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【J1:第30節 広島 vs 千葉】レポート:最後の場面で露呈した広島の課題。入れ替え戦圏内の16位に転落(07.10.27)

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10月27日(土) 2007 J1リーグ戦 第30節
広島 2 - 2 千葉 (13:04/広島ビ/9,680人)
得点者:31' 佐藤寿人(広島)、65' 駒野友一(広島)、89' 新居辰基(千葉)、89' 山岸智(千葉)

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89分17秒、リベロ・中島浩司のドリブルからスタートした千葉の攻撃は、工藤浩平を経由して新居辰基へ。ただここでは、DF槙野智章が新居に身体を寄せ、前を向かせない。新居は半身の態勢ながら、前に出た工藤へと縦パスを出す。広島のリベロ・戸田和幸がカットを試みたが、工藤は一瞬早くボールに触り、ワンタッチで左へ。広島MF森崎浩司がカットしたが、ここで千葉MF米倉恒貴が身体を寄せ、ボールは工藤の前へ。次の瞬間、左のスペースに飛び込んできた新居にパスが出て、広島は痛恨の1点目を喫した。
その後、広島がややパニック状態に陥ってしまったのは、やはり連敗中のチームにありがちな自信喪失状態が原因だろう。何度か千葉が放った決定的シュートは跳ね返したものの、93分、工藤が放ったスルーパスによって広島は決壊。山岸智の素晴らしいシュートによって、掌中にあった勝点2を広島は失った。

広島にとって問題なのは、やはり1失点目だろう。まず、新居のフリーランニングに、広島の選手が誰もついていけなかったこと。新居はパスを工藤に出した後、ほとんど休まずに走り、一気にスペースへと飛び出している。本来、そこには広島のDF森崎和幸がいるはずだが、この時彼は横にずれて、千葉FWレイナウドをマーク。新居について槙野が前に出ていったための、必然の流れだった。
槙野は、新居のマークを中盤に受け渡したつもりだったのかもしれない。しかし、実際には誰も、千葉のストライカーについていなかった。近くには3人の選手が立っていたのだが、誰もがボールしか見ていなかった。誰かが一瞬でいいから顔を振れば、新居の飛び出しに気がついたはず。そうすれば、この得点シーンはなかった。
もう一つの問題は、ペナルティアーク付近にいた工藤をフリーにしてしまったこと。パスカットを試みた戸田は、勢いで前に出てしまっているから、瞬間的にマークにつくのは難しい。しかし、他の選手も近くにいたのである。だが、ここでもやはり「ボールウォッチャー」現象が出てしまった。
新居と共に誰かが走っていけば。工藤に誰かが身体を寄せていれば。後から考えれば、それほど難しくはない。だが、この「ボールウォッチャー現象」が、大事な場面で連鎖的に起こってしまう。それが、今季の広島である。多くの時間帯でいい守備もできているのに、ある瞬間、見入られたかのように、ボールだけを見てしまう。それが、守りきれない要因だ。

この試合、千葉には不運がつきまとった。佐藤寿人の先制点はDFとGKの連係ミスから起こったもの。攻めてもミスから得点できず、2失点目も1点目と同様に、攻勢を強めていた時のカウンターから失った。「崩されてはいない」(水本裕貴)だけに、余計に心理的なダメージは大きかったはずである。それでも気持ちを折らず、85分を過ぎてからさらに厚みを増した波状攻撃による同点劇は、見事の一言につきる。しかも千葉は、主力4人を欠いていたのだ。

広島からすれば、あと4分、集中していればよかった試合である。確かに「ラインが下がりすぎた」(槙野)嫌いはあるが、それでも最後はシュートを打たせなければいい。ロスタイムを入れて残り5分間という時間帯になれば、理屈ではなくてハートの勝負だ。だが、そこまでは強気の勝負を広島は続けていたのに、ギリギリの場面で弱気な虫が出てしまった。それが「ボールウォッチャー症候群」につながり、4分間で2失点を喫してしまったのである。

千葉はこれで勝点41。17位甲府との差が15ポイントとなり、残り4試合を残して自動降格の芽はなくなった。入れ替え戦の可能性はまだ残っているが、現実的にはほぼ残留を手中にしたと言っていい。シーズン当初の苦戦から、よくチームを立て直したものだ。
一方の広島は、ついに大宮に得失点差で抜かれ、入れ替え戦圏内の16位に転落した。このショッキングな引き分けは、選手たちのハートにダメージを与えているのは間違いない。しかし、勝点1を積み重ね、連敗を5で止めたことも一方の事実である。出来たこと・出来なかったことを分析し、しっかりと次に向けて顔をあげてほしい。闘いは、まだ4試合も残っている。

以上

2007.10.27 Reported by 中野和也
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