今日の試合速報

チケット購入はこちら

J’s GOALニュース

一覧へ

【J2:第48節 仙台 vs 福岡】レポート:緊張感溢れる雨中の激闘は、ロペス不在でも今季の蓄積を活かして虎の子の1点を得た仙台の勝利。福岡の昇格争いは48節で終わる。(07.10.27)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
10月27日(土) 2007 J2リーグ戦 第48節
仙台 1 - 0 福岡 (14:04/ユアスタ/14,820人)
得点者:53' 萬代宏樹(仙台)

----------

 試合前から降り続く雨がさらに強さを増す中、おりからの寒さも手伝って、両チーム共に入場時の選手はベンチコート着用という厳しいコンディションの中で始まった、今節唯一となる「昇格争い中」同士の対決。ファーストバウンドは大きく伸び、ロングパスを試みても蹴り足とボールが滑るのか上手くミートできないことからミスキックが増えるなど、普段どおり攻撃を機能させるだけでも一苦労といった感じなのだが、共に引き分けでよしとできる状況にいない以上、どんな形であれ最低1得点は必要になってくる。
 そこで双方、何とかして相手ゴールをこじ開けようと四苦八苦するわけだが、より苦しんだのは福岡の方だった。

 福岡はこの試合、メンバー選考で驚きを放った。出場停止のアレックスに代わりトップ下を務めたのは、前節このポジションでスタメンとなったリンコンでもなく(彼の前節内での交代時、特に負傷が目立ったわけでもなかったことから、今節にまたリンコンが現れることを警戒していた仙台のチームスタッフだが、どうやら負傷は真実だったようだ)、またそのリンコンに代わってトップ下を無難に務めた宮崎でもなく、得点力のあるボランチとしてこのところ急成長中の城後だった。さらに1トップも前節の林から、柏より期限付き移籍で加入中の長谷川へとチェンジ。

 だがトップの長谷川にボールが入らないこともあり、城後はスピードに乗って前を向き、最前線に飛び出していくような動きがなかなか出来ない。そもそもここ最近の城後は、ボランチの位置から長い距離を走って前線に顔を出す動きこそ武器にしていたものの、トップ下からでは如何せん、タイミングもスペースも異なるのか、どうしても止まった状態でボールを受けてしまうなど勝手の違いに苦しんでいた様子があった。両チーム通じて最多である前半3本、後半2本の計5本のシュートを放ったものの、そのほとんどがエリア外からのミドルシュートでは、アレックスと同様の脅威を生み出すのは難しい。皮肉なことに城後が脅威となっていたのは、後方にいたダブルボランチ、布部と久藤の飛び出しを受けて、トライアングルを埋めるべくボランチの位置にいた時だった。
 
 一方で仙台はどうか。ロペス不在の攻撃において、始めこそボールコントロールの難しさを前にミスを犯す場面もあったが、徐々に落ち着きを取り戻すと、チームが目指していた「人もボールも動くサッカー」を体現して、福岡に襲い掛かって行った。
 福岡攻略のカギを「前節(第47節C大阪戦)同様、奪ってから、相手が空けているスペースを突く意識」と望月監督は語っていたが、福岡ゴール前までボールを持ってきた仙台の攻撃陣は、まさにスペースを突くハイエナのように、ここぞと決めたスペースに何人もの選手が、それもスピーディーに殺到した。そして今季開幕から継続して続けてきたショートパスの交換で突破を図る。仙台の攻撃に対し、福岡の守備が後手に回る場面は前半から少なくなかった。
 さらに個人でも、ゴールへの強い意識を新たにした中島が、多少強引と見える場面でも仕掛けることで福岡の脅威となっていた。積極的にミドルを狙っていった中島に対し、福岡守備陣はシュートチェックに来ざるを得なくなり、それを逆手に中島は相手を引き付けた後でパス、そこからさらなるチャンスを生んだ。

 結果的にこの試合唯一の得点となった場面は、この2つの要素の融合が生んだと言っても過言ではない。ハーフウェーライン付近で福岡からボールを奪った仙台、中島が川島のタックルをかわし、左サイドをドリブルで駆け抜けると、カバーに来た宮本を左45度から中央に切れ込みながらかわそうとする。中島の利き足は右、そのためのシュートコースを作ろうとするかのような動きに福岡守備陣は完全に引っかかった。中島から放たれたのは意外性のあるスルーパス。右サイドからゴール前にフリーで飛び込んできた梁が受けて、GK神山との1対1からシュート。このシュートは左ポストに跳ね返されるが、ゴール正面方向に跳ね返ってきたボールに、萬代がしっかりと詰めていた。53分、萬代の3試合連続となるゴールで仙台が1点をものにする。

 その後の仙台は、ピッチ上で皆が落ち着いた戦いぶり。対照的に福岡は、焦りからかフィニッシュを含めプレーに精度が失われ、それがさらに仙台のカウンターを呼ぶ。しかも80分にリトバルスキー監督が行った交代が決定的だった。宮本に代えて同じくDFの長野を入れるが、その長野を単純にパワープレー要員として前線に配した福岡。ただでさえカウンターにさらされていた最終ラインはよりスカスカとなり、パワープレーに出ているにも関わらずチーム全体の重心をなかなか前に置けないという悪循環に、試合後には相手である仙台のあるベンチスタッフすら首をかしげていた。元々、過去3度の対決で福岡は、リードされる度にこの戦術を採っていたため、仙台の守備陣にとってパワープレーは完全に折り込み済み。岡山の加入でさらに高さに強くなっていた仙台に、単純な高さの圧力は利きづらい。

 試合終了を待ちわびる仙台サポーターのボルテージは尋常でなかったが、当の選手たちは思いのほかクールに、1点のリードを勝点3につなげたといえる。仙台には夢をつなぐ勝利を告げるホイッスルが、そして福岡には、今季の昇格可能性が完全に絶たれたことを告げるホイッスルが、雨中のユアスタに響いた。

 それにしても、しびれる90分である。既に福岡の昇格は現実的に厳しかったとしても、わずか1ゴールが、両クラブの行く末に決して混じり合わない明暗を与える。

 だが…それこそ第4クール、その厳しさこそ昇格争いである。

以上
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2025/12/21(日) 10:00 知られざる副審の日常とジャッジの裏側——Jリーグ プロフェッショナルレフェリー・西橋勲に密着