることを再認識したに違いない。
4回戦からは、J1のチームが出場する。鳥栖が挑戦者になる番となった。次の試合で鳥栖らしさを出す事が、今日の不完全燃焼を払拭してくれるにちがいない。

試合に負けて得るものは多い。しかし、勝って得る事ができれば、もっと良いに決まっている。
今日の勝利で得たものを次に生かすことが、アスリートの進化である。

以上

2006.10.08 Reported by サカクラ ゲン
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