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【J1:第30節 F東京 vs 川崎F レポート】新たに生まれた多摩川ダービーの因縁、撃ち合いの末の死闘はF東京に軍配。(06.11.11)

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11月11日(土) 2006 J1リーグ戦 第30節
F東京 5 - 4 川崎F (15:04/味スタ/23,251人)
得点者:'7 谷口博之(川崎F)、'14 ルーカス(F東京)、'17 我那覇和樹(川崎F)、'42 ジュニーニョ(川崎F)、'49 マギヌン(川崎F)、'51 戸田光洋(F東京)、'83 平山相太(F東京)、'89 宮沢正史(F東京)、'89 今野泰幸(F東京)
★ハイライト&会見映像は【こちら】
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 凄絶を極める試合だった。ふたりの退場者、5対4の派手な撃ち合い、6分に上るロスタイム、そして劇的すぎるほどの結末。「FC東京を乗せたら相手は終わり」。試合後、満ち溢れる自信をたたえて語った今野泰幸の言葉には、確かな重みがあった。

 前半、いやむしろ試合前のサポーターの応援からだろうか、勢いは完全に川崎Fのものだった。ゴール裏からはアウェイとは思えないほどの重厚な声が響き渡り、試合開始早々からジュニーニョが切れ味鋭い動きで際どい場面を作ると、やはり川崎Fに先制点が生まれる。ペナルティエリア右サイド外からのFKが直接F東京ゴールに向かうと、GK土肥洋一のクリアが中途半端なものとなり、最後はU-21日本代表としても期待が集まる川崎Fの谷口博之に押し込まれてしまった。

 これに対し、F東京も馬場憂太からのクロスのこぼれをルーカスがヘッドで押し込んですぐさま同点としたが、喜びもつかの間、今度は一瞬の隙を突かれてしまう。マルコンからスローインが送られると、次の瞬間に谷口が左サイドをフリーで疾走。ここからクロスを許すと、最後は我那覇和樹に藤山竜仁の鼻先で左足を合わせられ、抜け目なく勝ち越し点を奪われた。

 川崎Fの攻撃は、とにかく速い。単純に前線のジュニーニョ、マギヌンにスピードがあるということもあるが、守備から攻撃へ転じるときの切り替えの速さは、さすがに優勝争いを繰り広げるチームだと感じさせる強烈なものだった。

 ただ、それを可能にするのも、前線のジュニーニョ、マギヌン、さらには我那覇が絡むトライアングルが、それぞれに絶妙なバランスをもってプレーを繰り出しているから。F東京の倉又寿雄監督は、この日センターバックに入った伊野波雅彦、増嶋竜也について、「ふたりの連携はともかく」と前置きしてから両者の働きを労ったが、川崎Fの攻撃を抑え込む手立ては、F東京DF陣にはこの時点でも見出せていなかった。

 42分、マギヌンのクロスからジュニーニョが美しいボレーシュートをF東京ゴールに叩き込んだ瞬間、あのスタジアムにいる一体どれだけの人間が、試合後に歓喜を爆発させているF東京の選手たちの姿を想像できただろうか。さらに悪いことに、後半が始まってすぐにもあっさりとマギヌンに決められ、両者の差は1対4にまで広がっていた。

 だが、陳腐な表現を許してもらえるならば、勝利の女神はまだどちらに微笑むかを決めかねていたようだ。失点直後のエリア左サイドでのFK。試合後に今野が絶賛した馬場憂太と戸田光洋のコンビプレーから、まさに起死回生のゴールが生まれると、さらに2分後にジュニーニョがエリア内で審判を欺く行為をしたとして2枚目のイエローカードを提示され退場に。ここで素早い決断を下した倉又監督は、前半のうちに足の張りを訴えていた石川直宏に代えて、この数試合でF東京躍進の象徴とも言える存在になった鈴木規郎をピッチに送り込んだ。

 このとき、今まで溜め込んでいたものを爆発させるように、突如としてF東京のゴール裏は沸騰した。スタジアムが青赤模様に染まっていく中、倉又監督もこの機を逃さないとばかりに、宮沢正史、そして平山相太を続けざまに投入。サイドからの放り込みという単純作業に切り替えたF東京は、シンプルさのなかに迫力を携えて、徐々に川崎Fゴールに迫っていった。

 そして、平山のゴールが飛び出し、川崎のマルコンが2枚目のイエローカードを受け、ロスタイムには宮沢の同点弾が生まれた。その直後、川崎F側にとっては信じられない光景が繰り広げられる中、ただただ勝利を追い求めたひとりの男が渾身のミドルシュートを放った瞬間、予想もできなかった結末で舞台は幕を下ろすこととなった。

 数的優位に立った影響はもちろんあった。1対4となるまでは、惨憺たる試合内容だった。しかし、最後につかんだのは勝利の女神の微笑みだった。千葉戦(第18節/8月20日)、G大阪戦(第28節/10月22日)、今季同じように奇跡的とも言える逆転勝利を繰り返しているF東京。かつてのF東京が持っていた不屈の闘争心は、脈々と受け継がれ、再びこの日の選手たちはそれを持つことを証明した。

 一方、敗れた川崎Fにとってはまさに悪夢の試合展開に。納得できない敗戦のショックから多くの選手が足早にミックスゾーンを立ち去っていくなかで、真摯に記者の質問に答えていた箕輪義信は、優勝の厳しさを認めながらも「チャレンジし続ける」とコメントした。エースのジュニーニョも「これで頭を下げて諦めることはない」と語るなど、残り4試合での奇跡の逆転優勝を信じて戦うことを誓っていた。

以上

2006.11.11 Reported by 平松 順二(ISM)
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