第86回 天皇杯全日本サッカー選手権大会 3回戦
湘南 4-1 関西大（1,167人/平塚）
得点者：38' 安藤 淳（関西大）、42' 村山祐介（湘南）、49' 永里源気（湘南）、68' アジエル（湘南）、78' アジエル（湘南）
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　ボールを奪ったところから攻撃が始まり、ゴールは生まれる。そんな定石が顕著に現れたゲームにあって、先に体現したのは関西大のほうだった。

　38分、ボールをキープし攻撃の攻め手を窺う湘南に対し、安藤淳が中盤で奪う。J1京都の特別強化指定選手である背番号10は、そのままドリブルで持ち込み、左サイドを駆け上がる吉村修平にすかさず捌いた。関西大は安藤、あるいは鳥本綱大のボランチにボールが入ると展開力が増す。彼らを湘南は捉えきれなかった。またリスタートをはじめ、関西大は切り替えが素早い。前がかりとなり手薄だった湘南ゴール前に飛び込んだのは、起点となった安藤である。吉村が送ったクロスにヘディングを合わせ、先制点をねじ込んだ。

　関西大の先制ゴールから4分後、コーナーキックからゴール前に詰めて押し込んだ村山祐介の得点も、ボール奪取に端を発している。コーナーキックは、アジエルが中盤で奪い、パスを繋いだ先でゴールラインを割ったものだ。「厭な時間にセットプレーから入れられてしまった」と安藤も肩を落とす、湘南の同点ゴールだった。

　両者ともに1点ずつを取り合った前半は、得点が示すとおりのシーソーゲームだった。11分、右サイドに開いた石原直樹のクロスに永里源気が飛び込み、湘南が押し込んだかと思えば、14分には右サイドを崩した関西大がヘディングシュートまで持ち込み、あわやのシーンを演出する。また関西大FW阪本晃司がDFラインの裏を狙えば、石原も同様に相手の裏を盗る。23分に左サイドを駆け抜けた阪本がシュートを放つと、25分、今度は石原が、尾亦弘友希による絶妙なグラウンダーのスルーパスでDFを置き去りにし、GK森田郁との1対1に持ち込んだ。湘南は、27分にも尾亦からのクロスを永里がヘディングで合わせている。だがいずれのシュートも、互いのGKのセーブやDFによるブロック、あるいは枠の外へと逸れていた。

綱引きのような前半から一転、後半に入ると湘南が貫禄を見せる。「前からプレスをかけろ」という菅野将晃監督の号令のもと、49分、坂本紘司が左サイドでボールを奪い、ドリブルで持ち込む。その坂本からのラストパスに永里が反応、落ち着いてシュートを沈め、後半立ち上がりの貴重な追加点を奪った。

「後半4分に入れられてからは相手のペースになってしまった」試合後、関西大・川端秀和監督が振り返ったように、このゴールによって湘南が流れを手繰り寄せる。対する関西大も前線を入れ替え、たとえば右サイドバックの佐藤祐起が攻め上がってクロスを入れるなど反撃を目論むが、ラストパスが合わず、ゴールには届かない。逆にポゼッションを高める湘南は68分、石原が中盤で奪うと、中央でパスを受けた坂本がドリブルから右に振り、アジエルが待っていたとばかりに左足を振り抜いた。「時間もあまり残っていなかったので、痛い失点でした」と、安藤は振り返っている。さらに78分、アジエルの巧みなドリブル突破によって4点目を献上すると、関西大は万事休した。

「前半やれたという感触があっただけに口惜しい」一矢報いた安藤の表情は険しい。しかし、「自分たちのパスワークやゲームをつくるという点については通用したと思う」と、手応えも感じ取っている。シュート数でも、湘南の12に対して17と、関西大はその積極性を数字で示した。「秋のリーグに向け、切り替えて頑張りたい」と指揮官も語ったように、今日の敗戦を糧に、リスタートを切りたいところだ。

　一方、湘南の菅野監督も、勝利したとはいえ表情は険しい。「結果はよかったが、とはいえ今日のような内容ではとても次のステージでは闘えない。しっかりと見つめ直し、次のリーグ戦、そして天皇杯に結び付けたい」。結果が伴わない時期を脱し、いまは内容の充実を目指す。試行錯誤を繰り返しながら一歩ずつ進む湘南は一週間後、同じく平塚に徳島を迎える。つぎは結果と内容をともに掴みたい。

以上

2006.10.08 Reported by 隈元大吾