8月26日（日） 2007 J2リーグ戦 第36節
山形 0 - 1 札幌　（18:04／ＮＤスタ／4,069人）
得点者：'20 石井謙伍（札幌）

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　それは、ここまで独走で首位を張っているチームのしたたかさと言ってもいいだろう。
　
　立ち上がりからセカンドボール奪取で分を悪くし、ゴールこそ割らせなかったものの、山形に思うようにボールを動かされていた前半20分。この試合で左ＳＢに入っていた池内から伸びた１本のパスと、２試合続けて先発の座を射止めた石井の対応が、形勢逆転の１点を生み出した。一瞬、レオナルドの視界から消えた石井が虚を突く形でいち早くボールに追いつき、背負ったレオナルドの頭上を越える浮き球で体を入れ替えるとペナルティーエリアに進入。背後から追うレオナルドと横からカバーに入る鷲田に前後を挟まれはしたが、ボールだけはＧＫ清水の横を抜けてゴールネットに押し込んだ。

　ＦＷダヴィ、ＭＦ芳賀、ＤＦ西嶋と主力３人を出場停止で欠いていたが、札幌にとって決して「苦しい布陣」などではない。それどころか、そこでチャンスを得た２人で得点を挙げ、昇格レースで生き延びている底力を見せつけた。そしてこの先制点が、いつもの札幌を思い出させる。２トップのフォアチェックで山形のパスの発射位置は徐々に下がっていく。「（札幌は）守備の切り換えの早さと同時に、10人の立ち位置のバランスの良さでなかなかビルドアップを簡単にやらせてくれない。長いボールを蹴らざるを得なくなって、いわゆる札幌の土俵、セカンドボールの攻防というところに持ち込まれてしまう」（山形・樋口監督）展開に山形の２トップも孤立し始め、ペースを握った時間帯で本領を発揮してきたのは、西谷と中山だった。西谷が裏のスペースへスルーパスを入れ、中山が走り込んで合わせる。あるいは、西谷のクロスに中山がゴール前に飛び込むというシーンが４度、５度と展開された。前半32分には、西谷が右足アウトにかけた角度のあるクロスがＣＢ鷲田の頭上を越え、その背後に飛び込んだ中山がシュートを放った。追加点はならなかったが、札幌が１点のリードをがっちりとキープしてハーフタイムを迎えた。

　８月に入り、これが４試合目となる山形。過去３試合と同じように、この４試合目でも相手の先制点を追う苦しい展開を強いられていたが、後半７分、同点に追いつく最大のチャンスが巡ってきた。ペナルティーエリア内で横山がファウルを受けＰＫを獲得。しかし、キャプテン宮沢が蹴ったコースはＧＫ高木に完璧に読まれた。改めて、残り時間で１点を追いかけることになった。

　札幌が石井の右クロスに西谷が胸トラップからシュートを放てば、山形はくさびのパスを受けた横山がターンしてシュートまで持ち込む。そうした一進一退の展開を山形に一気に傾けたのは、後半21分の佐々木の投入だった。23分、右クロスを横山のヘッドに合わせると、その直後には左のスペースへダイアゴナルに走り石川のパスを引き出した。この佐々木の攪乱が、財前のクロスや、右ＳＢにひとつポジションを下げた臼井のオーバーラップを引き出していく。後半33分には、札幌ＤＦラインのギャップを突いた宮沢が左で起点をつくり、最後は横山にフリーでヘディングを打たせたが、シュートは精度を欠いて枠外へ。その後も山形は残りのほとんどの時間で札幌エンドに居座り、最後にはレオナルドを前線に上げるスクランブル態勢をとったが、２試合ぶりのゴールを割ることなく敗れた。

　３人が出場停止と決して十分な条件ではなかったが、札幌は揺るがなかった。「（山形は）我々のディフェンスの裏に蹴って走り込んできて、それがこちらにとっては難しい状態になった」（三浦監督）と予想と違う条件に遭遇しても慌てずに修正し、勝つことで連敗を阻止した。次節もアウェイが続くが、出場停止の３人が戻り、過去２戦でお得意さまにしている水戸戦。慢心もプレッシャーもはねのけて、札幌エクスプレスは進む。

　山形は４試合連続先制を奪われ、２試合連続無得点に終わっている。プランどおりの立ち上がりを実践し、ゴール前のチャンスも前節以上に増えているが、繰り返される致命的ミスと割れないゴール。90分後のスコアで上回れず、再浮上のきっかけをつかめずにいる。負ける姿は見せたくないが、それ以上に見せていけないのは心が折れたチームの姿だ。負け慣れてはいないか？　悔しさがあるなら、30日にＮＤスタのピッチで。

以上

2007.08.27 Reported by 佐藤円