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【第85回高校サッカー】大会プレイバック:第84回大会「涙の野洲。新時代到来」(06.12.13)

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第85回全国高校サッカー選手権大会
 平成18年12月30日(土)〜平成19年1月8日(月・祝)

-- 関連ニュース、日程詳細、出場校、競技場案内など、詳しくは特設サイトをご覧ください --
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2006年1月9日。それは1本のロングパスから始まった。サイドチェンジ、ドリブル、ヒールキック、スルーパス。ゴールまでの軌跡がスローモーションのようにゆっくりと描かれる。サッカー一色に染まった高校3年間の集大成。記憶に残るゴールがあるとすれば、84回大会で野洲が見せた決勝ゴールは、その名にふさわしい。

本命不在、実力伯仲。どこが勝つか分からないといわれた選手権。決勝で顔を合わせたのは、安定した力を発揮し県予選から決勝まで無失点だった鹿児島実業と、試合を終えるごとに観客の視線を集めていった野洲だった。青木孝太、楠神順平、乾貴士らが見せる、相手を欺くフェイント、1vs1の駆け引き、密集での細かいパスワーク。確かな技術に裏づけされた魅せる野洲サッカーは、話題を呼び、いつしか「高校サッカーを変えたい」という山本佳司監督の言葉が現実味を帯びていた。

迎えた決勝戦。野洲は疾風怒濤の鹿児島実業を真っ向から受け止めた。先制し、追いつかれ、延長に突入する。連覇をかけた真っ赤な闘志が襲い掛かっても、押されて苦しくても、決して揺るぐことのなかった“誰にも真似できない野洲サッカー”が120分の果てに開花した。陽が傾いた国立にホイッスルが鳴り響いた瞬間、青木は声にならない叫び声をあげた。そして大粒の涙に濡れ、くしゃくしゃになった笑顔で仲間と抱き合う。ピッチの上で22人が泣いていた。野洲も鹿児島実業も最後まで自分たちのサッカーを貫き、うれしい涙と悔しい涙が交差する。勝って泣き、負けて泣く。その涙に、84回という長い歴史の中で“選手権”が描き続けてきた情熱と、サッカーが好きだという高校生の真っ直ぐな気持ちを思った。勝ちたい気持ちや最後まであきらめない気持ち。練習ばかりで染まった高校3年間のすべてと自分たちのサッカーをピッチに置くために、必死になってボールを追う姿。

一生懸命さがかっこ悪いと映る時代に見せたひたむきさも、試合後にはしゃいでいた無邪気さも18歳の彼らが描いた高校サッカーで、選手権なのだと思う。

日本サッカーが進化していく中で、高校サッカーもその姿を変えている。美しいパスを奏でた野洲サッカーが頂点に立ったことで、よりいっそう加速していくかもしれない。けれど、その心までは変わらない。変わり行くものと変わらないもの。両方を感じさせて、84回大会は幕を閉じた。

以上

2006.12.13 Reported by 青柳舞子
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